シード期だからこそ、他社を圧倒する優位点を意識すべき「五反田バレーアクセラレーションプログラム 研修② 家事代行のパイオニアCaSy共同創業者が語る上場ストーリーとCFOの在り方」

イベントレポート 2023.12.6

シード期だからこそ、他社を圧倒する優位点を意識すべき「五反田バレーアクセラレーションプログラム 研修② 家事代行のパイオニアCaSy共同創業者が語る上場ストーリーとCFOの在り方」

開催日

2023年10月12日

会場

共創施設「MUFG SPARK」

参加費

詳細

品川区が、スタートアップの集積地「五反田バレー」の認知度アップや地域活力の向上、区内産業全体の活性化を図るべく実施している「五反田バレーアクセラレーションプログラム2023」。株式会社ゼロワンブースター(以下、01Booster)と連携して2024年3月までの約6ヵ月間、実施中のプログラムから、今回は、2023年10月12日に開催された「研修②家事代行のパイオニアCaSy共同創業者が語る上場ストーリーとCFOの在り方」の様子を紹介します。

グループメンタリングを重ねるごとに、コミュニケーションも活発に

今回の会場は、アクセラレーションプログラムの連携パートナーの1つであるMUFGグループが日本橋で運営する共創施設「MUFG SPARK」のイベントスペース。アクセラレーションプログラム参加者には、MUFGグループでのスタートアップサポートが提供されるため、研修の冒頭にはその内容の説明が行われました。

そして「五反田バレーアクセラレーションプログラム」では、全6回の研修ごとにグループメンタリングの時間を設け、シード/アーリー期ならではの課題の共有・相談を行っており、グループメンタリング・講演・交流会の3部構成になっています。
今回のグループメンタリングは趣向を変え、受講者3名の5分間ピッチが行われました。質疑応答がいわば公開のグループメンタリングになっており、最後に受講者全員がふせんに感想やアドバイスを書き、登壇者に渡されます。
また、今回のピッチでは5分間の制限はあまり意識せず、ピッチ内容やスキルの確認、現時点での事業課題抽出といったところに主眼が置かれていました。

たとえば、離職防止のコミュニケーションツール事業のピッチは以下のような内容でした。

・企業は採用に大きくコストをかけているが、
離職や既存の社員の生産性向上についても投資が必要
・離職率改善のためには、満足度調査や適切な報酬、キャリアパスの明確化、
コミュニケーションなどがよさそうだが・・・
・効果が不明瞭で、中小企業は投資しづらい。欠員の充足に追われるのが現状
・そこで、やりがい/ストレスチェックができ、
上司/人事⇔従業員による交換日記的なツールを提案
・サーベイの継続モニタリングで離職可能性を察知、1on1などの対応が打てる

このプレゼンテーションに対し、受講者から「従業員の回答率は? 回答がない人へのアプローチ法は?」などの質問があり、顧客による事例で答えた流れで、心理的安全性の確保のため機能追加を検討中という話に。また「営業する際に、離職対策の必要性をどう伝えているか?」という質問には、試行錯誤しているが、「現在の再採用・教育するコスト」が、離職率改善でどのくらい改善するか定量的にシミュレーションするのがよさそうと回答。その上で、ツール導入と離職率改善の相関関係もデータで示せるようにしたいと、現在の課題も伝えられました。

また、別の登壇者からは「事業成長速度をよりあげていくために、新たな顧客対象のアイデアを求める」内容でピッチが行われました。製品は、PC作業の履歴(ログ)を自動取得するツールで、従業員の業務状況を見える化してマネジメントに役立てられるというもの。製品の特徴とともに、会計事務所を主な顧客としてきた背景が語られると、活発な質疑応答に。前職経験から、監査業界でも業務上、作業ログが必要だとか、B2Cで子どものネット使用状況を親として知りたいというニーズに応えてはどうか、マーケティングコストはかかるが製作現場の工数管理まで広げる手もあるなど、さまざまな視点からの意見がありました。

3名とも、9月のKickOffでのピッチからスライドをブラッシュアップさせ、最新の反響を盛り込むなど、興味を引けるよう工夫が見られました。また、いずれも製品/サービスはローンチ済みで、課金やマーケティングなど、事業化フェーズにあったため、他の受講者も自分ごとのように頭をひねり、意見を出していたのが印象的でした。

グループメンタリングを重ねるごとに、コミュニケーションも活発に

講演では、家事代行サービスを行う、株式会社CaSy(カジー)代表取締役の池田裕樹氏が登壇。大手SIerでファイナンス系システムの開発、事業企画、M&A後のPMI業務に従事した後、グロービス経営大学院MBAの同期と2014年にCaSyを創業。CTOとしてプロダクト開発を主導した後、2019年にCFOとなり、2022年2月に業界初の東証マザーズ上場を果たした池田氏が前半で語ったのは、事業の競争優位性(マッチングアルゴリズムなどによる家事代行サービスのDX化、キャストのモチベーションを土台にした品質管理体制)や今後の事業展望。

そして、今回研修のメインといえる後半では、IPOまでのリアルな実体験が紹介されました。
たとえば、証券中間/本審査、東証審査が複数回ありますが、その都度、各200ページはある有報と各種資料(資本異動履歴、内部監査の実施結果など)を読み込み、徹夜で準備を行ったそう。審査内容の一部も公開してくれましたが「とにかく細かい質問で、初回審査ではこれが104問」などと、どういう風に苦労したかが伝わりました。
また、上場審査中のタイミングで新型コロナウィルス拡大による緊急事態宣言が発令され、家事代行サービスの提供をどうすべきか、意思決定を迫られます。顧客によっては注視されると生活に困るケースもありえるため、熟慮の結果、「今、不要だと判断されるお客様」にはキャンセルを推奨することとしました。実際に売上が一時期、前月比3~4割減となったものの、すぐ元の水準に戻り、なくてはならないサービスなのだと改めて実感できたといいます。
そうして2022年2月に無事、東証マザーズに上場。コロナ禍のため、鐘は1人で鳴らすこととなり、仲間と分かち合えなかったのが心残りだという話で講演は終了しました。次いで質疑応答が行われます。5~6人ほどから、キャスト(サービス提供者)の育成はどう行っているのか、共同創業3名の役割分担はどう決めたのか、多様な従業員がいるなかで価値観の共有はどう行い採用に活かしているか、資本政策はいつ頃どういう理由で決めたか、などの質問があり、丁寧に回答がされました。

プログラムの最後には交流会がもたれ、登壇されたCaSyの池田氏やMUFGグループの方々も交えて、意見交換や情報共有が活発に行われました。回を重ねていることもあって、互いにいろいろな相手と話をしていく積極性が見られ、受講生同士のネットワークが深まっている様子が感じられました。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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