「SHINAGAWAイノベーションフォーラム2023」 メタバースが拓く新たなビジネスの可能性と最新のビジネス活用事例をたっぷりと紹介

イベントレポート 2023.3.7

「SHINAGAWAイノベーションフォーラム2023」 メタバースが拓く新たなビジネスの可能性と最新のビジネス活用事例をたっぷりと紹介

開催日

2023年01月30日、31日

会場

大崎ブライトコアホール

参加費

詳細


情報通信業の交流・連携の促進に取り組み、新たなビジネスの創出やビジネスチャンスの獲得を目指している品川区。その取り組みの一貫として、2023年1月30・31日の2日間、にわたり「SHINAGAWAイノベーションフォーラム2023 」を開催しました。
オフライン開催となった今回は、近年エンターテイメントからさらに情報通信業や製造業など、幅広い産業分野への活用が進んでいる「メタバース」がテーマ。
各社より実際のビジネス活用事例が紹介されるとともに、登壇各社によるコンテンツ体験会も行われました。
このレポートでは、大手企業による事例紹介および体験会が行われた1月30日の様子をレポートします。

 

オフライン開催で、メタバースの最新事例紹介と体験会を実施

今回のテーマは「進化するWeb3.0/メタバースの世界~メタバースが拓く新たなビジネスの可能性と最新のビジネス活用事例」。
これに沿って講演や参加企業による製品・サービス、事例が紹介されたほか、メタバースを実際に体験できるブースも設けられました。
会場となったのは、品川区が運営するSHIP(品川産業支援交流施設)と同じ建物内にある、大崎ブライトコアホール。
当日13時から18時まで随時休憩を挟みながら、リアルな取り組みが共有されていきました。


プログラムは、本フォーラムを主催する品川区の伊﨑みゆき地域振興部長の挨拶で始まりました。
そして、経済産業省 商務情報政策局コンテンツ産業課の松島亮介氏が「メタバースにおけるクリエイターエコノミーの創出事業と今後の展開」と題して講演。メタバースの定義は未だ固まらないものの関連領域は広がり、コンテンツは経産省、経済・金融はデジタル庁・金融庁・経産省、デジタルツインは国交省・特許庁、通信・認証技術は総務省、知的財産は内閣府・特許庁・文化庁、利用者保護は消費者庁などが所管。
また、メタバース関連の業界団体および勉強会、研究会等がこの2~3年で急増しています。
そうしたなかで、経産省コンテンツ産業課が実施した「Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る調査事業」が紹介されました。


次いで、東京大学大学院情報学環の高木総一郎教授が「デジタル世界における価値流通の新たな展開~Web3.0とメタバースの接点から考える~」をテーマに基調講演を行いました。
まず、ブロックチェーン技術により分散型でサービスを提供するWeb3.0の発展を解説。IoTへの課金組み込み、電力取引、アート作品の来歴管理・利益分配などのユースケースに次いで、NFTやDAO(自律分散型組織)といった最新のサービスが紹介されました。
さらに、AmazonやGoogleなどのデジタルプラットフォームの特徴を「2つの異なるユーザーグループを結びつけ、片方が費用負担し、片方が無料で利用」「ユーザーが多いほど価値が高まる」としたうえで、Web3.0の要素を採用したThe Sandboxというメタバースプラットフォームを紹介。また、屋内サイクリングアプリZwiftのような身体性とバーチャルを融合させたデジタルツインの事例も紹介されました。

 

バーチャルライブや買い物、旅行、展示会からメタバースで働く提案まで


続く、大手企業の取り組み事例紹介では、まずNTTグループのXR事業会社NTTコノキューがメタバース、デジタルツイン、XRデバイスの各事業を紹介。
ブラウザベースの「XR World」ではアバターに扮して仮想世界を闊歩し、友人のアバターとチャットや音声会話、一緒のアニメや音楽コンテンツ、推し活を楽しめます。
VR空間プラットフォーム「DOOR」は企業イベントやバーチャルショップなど、商用での活用も進み、100万人以上が利用。
独自開発のバーチャルライブシステム「Matrix Stream」では、XRスタジオのモーションキャプチャーからリアルタイムにXRコンテンツを生成し、国内外に同時配信が可能。
スマホアプリ「XR City」ではリアルな街や商業施設でカメラをかざすとAR/MRコンテンツが表れ、ゲームができたりクーポンを配信。
集客力向上のため、多様な自治体、商業施設で活用されています。


次いで、ANAグループでバーチャル空間での新しい旅体験を提供するANA NEO社は、共同出資のJP Games社のゲームテクノロジーを活かし、バーチャルトラベルプラットフォーム「SKY WHALE」を運営。
バーチャルショッピング空間「Skyモール」は、家族や友人と一緒にモール内で買い物やイベントを楽しめるもの。さらにNFTの概念を取り入れた新たな購入体験を開発中です。
3D CGによる世界の都市や観光スポットをバーチャル旅行できる「Skyパーク」では、公式感を重視して自治体からの許諾のもと、ガイド役をつけてサービスを展開。
実際に京都市などで取り組みが進行中。さらに地域の金融機関と連携しての地域振興や、保険会社とNFTによる取引保証のケース開発の取り組みなどが紹介されました。


次の事例は、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が空間デザイン会社の丹青社と共同開発した、バーチャル空間「DEJIMA Digital」。
もともとCTCが五反田で運営していた共創スペース「Innovation Space DEJIMA」がコロナ禍で閉鎖となったことから、偶然のつながりや気づきをもたらす「コミュニケーションの余白」をもつDX環境をめざしてプロジェクトを開始。実空間の設計データに基づくことで、没入感のあるVR空間を作り、会話が続きやすいよう物語性のある情報設計を施し、展示会場としても直感的操作でアンケート集計を可能にしました。
今後の展望として、VR空間での行動シミュレーションをリアル空間の設計に活用したり、ECによる購買にバーチャルショップで体験性を付加するなどが考えられています。


4つ目の事例は三越伊勢丹の、メタバースを活用したコミュニケーションアプリ「REV WORLDS」。
買い物に限定しない、エンタテインメントも含めた仮想都市プラットフォームとなっており、バーチャル空間でのショッピングのほか、エモート(アバターによる感情表現、アクション)やチャットでのコミュニケーション、アバターの着せ替え、マイルームのインテリアカスタムなどが楽しめます。
現在、約350ブランド・850点の商品を掲載し、ECサイトから購入も可能。着せ替えアイテムは約950種類で、毎月20~30をアップデート。女性ユーザーが約45%と多いほか、ITリテラシーが高くなくても使いやすいUI/UXや居心地を目指しており、30代、40代ユーザーも多いそう。都市型で新宿に似た世界をベースにし、宝箱など遊び機能を追加したことで回遊率や滞在時間も向上しています。


最後の事例は、パーソルグループで販売・営業職の就業支援を担うパーソルマーケティング社による、メタバースで働く新たな価値提供について。
2030年には644万人もの人手不足が予測されるなか、仮想空間を働く場の新たな選択肢として、距離や時間の壁を越え多様な働き方を目指すものです。
事業展開領域は、B2B事業者のメタバース事業における人材派遣、コンサルティング、ワールドホルダーの3つ。メタバース就業のトレーニングプログラムを提供し、スタッフ派遣を実施。また、企業に対してメタバース活用自体を提案していきます。
その際、クイックにメタバース空間を試せるよう、アメリカのメタバースプラットフォームGAIA TOWNの島の空間をセミオーダーメイドで提供可能です。

以上の事例紹介と同時に、ホワイエでは各社の製品・サービス体験会が行われました。VRゴーグルを装着したり、タブレットやパソコンを操作してのメタバース体験で活用がイメージしやすくなったようです。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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