【イベントレポート】実体験から学ぶ、組織急拡大の難所と対応「五反田バレーアクセラレーションプログラム 研修③ 急成長企業で起きる典型的な“ひずみ”と、拡大・成長し続けるための人・組織づくり」

イベントレポート 2023.12.22

【イベントレポート】実体験から学ぶ、組織急拡大の難所と対応「五反田バレーアクセラレーションプログラム 研修③ 急成長企業で起きる典型的な“ひずみ”と、拡大・成長し続けるための人・組織づくり」

開催日

2023年11月09日

会場

西大井創業支援センター(PORT2401) 多目的スペース

参加費

詳細

品川区が、スタートアップの集積地「五反田バレー」の認知度アップや地域活力の向上、区内産業全体の活性化を図るべく実施している「五反田バレーアクセラレーションプログラム2023」。株式会社ゼロワンブースター(以下、01Booster)と連携して2024年3月までの約6ヵ月間、実施中のプログラムから、今回は、2023年11月9日に開催された「研修③急成長企業で起きる典型的な“ひずみ”と、拡大・成長し続けるための人・組織づくり」の様子を紹介します。

受講者のピッチに対する質疑応答で、グループメンタリング

今回の会場は、JR西大井駅徒歩1分にある品川区の「西大井創業支援センター(PORT2401)」の多目的スペース。アクセラレーションプログラム参加者には、同センターよりコワーキングスペースの無償利用(創業3年未満の方のみ)が提供されるため、研修の冒頭には野田賀一センター長/チーフコミュニティマネージャーから施設説明が行われました。

「五反田バレーアクセラレーションプログラム2023」の研修(全6回)は、シード/アーリー期ならではの課題の共有・相談を行うグループメンタリングと講演、交流会の3部構成になっています。
今回のグループメンタリングは前回に引き続き、受講者2名が5分間ピッチを行い、質疑応答を公開のグループメンタリングとして活発に実施。その後、全員がふせんに感想やアドバイスを書き、登壇者に渡されます。
単にピッチの練習になるだけでなく、受講者全員が発表者の事業化における課題や可能性を真剣に考え、フィードバックを通じて新たな気づきを得られる機会となっているのが特徴。その中で互いの知見や得意領域についても知り合えるため、より深い仲間意識の醸成やネットワーキングにもつながっています。

今回ピッチの1人目の事業は、夫婦で行う出産準備サービス。育休取得の阻害要因として、妊娠・出産・産後の生活に対する理解が進んでいないことがあり、男性にもできること、やるべきことを見える化することで、女性の負担を軽減。育休取得率向上を目指す企業の人事部などに営業を考えているというものです。
これに対する質疑応答では、参加する男性にもメリットが感じられる特典をつけられないかとか、投資家は男性が多いのでプレゼン自体も男性目線のストーリーで組み立ててもよいのではといった意見がありました。また、夫がサポートしてくれないので職場復帰が難しいなど、女性のペインの解消をもっと全面に出してはという意見も出ました。

ピッチ2人目の事業は、法人のトレジャリー業務支援。トレジャリーとは、金融取引のリスクを考慮して経営の意思決定を支援する業務で、同社サービスを活用するとグローバル企業レベルの財務マネジメント環境ができるというもの。ピッチでは支援の具体例とコスト削減成果、報酬の考え方などが示され、より伝わりやすい営業活動についてメンバーに相談しました。質疑応答に入ると、営業先企業の課題感ごとにプレゼン・営業資料の中身が変わるのでは、日本企業の事例は出しにくくても海外の事例で関心を惹けるのではといった意見が出ました。また、スケールのイメージを問われると、現在、個人向けの金融アドバイザー(IFA)が確立しており、その法人版の協会を立ち上げ、人材育成も進めるアイデアを披露。さらに、このアクセラレーションプログラムで刺激を受け、AIを活用したシステムにチャレンジしたいという話も。そのほか、事例作りやメディア露出も話題に出て、盛会の中、研修の前半が終了しました。

約2年で30人→150人へ。拡大期ベンチャーの組織課題がセキララに

後半の講演では、2019年6月に東証マザーズ上場を果たした株式会社ツクルバのCHRO 藤田大洋氏が登壇。ツクルバは、中古・リノベ住宅の流通プラットフォームcowcamo(カウカモ)を展開して、物件買取・リノベ・再販→ポータルに情報掲載→仲介を通して売却という従来の中古住宅の流通構造を変革しています。

同社は約2年で30人から150人に拡大しており、現在は200名以上に。その過程で起きたことや求められたことが、① 30人の「初期の組織化が始まるフェーズ」、② 50人の「組織の力学が生まれてくるフェーズ」、③ 100人の「上場に向けた拡大化フェーズ」、④ 150人の「上場後に起きた組織の揺れのフェーズ」ごとに解説されました。
たとえば、①では毎日メンバーとランチに行き、最低限の人事の仕組みからスタート。事業成長を最優先しながらキャリアや能力開発を支援して、メンバーとの信頼貯金を作るフェーズだったとのこと。
それが②では、マネジメント業務をウェルカム/食わず嫌いに分かれ、ミドルがいない中でそう組織を動かし、育てるのかが課題に。急拡大が始まるので謎のフロー感が生まれ、信頼貯金が全員には難しくなっていきます。
さらに③では、組織の中で職種や事業ごとのサブコミュニティーができ、IPO直前期には目標達成と本質的成長のトレードオフが。また、組織管理機能が強化されて間接工数が増加し、組織のひずみや一定の疲弊感が生まれ始めます。
そうして上場後の④では、一定の緊張から緩みが生まれる一方、上場企業として経営チームのアップデートが求められ、外部から新メンバーが参画して新旧のシニアマネジメント体制に。退職も一定程度出るなど、組織にゆらぎが起こり、ミッション/ビジョン/バリューを再考したとのこと。

それぞれのフェーズでの対処が語られ、質疑応答に入りました。
たとえば、当初プロボノや業務委託のメンバーが多かったところから、どう正社員中心の体制に持っていったのか。また、昨今は業務委託の就業体制が整ってきており、正社員採用にこだわる必要があるのか、意見を求める場面も。
また、スタートアップのCHROとして採用活動の難しさを聞かれると、10~30名のフェーズでは採用自体が難しく、CEOの代弁者として全力でカルチャーマッチを求め、採用活動をリードできる人材がいるかどうかが、初期の勝敗を決めると思うとのこと。
そのほか、離職防止策については、オンボーディング期間の3ヵ月くらいは1on1を頻繁に行ったり、食事に誘うなど、ある程度組織的にコミュニケーションを密にする。採用コストを考えれば、成果もいきなり求めず、3ヵ月は組織への適応期間と考えるたほうがよいなど、受講者にとっても喫緊の課題につながるだけに、白熱した質疑応答が続きました。

プログラムの最後には交流会として、登壇されたツクルバの藤田氏を交え、話が尽きない様子が見られました。今回テーマの組織についてや事業の進捗、また、最初のピッチでの営業課題に対して、自分の業界知見や経験、アイデアをもとに話し合うなど、シード/アーリー期の起業家同士ならではの会話が盛り上がっていました。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

TOP