【記念式典】ゆうぽうと跡地に、次世代の産業と文化の拠点が誕生!「CITY HALL & GALLERY GOTANDA(五反田産業文化施設) オープンニング記念式典」

イベントレポート 2024.5.20

【記念式典】ゆうぽうと跡地に、次世代の産業と文化の拠点が誕生!「CITY HALL & GALLERY GOTANDA(五反田産業文化施設) オープンニング記念式典」

開催日

2024年04月26日

会場

CITY HALL & GALLERY GOTANDA(シティホール&ギャラリー五反田)

参加費

詳細

五反田駅から徒歩5分のゆうぽうと跡地に生まれた五反田JPビルディング3階に、品川区立五反田産業文化施設として「CITY HALL & GALLERY GOTANDA(シティホール&ギャラリー五反田)」ができ、2024年4月26日にオープニング記念式典が開催されました。そのなかで、スタートアップの成長をテーマに行われた、ウォンテッドリーの仲暁子社長とセーフィーの佐渡島隆平社長による基調講演と、品川区 森澤区長と五反田バレーの中村岳人代表理事とともに行われたパネルディスカッションを中心に、式典の様子を紹介します。

品川区肝煎りの、スタートアップ支援の新たな拠点がオープン

2015年に閉館した「ゆうぽうと」の跡地に誕生した五反田JPビルディングは地上20階、地下3階建てで、フードホール「五反田食堂」やクリエーター向けシェアオフィス「co-lab五反田with JPRE」、星野リゾートの「OMO5東京五反田」などのほか、オフィスフロアを擁しています。その3階にオープンした「CITY HALL & GALLERY GOTANDA」は、435名収容のホールと約100名収容のギャラリーを備え、各種セミナーやビジネスイベントから、周辺地域の方による会合や展覧会まで、さまざまに活用いただけます。

オープニング記念式典では、品川区 森澤区長の開催あいさつに次いで、当施設の運営管理を行うマグネットスタジオ(大崎ブライトコアホールの運営管理も担当)より施設説明が行われました。そして、森澤区長と来賓によるテープカットを経て、日本を代表するスタートアップ経営者お二人による基調講演が行われました。

1人目の登壇者は、2010年9月創業・2017年9月IPOを果たしたウォンテッドリー株式会社の仲社長。同社が提供するビジネスSNSは共感採用のニーズに応え、登録ユーザー数389万人、登録企業数4万社(2024年8月期実績)を誇っています。
「スタートアップを増やす方法」と題した講演では、起業やスケールの経緯に次いで、スタートアップの成長のキーとなるPMF(プロダクト・マーケット・フィット)や事業・組織・財務の重要性を解説。そして、0→1フェーズで大事なのは自分ならできるという自己効力感であり、1→10フェーズでは知恵の伝承だといいます。そこではプロダクト・事業・組織・財務についての知恵の伝承はもちろん、メンバーの離職などのハードシングスについても、支えあう仲間やコミュニティの存在が重要。「CITY HALL & GALLERY GOTANDA」や五反田バレーがその起点となって、数多の0→1、1→10を育んで大企業、上場企業を輩出していってほしい。10年後の成果を楽しみにしていると結ばれました。


2人目の登壇者は、起業前のソニーグループ勤務から24年間、五反田エリアで仕事をしてきて、2014年創業・2021年IPOを果たし、クラウド録画サービスでシェアNo.1 を誇る、セーフィー株式会社の佐渡島社長。
「7年で上場!スタートアップ成長の軌跡と品川区の魅力」と題した講演では、まず、スタートアップ支援の重要性を確認。アメリカでは、スタートアップだったGAFAM5社で東証一部の約2170社を上回る時価総額となって市場を牽引。北米で年間24兆円がスタートアップ投資されています。クイックに経営判断や行動ができるスタートアップは社会課題解決の担い手としても強力で、日本でも大学生の44%がスタートアップへの就職を希望というデータも。これらをふまえ、エコシステム形成などによるスタートアップ支援をスケール感もって取り組むべきと提言されました。
そして同社の事業紹介と、創業からIPOまでの苦しかったエピソードを披露。必要なタイミングで株式や借り入れによる資金調達を行えた経験から、エコシステムの重要性を痛感したとのこと。そこで2018年7月、スタートアップ6社で品川区と調印して(一社)五反田バレーを立ち上げ、スタートアップが苦労する採用の支援イベントなどを開催。その後は五反田バレーの幹事会社も、freeeの売上ARR約230億円・従業員数約1300名などと成長したり、セーフィー製品も品川区施設で導入されたりしています。このようにスタートアップを皆で応援していきたい、という言葉で締めくくられました。

エコシステムを盛り上げるための、本音の議論が白熱

後半には、登壇した2人の社長と森澤区長によるパネルディスカッション「スタートアップ・エコシステムとしての品川区・五反田バレーの未来」が行われました。モデレーターは、(一社)五反田バレー代表理事の中村岳人さん。


まず、森澤区長が品川区・五反田の現況を解説。品川区では製造業(ものづくり)・商業(商店街)に加え、五反田バレーに集積する情報通信業が産業の柱となっており、区内スタートアップ社数は400社以上で全国自治体7位に。区のスタートアップ支援では、2020年より開催のアクセラレーションプログラムにて4期72社の成長をサポートし、累計調達額は約31億円に達しています。また、武蔵小山創業支援センターでは女性のビジネスプランコンテストを13回開催してきて、昨年よりスケールアップを目指す女性起業家向け経営ゼミも開始。そして、区では2024年度、創業・スタートアップ支援担当課長/係を新設し、スタートアップ・エコシステム推進事業を強化しています。


これをふまえ、区外からの視点でウォンテッドリー仲社長より、エコシステムの要素としては交流の場が大事。歴史あるスタートアップイベントでは20代の起業家でも上場ベンチャーのCEOやエンジェル投資家などとフラットに交流できるが、五反田バレーもそれに近しく、そうした場でハードシングスのリアルな知見が得られるといいます。
セーフィー佐渡島社長も、そうして交流する中で新しい発見や探索、パートナーとの出会いが得られるとよい。喫煙室でのパーソナルかつ本音の交流のような雰囲気が五反田エリアにはあるので、それを生かすべきとのこと。


さらにモデレーターから、スタートアップ・エコシステムをもっと盛り上げるための意見を求められると、佐渡島さんから、投資家から起業はリスクと思われがちだが、実はリターンは無限大で、再投資すればまた面白いものが生まれ続ける。そこにもっとスポットが当たってほしいとの発言がありました。さらに、資金調達が金融リテラシーの不足でうまくいっていない例も多いので、起業家には成功/失敗事例をしっかり共有すべきだといいます。また、事業の成否を分けるのは営業力であり、背水の陣で臨むべき。どれほど必死かを支援する側は見るべきだという意見も出ました。
仲さんからは、自分は起業経験があるエンジェルやCVCから調達して、資金だけでなくその知見を栄養にしてきた。また、上場するには中長期の成長戦略立案が重要で、そこはVCが緊張感を持ってペースメーカーとなってもらえるなど、いろいろなやり方、考え方があるので、エコシステムのなかにも多様性があるといいとのこと。

そこで区長より、行政や地域に求める支援について、実証実験や製品/サービスの導入などの実績づくりがイメージしやすいが、何があるとよいかという投げかけがありました。
すると佐渡島さんより、使ってみてダメな点もフィードバックしてくれていい。そもそも、失われた30年とはやり方を変えていかねばという社会の要請があるので、行政や地域で変化を取り込もうというときにスタートアップをうまく使ってもらうとよいのでは、という発言がありました。

そうして最後に一言ずつ、「CITY HALL & GALLERY GOTANDA」に期待することで締めくくられました。
仲さん「10年前の創業者は高スペックのエンジニアが中心だったが、アプリ制作も容易になった今は、発想やアイデアなどにより誰もが起業しやすい。そこで市民1人1人を起業家にしていけるようなあり方を、この施設に期待したい」。
佐渡島さん「地域で何かを生み出そうという意欲を、住民や地域、地元企業、行政がそれぞれ自分ごととしてかかわっていくことが大事。ここを拠点として、これからも熱量をもって仲間づくりや支援を行っていきましょう」
森澤区長「子どもたちに起業に興味を持ってもらうためにも、挑戦や新たな価値を生み出そうとすることを応援する風土があると、街のにぎわいや発展につながると思う。そういう波及効果を生めるよう、さらに連携していきましょう」

その後はホワイエ(ギャラリー)に移動して懇親会がもたれ、スタートアップ・エコシステムの醸成に向けて、商工会や区内スタートアップ関係者などの交流が見られていました。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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