Chatwork創業者 山本 敏行 氏が特別指導! ワークショップ形式で、ピッチの内容・スライドをその場でアドバイス(五反田バレーアクセラレーションプログラム)
開催日
2023年01月19日
会場
TUNNEL TOKYO
参加費
ー
詳細
品川区が、スタートアップの集積地「五反田バレー」の認知度アップや地域活力の向上、区内産業全体の活性化を図るべく実施している「五反田バレーアクセラレーションプログラム2022」。
株式会社ゼロワンブースターのプロデュースで2023年3月までの約6ヵ月間にわたって進行中のプログラムから、2023年1月19日に開催された「研修⑤ 資金調達のための1Dayピッチ講座」の様子を紹介します。
「投資家を魅了するピッチ」への改善指導を受講者全員で共有
今回の会場は、アクセラレーションプログラムの連携パートナーの1つであるセガサミーホールディングス株式会社が大崎で運営する、オープンイノベーション施設「TUNNEL TOKYO」。
「五反田バレーアクセラレーションプログラム2022」では特典として、そのコワーキングスペースのフリーデスクが1ヵ月無償提供されています。
今回の講演のテーマは「資金調達のための1Dayピッチ講座」。
講師は、Chatwork株式会社の創業者である山本敏行氏。
現在は自身が創設した、エンジェル投資家&スタートアップ起業家コミュニティの「SEVEN」に注力されています。
SEVENでは月2回、スタートアップ7社がオンラインピッチを行い、勝ち上がった1~3社をエンジェル投資家約120名に紹介して、2000万~4000万円の調達をするようなイベントを行っています。
そこでエンジェル投資家にピッチの動画を送る前に、7回ほど全員のピッチを添削。すると、ノーメイクからモデルに変わるように見違えるということで、今回のプログラムではその1回分を行い、受講者全員でその様子を共有していきます。
まず受講者から有志の6名がエントリー。1人5分でピッチを行い、それを受けて山本氏が5~10分間フィードバックして、それぞれの内容や構成、伝える順序など、ストーリー作りをその場で指導。
具体的にスライドを参照しながら修正ポイントを指摘していきます。
そのなかでは、このような指摘がされました。
【主なアドバイス(抜粋)】
●スライドの冒頭でメンバー紹介や会社概要を出すのでなく、まず事業内容で惹きつけ、「面白そう→それは誰がやっているのか」と思ってもらえる構成にする。
●始めてすぐに課題を提示し、共感してもらう。
その課題は大きく、なかなか気づかれていないものだと、なお良い。
●VC・エンジェルが知りたいのは解決策の部分であり、それが「どんなプロダクトで、どんな実績が出ていて、どれだけリターンが出そうなのか」になる。
課題までを約1分で、あとはプロダクトやビジネスモデル、ロードマップの話に時間を割く。
●VC・エンジェルは、シリーズA以降は事業について深く追求していくが、シードでは起業家本人を見るウエイトが高い。特に課題解決への熱量を示すことが大事なので、抑揚や緩急をつけてハートに届く話し方を意識すべき。
●VC・エンジェルは数多くのピッチを聞いていて、大概のビジネスモデルはすでに目にしている。
他との差別化、違う切り口を強く意識すべき。
●参入障壁をいかに作れるか。
アイデアや着眼が良くても、同様のことを考える人は多いもの。
「自分なら勝ち抜ける」理由を示すとよい。たとえば、山本氏は2010年にChatworkをローンチしたとき、2000年頃から仕事をチャットだけでやってきた自身の経験を説得材料にした。
●ポジショニングマップは、自分が右上に来るように作る。
左側から分布を説明し、「ここに持っていきたい」と、右上を示すイメージ。
●市場や競合の説明でも単にポジショニングマップを示すだけでなく、たとえば、既存のサービスでは大企業がコンサル会社に年間何億円と払っているのに対して、クラウドサービスなので月間数十万円で提供できる、などと伝えると、VC・エンジェルには理解しやすい。
●事業フェーズにもよるが、進んでいる感じを示せるよう、何かしらトラクションは入れたい。
プレスリリースで取り上げられた実績や資金調達の話題でもよい。
●スライドは目次くらいの文字量にして、それを見れば本文がすらすらと出てくるようなイメージにする。
●ピッチ後にVC・エンジェルではスライドを稟議に回すので、スライドの情報量はミニマムながら、それだけで伝わるような作りを目指す。
●スライドの情報量が多すぎると、内容がぼやけてしまう。
また、何かポイントや例を出すときには、数は3つくらいが頭に入りやすい。
事業を突き詰めてきた本人と、いま初めてピッチを聞いている側ではそもそも情報量が異なるので、相手が理解・評価できる程度にシンプルにして伝えるべき。
●メンバー紹介にはCEOは必ず入れる。VC・エンジェルはそこを見たいもの。
さらに、このビジネスやプロダクトに重要そうな人(特殊な業界パイプの持ち主、スーパーエンジニアなど)を含め、3名くらいにするとよい。
●現在に至るまでのビジネスの苦労やピボット話などは面白いが、時間が限られるので、割愛した方が良い。
プログラムの後半は山本氏による約30分の講演で、Chatworkで調達した経験をもとにピッチのポイントが語られました。
前半のフィードバックで指摘された内容なども、体系的に伝えられます。
たとえば、ピッチは30秒・3分・5分の3通り用意しておく。
なかでも、スライドを使って3分で事業説明できるものが重要で、これができていないと5分や10分のピッチもぼやけたものになってしまう。
そうしたピッチで大切なのは、なぜ今か・なぜあなたかを納得させること。
特にシード期では、経営者自身の強みや魅力で応援したくなってもらうことが重要。
また、2010年頃に開発を始めたChatworkがどのような環境下で生まれたのか。
その後、競合サービスとどのように差別化を図り、市場を獲得していったのかなどもリアルに語られました。
講演の最後には、ピッチのお手本として、SEVENのピッチイベントで100社以上登壇してきたなかで最も見事だったという、ディープテック系スタートアップの3分間ピッチの動画が共有されました。
その後は質疑応答の時間となり、7人ほどが質問。
自分の事業アイデアに対するVC・エンジェル視点での意見を求める内容が多く、その1つ1つに対して丁寧に、市場動向などをふまえて回答がされました。
プログラムの最後には交流会が持たれ、山本氏との名刺交換・アドバイスを求める列も長く続き、また、会場が使える時間いっぱいまで参加者同士の議論が弾んでいました。
執筆者
取材ライター
久保田 かおる
インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。