【イベントレポート】メディアによって、自社の訴求ポイントを考える「五反田バレーアクセラレーションプログラム 研修② スタートアップにおける広報戦略 ~広報の意義や役割、取り組み方~」
開催日
2024年10月10日
会場
西大井創業支援センター(PORT2401)
参加費
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詳細
品川区が、スタートアップの集積地「五反田バレー」の認知度アップや地域活力の向上、区内産業全体の活性化を図るべく実施している「五反田バレーアクセラレーションプログラム2024」。株式会社ゼロワンブースターと連携して2025年3月までの約6ヵ月間、実施中のプログラムから、今回は、2024年10月10日に開催された「研修② スタートアップにおける広報戦略 ~広報の意義や役割、取り組み方~」の様子を紹介します。
起業家同士のピッチ&フィードバックで、忌憚なく意見を交換
今回の会場は、JR西大井駅徒歩1分にある品川区の「西大井創業支援センター(PORT2401)」の多目的スペース。アクセラレーションプログラム参加者には、同センターよりコワーキングスペースの無償利用が提供(創業3年未満の方のみ)されるため、研修の冒頭には野田賀一センター長/チーフコミュニティマネージャーから施設説明が行われました。
「五反田バレーアクセラレーションプログラム2024」の研修(全6回)は、受講者の有志がピッチを行って事業プレゼンおよび課題の共有・相談を行うピッチフィードバックと、講演、交流会の3部構成になっています。
このピッチフィードバックは、投資家に対するピッチとはまた違って、近しいフェーズの起業家同士でフラットに意見を交わすことができるのが特徴。もちろんピッチ技術を磨く上でも、人前で話す回数をこなし、ふせんなどを使って忌憚のない感想がもらえる貴重な場といえます。本プログラムでは、このピッチフィードバックや交流会を重ねていくことで、受講者間でより深い仲間意識の醸成やネットワーキングを図っています。
今回のピッチフィードバックでは受講者2名がピッチを行いました。
1人目の事業は、お寺特化型のLINEを用いたコミュニケーションサービス。リリースして約2年、すでに50寺社で使われています。もともと葬儀や法事の連絡は電話やファックスで行われていましたが、檀家の子世代からLINEなら便利だといわれてサービス化したのが檀家にも寺社にも好評とのこと。このピッチでさらに活用できそうなアイデアを求めています。現在ある機能は、命日・回忌通知、法事日程調整などの供養・仏事相談、ご祈祷予約とリマインド、混雑状況通知などの参拝受付、拝観料やご祈祷の事前決済など。
このピッチに対し、寺社に最も喜ばれる点を問われると、「郵送では時間の経過と共に返送が増えていく」「3回忌・7回忌・15回忌と続くが連絡が取れなくなっていく」「お寺と親交のあった親世代と違って子世代では回忌を忘れがち」という課題が、LINEで日々連絡を取り合うことで予防できるとのこと。また、観光振興目的でスタンプラリーなどを行うのはどうかと問われると、保守的で難しいが、マナーの発信と合わせて提案していきたいとのこと。同様に宿坊サービスも、ユーザーには人気だが運営に手がかかり、ビジネス化は難しそうだといいます。また、質疑応答を通して、まずは檀家とのコミュニケーションにフォーカスしているが、寺社側の意識が高まれば、次のステップとしてポータルサイトを作り、お寺の使い方などを広くユーザーに対して発信してみたいとのことでした。
2人目の事業は、事業会社と学術研究社のマッチングプラットフォームサービス。いずれのピッチフィードバックにおいても、数名から手が挙がって質問や意見交換がなされ、その様子も共有されて、どの受講者も学びが得られたようでした。
取材する側・される側を体験するワークで、広報すべきポイントを実感
後半の講演では、広報コンサルタントの鈴木奈津子氏が登壇。まぐまぐやPayPay銀行での広報担当およびフリーランスとしてFintechやAItechのスタートアップ、地方自治体、NGOなどへの伴走支援型広報活動を経験してきた同氏が、スタートアップが広報活動をする意義や役割、限られたリソースでの広報戦略の立て方、取り組みの優先順位、同氏が実際に提案・実行した具体的な施策例などについて、約30分解説しました。
残りの時間ではワークを実施。2人1組で代表者・記者役となり、代表者役が事業説明を2分で行い、記者役による質問1つに対して回答を3分で行うというのを、役割を交代して2回行います。今回はメディアを2種類設定して、経済新聞のスタートアップ担当記者と、東京で働く女性向けフリーペーパーの記者のどちらの立場で取材するかを、記者役が決めます。そのため、最初にそれぞれのメディア用の事業説明を各自で考えて、ワークに入りました。
取材を2セット終えたら、2人で感想をシェアします。代表者役では、取材としての事業説明とこれまでの事業説明との違いや難しさを、記者役では、記事に取り上げたいと思ったことや分かりにくかったことなどを振り返り、共有がなされました。
受講者はこのワークを通して、どうすればメディアに自社の情報を発信したいと思ってもらえるかが実感できたようでした。実際、ニュースバリューとしては新規性や専門性、独自性が重要で、そのメディアの関心領域に合った内容を伝えることが、取り上げられるコツとなります。また、専門用語なども噛み砕いて分かりやすくし、ストーリー性や今やるべき必然性、社会的意義などを伝えることも大事とのことでした。
プログラムの最後には、登壇された鈴木氏を交えて交流会が持たれました。鈴木氏に自社の広報について相談する姿が見られたり、研修も2度目となって親密さが増している受講者同士でも話が盛り上がっている様子でした。
執筆者
取材ライター
久保田 かおる
インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。