【品川区✕福岡市】“伝統と革新の織り成すビジネス先進地”品川区と“スタートアップの聖地”福岡市とがコラボ!「品川区×福岡市スタートアップ・エコシステム拠点都市連携イベント」

イベントレポート 2025.1.17

【品川区✕福岡市】“伝統と革新の織り成すビジネス先進地”品川区と“スタートアップの聖地”福岡市とがコラボ!「品川区×福岡市スタートアップ・エコシステム拠点都市連携イベント」

開催日

2024年10月29日

会場

Fukuoka Growth Next(fgn)

参加費

詳細

品川区は、スタートアップと地域産業の成長・発展を目指す「スタートアップ・エコシステム」の構築を進めています。その取り組みの一環として、全国に先駆けてスタートアップ支援に力を入れてきた福岡市と連携したイベントを開催。2024年10月29日にFukuoka Growth Nextにて品川区・福岡市のスタートアップ約20社、支援者などを含めた計約60人が集まりました。森澤恭子品川区長と高島宗一郎福岡市長によるトークセッションや両地域のスタートアップによるピッチの様子を紹介します。

地域のエコシステムを活性化して、日本を元気に

プログラムの皮切りは、品川区 森澤区長と福岡市 高島市長によるトークセッション。両地域のスタートアップ支援政策の特徴や両地域のエコシステム連携について、活発なやり取りがなされました。

2010年に就任した高島市長は、翌年シアトルを視察し、マイクロソフトやamazonなどが地方都市で拠点を持ってグローバル展開していることに刺激を受け、2012年にスタートアップ都市宣言を実施。また、新しいテクノロジーやビジネスモデルが世に出るのを後押しするために、国家戦略特区を活用して、本社が市外にある企業でも福岡市で提案・実現したいものに場所を提供したり、国に規制緩和を提言したりしています。
本日の会場であるFukuoka Growth Next(fgn)も全国から視察されますが、大事なのは写真に写らない点であり、コミュニティやエコシステムが重層的に重なり、丁寧にケアする人がいて、ライバルと出会って切磋琢磨することが最も人を成長させる。そうしたことを今回の連携で、互いに学びたいといいます。

そして森澤区長からも、品川区内に多数ある商店街とスタートアップの連携を五反田バレーと推し進めようとしていたり、多様な創業支援施設がそれぞれ特色ある活動をしていること、官民共創で実証実験を行う仕組みやSDGsについて企業と地域課題を解決しようという取り組みも今年度から始めていることなどが紹介され、さらに都市間でも施設の相互利用や実証フィールドの提供などで連携していけたらという発言がありました。

次に、スタートアップ都市としての魅力や強みについて高島市長から、福岡市は中心地から空港が近く、直行便も多くてアジアとのアクセスが良いとアピール。また、「実証実験フルサポート事業」で社会課題解決や生活の質の向上につながる実証実験プロジェクトを全国から募集し続けてきたことで、結果的にソーシャルスタートアップが福岡市に多数生まれたそう。さらに2024年からは、「ソーシャルスタートアップ成長支援事業」をふるさと納税(個人版・法人版)のメニューに入れ、寄付分がその企業に入る仕組みにしたといいます。

一方、森澤区長より、品川区も官民共創は今年からさらに注力している。本当に行政の地域課題が多様化していて、行政だけでは解決できない問題が増えているので、そうしたソーシャルスタートアップの視点も非常に大事。福岡市は以前から熱を持ってスタートアップ支援をしていて、熱い人たちが集まっている。連携することで互いの刺激し合いたいとのこと。

すると高島市長は、いま熱いのは「エンジニアビザ制度」だといいます。通常は発給に3ヵ月かかるビザを最短5日で出せるようにして、海外からエンジニアを呼びやすくしたとのこと。また、再開発エリアにある赤レンガ文化館を「エンジニアカフェ」という、老若男女が集まって切磋琢磨し合う場所にしたことも伝えられました。

森澤区長は「どこでもエンジニアは不足しているから、それは重要」と応えると、品川区の魅力について、ソニーやニコンなど、スタートアップとコラボしている大企業が集まっている。創業支援施設もいろいろあり、福岡市から全国に展開していきたいときなどに、ぜひ足がかりにしてもらいたいとアピールしました。

次に、両地域の連携で期待することとして高島市長より、品川区の製造業、大企業、商店街などの強みが、福岡市のサービスとうまくつながってほしいとのこと。高島市長が発足させている「スタートアップ都市推進協議会」でもスタートアップに意欲のある都市が連合していろいろな取り組みをしているので、品川区ともマッチングなどの取り組みをこれからやっていきたいといいます。

それに対して森澤区長も、今回の品川と福岡のように、都市ごとに強みや特徴があるものなので、それを互いに活かし、化学反応を起こしていきたいと応えました。

また、福岡市がMOU(基本合意書)を締結している12カ国16のスタートアップ拠点のスタートアップが一堂に会する「FUKUOKA STARTUP WEEK」を10月に開催しましたが、うち2日間を「RAMEN TECH(ラーメンテック)」と銘打って、ピッチコンテストやトークセッション、ブース出展、マルシェ、音楽ライブなどを実施。この2日間だけでも海外から18カ国67社、約400人が来場し、キーパーソン同士がつながったといいます。

最後に高島市長より、日本全体で新しい価値を創り、リスクをとってチャレンジすることがリスペクトされる日本にしたいという発言があり、森澤区長も大いに共感して、トークセッションが締めくくられました。

福岡、品川のスタートアップ6社が発信&交流

次いで、福岡市、品川区の順にスタートアップが3社ずつ登壇してピッチを行いました。

●チャリチャリ株式会社 代表取締役 家本賢太郎氏
15歳で株式会社クララオンライン(現クララ)を開業しており、2018年からシェアサイクルサービスを始め、北部九州・福岡を中心に広く展開中。「まちの移動の、つぎの習慣をつくる」を掲げ、日本の地域交通、公共交通を支えるのが目標。自社で自転車もソフトウェアも製作し、トラックでの自転車回収も自社の雇用で行っている。福岡市とは共同事業の形をとっており、本店を東京から福岡に移転。ポート設置も93%は福岡の企業からの用地提供によるなど、地域資本に支えられている。

●GG.SUPPLY株式会社 代表取締役 國村隼太氏
取れたて野菜が最短30分で届く、農薬ゼロ・無菌栽培の都市型農業事業を2021年に立ち上げ。野菜は収穫から食卓に届くまで7~10日かかるが、同社では都会に野菜のコンビニを作り、年間1000種近くの野菜を育て、Uber Eatsで30分以内にデリバリー。従来の農業物流よりも90%以上CO2排出量を削減。また、注文後に収穫し、購入後も約30日冷蔵庫で日持ちするため、生産者・消費者ともフードロスゼロが可能。現在、「ソーシャルスタートアップ成長支援事業」でザ・リッツ・カールトン福岡のレストラン内に畑を作り、お客様自身が収穫し、料理の仕上げをする新たな食体験を準備中。

●Tensor Energy株式会社 代表 堀ナナ氏
リクルートや戦略系コンサルなどを経て、2021年に再生可能エネルギーの発電所向けAIクラウドプラットフォームを開発・提供する同社を立ち上げ。太陽光発電では昼間電気が余りやすいのが課題のため、需給バランスに合わせた電力取引で発電事業者が、太陽光発電と蓄電池の運用管理、財務を最適化できるソリューションを開発。実証実験では1日の業務時間30分で47%の売り上げ増が可能となり、170件以上の発電所で導入されている。

●株式会社エスマット 代表取締役 林英俊氏
2014年より、IoT重量計による在庫管理DXに取り組む。ネットにつながった重量計に在庫を乗せっぱなしにすることで、重量で在庫数を把握する仕組みで、どこからでもブラウザで在庫管理が可能になる。対象物はネジでも粉物でもドラム缶でもよく、これらを24時間見続けることで在庫管理で起き得る問題を防ぐことができる。累計1000社ほどで導入されており、自動車や化学などの製造業が多いため、本社は品川区だが、fgnにも拠点を持っている。

●ファインディ株式会社 代表取締役 山田裕一朗氏
三菱重工業、コンサル、スタートアップ執行役員を経て、2016年に同社を創業。「挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる。」をビジョンに掲げ、ソフトウェアエンジニアにフォーカスした2事業を展開。エンジニアと企業をマッチングするプラットフォームでは、GitHubのOSSをAIで解析でき、フリーランス版も好評。もう1つは、同様に独自のAI解析でエンジニア組織のパフォーマンスを可視化し、生産性向上に役立てるサービス。現在、国内約2000社で導入され、ソウル、台北、バンガロールでも展開中。

●株式会社スマートエデュケーション 代表取締役 池谷大吾氏
日本ヒューレットパッカード、サイバーエージェトグループを経て、2011年同社を創業。全国2000施設のこども園、幼稚園、保育所、児童発達支援施設にICT教材や自然豊かな環境を提供している。事業の核となるICT教材は、工作やお絵かき、昆虫観察などで道具として使うもので、保育の質を上げるものとして高く評価されている。また、園庭を子どもが自律的に遊べるような環境にする事業も推進。いずれもノンバーバルなため、海外展開も含め、福岡市との連携に期待。

次いで、ピッチを行った6人と(一社)五反田バレー代表理事の中村岳人氏から、エコシステム間の連携を通じて実現したいことや取り組みたいことについて、一言ずつありました。


●チャリチャリ 家本氏「短期でよいので、実際に行き来して一緒に働いてみたい。地域の交通課題なども一緒に考えられたら」

●エスマット 林氏「製造業のDXをやっていると九州は魅力的。福岡市周辺まで広く巻き込んで、一緒にいろいろ取り組んでみたい」

●Tensor Energy 堀氏「1つキーワードとして「越境」があると思う。人材交流も、地域をまたいだ企業との連携もそう。当社でも電力を越境して届けるようなことをやってみたい」

●スマートエデュケーション 池谷氏「福岡市は独自の『こども誰でも通園制度』で保育時間を国の基準の4倍の月40時間に拡大。こどもに優しい都市なので、教育系スタートアップはぜひ連携深めてほしい」

●五反田バレー代表理事 中村氏「スタートアップが成長フェーズで地方や海外進出を考えるときに取っ掛かりとなる動きが、地域のエコシステム同士がつながることで生み出せそう。また、連携するには飲食を含め、一定時間を一緒に過ごしたことによる信頼感が大事。そうやって交流を深めていきたい」

●GG.SUPPLY 國村氏「福岡の次には東京進出を考えており、具体的にオフィス内で野菜を栽培して福利厚生として配るとか、社食で出すような依頼もある。今日のイベントを通して、品川への出店を魅力的に感じた」

●ファインディ 山田氏「エンジニアカフェやエンジニアビザ制度など、福岡市の取り組みを評価したい。日本ではエンジニアの7割が東京にいて、それ以外の地域では確保が難しい。海外から呼ぶにも文化や年収の違いがあるので、行政の支援を期待したい」

その後はネットワーキングのための交流会がもたれ、登壇者や福岡市、品川区からの参加者が活発に交流や意見交換を行いました。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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