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インタビュー 2021.10.20

【急成長を遂げた品川区のスタートアップ特集】 株式会社ギフティ 太田 睦代表にスケールするまでの道のりや海外展開のビジョンを聞いてみた

2010年に創業し、『eギフトを軸として、人、企業、街の間に、さまざまな縁を育むサービスを提供する』をコーポレート・ビジョンに、eギフトの発行から流通・販売まで一気通貫で提供する「eギフトプラットフォーム事業」を展開する、株式会社ギフティ。個人向けから法人向け、自治体向けなど対象を広げ、海外事業にも着手。2019年9月に東証マザーズ上場後、2020年12月には東証一部へ昇格を果たし、2022年度の市場区分見直しでもプライムへの適合が決まっています。

その創業者である代表取締役の太田睦さんに、起業のきっかけや事業成長の背景、また、2021年6月に五反田内で行ったオフィス移転への思いなどについて聞きました。

(プロフィール)

太田 睦さん 株式会社ギフティ 代表取締役

2007年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、2007-2009年にアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現在はアクセンチュアに統合)に入社。官公庁の大規模システム開発プロジェクトなどに従事し、2年半のコンサル経験を積み退社。同じくアクセンチュアでのコンサル経験を持つ仲間2名とともに、2010年8月に株式会社ギフティを設立。代表取締役に就任。

数百円のカジュアルギフトを簡単・安全に贈れる仕組みを開発

―ギフティでは、eギフトの生成から流通まで展開されていますが、eギフトとはどのようなものですか。

太田

創業のきっかけに通じますが、私が大学を卒業した2007年は国内でSNSが流行り始めたタイミングでした。リアルの友人との関係が、ネット上でもつながるようになったわけですね。SNS上では「誕生日おめでとう!」といったお祝いのメッセージもよくやり取りされていましたが、メッセージだけだと味気ないなと感じており、そうは言うものの誕生日当日に会ってお祝いできないケースもある。そういった場合に、オンラインのメッセージに気持ちを添えてちょっとしたプレゼントが贈れたらいいのにと、コーヒー1杯やドーナツ1つ程度の気軽なギフトを電子チケットの形で送り、近くの店舗で引き換えてもらうような仕組みを考えました。

―贈る側、もらう側のメリットは何でしょうか。

太田

ギフトを贈る側は、「giftee」で商品を購入し、購入後に発行されるURLを、SNSやLINE、メールなどで送るだけなので、相手の住所を知らなくてもスマホから手軽にギフトを贈れます。さらに、受け取った側の利用も簡単で、スマホの画面から受け取ったURLをタップしeギフトのチケットを店舗で表示すると商品と交換することができます。また、配送型の商品やオンライン上で利用できるシリアルコード型の商品もご用意しており、ギフトをもらった人は自分の都合の良いタイミングで受け取り、利用することができます。

―創業が2010年で、それまでは大手外資系コンサルティング会社に勤務されていました。もともと起業を考えていたのですか?

太田

そうですね。大学3年の就活中、書店でシリコンバレーの、後のGAFAが急成長しているという書籍を見かけ、起業やスタートアップに興味を持ちました。彼らはお金を稼ぐためではなく、世の中をアップデートして社会の負を解消することを事業にしていました。自分でもそういうサービスやプロダクトを作りたいと思い、起業にも役立つビジネススキルが短期で身につくと期待してコンサルファームに入りました。後の創業メンバーの一部は、コンサル時代の仲間です。

法人のアンケート謝礼、自治体の地域通貨の電子化など、ニーズが次々に

―そうして太田さんが発見した「社会の負の解消」のテーマがギフトだったわけですね。起業からスケールへの道のりを教えてください。

太田

まずは街中のカフェなど、個人商店にアタックして30~40件ほど、eギフトを扱ってくださる店舗を開拓し、創業から7ヵ月後の2011年3月に「giftee」をリリースさせました。

また、その年の夏に、大手コーヒーチェーンの一部店舗でトライアルを実施しました。その企業にはサービスのコンセプトを共感いただくことができ、実際に使用されたユーザーの反応も上々でした。ただし当時はバーコードを使わず、電子チケットの引き換え画面に表示されるコードを店舗スタッフが逐一確認しなければならなかったので、店頭オペレーションと電子チケットの二次利用のリスクが課題となりました。

―オペレーションやセキュリティ面の改善が急務になったのですね。

太田

ギフトは約500円するので、これを簡単に複製されると店側も困ります。いかにして一回しか使えない電子チケットを生成できるかという点がポイントでした。

そうして技術面をクリアしてプロダクトの信頼性を高めていき、その大手コーヒーチェーンのほか、コンビニエンスストアや飲食チェーンの開拓も進めました。

―転機はありましたか?

太田

一番大きな転機は2014年くらいのことで、企業からアンケートの謝礼に使えないかという相談があったのです。法人利用の場合、商品単価が100~200円でも1000件単位で発注いただけるのでビジネスとしての規模も大きくなります。企業が抱える課題感も大きく、それまで景品として紙やプラスチック型のギフト券を送る場合、配送費や梱包費、人件費がかかっていたのです。それがeギフトならURLをメールで送るだけで済むので、大幅にコスト削減できると評価いただき、そこから法人需要が大きく伸びました。

―売上もそこから一気に伸びましたか?

太田

そうですね。eギフトを使いたい需要が高まったことで、eギフトを生成する側の企業にもアピールしやすくなり、相乗効果でeギフトを利用する側の企業も他業界に広がりました。

事例を自社サイトやプレスリリースで丁寧に発信することで、問い合わせも喚起されました。分かりやすい事例として、大手通信会社の会員になると全員ドーナツがもらえるというキャンペーンでは、数千万人に使われました。またコロナ禍では、リモートワークが続く中、福利厚生として企業が従業員にフードのデリバリーeギフトを贈るという用途も増えています。

―そのほかには、どのような展開をされていますか?

太田

地域で利用可能な通貨や商品券を電子化し流通させるソリューションを自治体向けに展開しています。2020年には観光庁に採択され、Go To トラベルの電子版地域共通クーポンの仕組みを提供しました。ふるさと納税の返礼品として特定の地域内で利用できるeギフト「e街ギフト」を導入いただいている例もあります。

事業部間の壁をなくすためにも、リアルのオフィスを重視

―創業時のオフィスは恵比寿で、その後は品川区です。不動前から五反田、そして2021年6月に五反田内で移転されました。どのような考えで選ばれていますか?

太田

主要なクライアントの本社がこの辺りなのと、街の雰囲気が良いのが大きいですね。美味しいご飯屋さんも多く、IT企業の多い渋谷・新宿・六本木よりも街が落ち着いていて居心地がよく、居ついてしまいました。

―一般にはコロナ禍を通して、オフィスの考え方にも変化がありましたが、このタイミングで移転されたのは、なぜですか?

太田

移転はコロナの流行が始まる前から計画していたのですが、まだまだ事業が伸びており、今年だけで社員が約40人増える予定です。コロナ収束後にオフィスに戻る際、これまでのオフィスだと全員分の席が確保できないので、増床のため移転しました。もちろんリモートワークにも集中しやすいメリットはあるので、うまく使い分けていきたいですね。

新オフィスは空間共有を重視して、執務エリアはワンフロアにまとめました。それとは別に、コミュニケーションやブレストのためのフロアを設けています。

―そのようにコミュニケーションを重んじるカルチャーは、どのような考えによりますか。

太田

ギフトというサービスの特性上、社員には人に興味や関心を持ってもらいたいため、「小指の先にかすったら自分ごと化する」ということをよく言っています。オフィスで仕事をしていると他のチームの声も聞こえるので、誰かが悩んでいる時に、自分がそれを解決できると思えば、チームをまたいで声をかけます。まわりへの小さな親切や配慮を契機に、横のつながりやスキルの掛け合わせがどんどん生まれていく。そんな組織でありたいと思っています。

当社のどのサービスも、各事業部単体で成り立つものは少なくて、複数の事業部チームが連動してはじめてお客様に届けられるサービスばかりなので、できるだけ壁が生まれないようにしています。

事業や市場を広げるには、外部の声も丁寧に聞くことが大切

―企業としての成長に再び話を戻しますが、太田さんご自身で、この事業がいけると確信できたのはどのタイミングでしたか?

太田

最初の、事業アイデアが浮かんだときですね。ちょっとしたギフトとしてコーヒー1杯を贈るシーンが目に浮かんだんです。すごく便利だから多くの人が使ってくれるに違いないと思えました。実際、投資家には当初、個人向けギフトというのはそれほど共感されなかったようでしたが、自分のなかに確信があったので、言い切ることができました。

その上で、友人や家族にアイデアを話してみて、アンケートも採りました。こういうシーンで今はどうしているか。そのときにこういうサービスがあったらどうか。いくらまで払うか、といった内容です。そこで多くの人は賛同してくれましたし、かなり初期に大手コーヒーチェーンにアポイントを取ることができていて、そこでコンセプトをお伝えした時の反応でも手応えは感じました。

―法人向け需要の発掘となった、アンケート謝礼の用途には、どのように気づいたのですか?

太田

企業のほうから問合せをいただきました。その担当者がプライベートでeギフトのユーザーであり、仕事である景品送付のためにまとめて購入ができないかと聞かれたのです。

また同時期に外部の方から、謝礼のビジネス可能性について意見を求められたのもあります。そこでプレゼン資料を作って何社かに伺ってみたところ、アンケート謝礼について、どこも配送料や個人情報取扱に対する課題を持っており、ニーズに気づくことができました。

―外部からの声に耳を傾けることも大事なのですね。

太田

事業を長くやって、ずっとそのことばかり考えていると、そうした独自の視点に耳を傾けられなくなることもありますが、それが意外と突破口になったりします。

地域通貨の電子化も当社発信ではなく、取引先から「ギフティの仕組みを使えば、こういうものに使えるのでは」といわれたのがきっかけです。当初は地域通貨について全く知りませんでしたが、調べてみると用途として有望であり、今ではさまざまな自治体からお引き合いを受けるようになりました。

東南アジアでの拠点展開は、国内で支社を出す感覚に近い

―新たな展開として、海外進出も始められていますね。

太田

2018年にマレーシアに現地法人を作りました。東南アジアの中では先進国で、ギフトを贈る経済的余裕があることや、銀行口座やクレジットカードが普及していることから、eギフトと相性が良いと判断しました。親日国であり、英語圏なのでコミュニケーションを取りやすかったことも、海外拠点として選択した要素の一つでした。

―海外進出により、発見などはありましたか?

太田

東南アジアは一つの経済圏と見なせるというのを実感しました。たとえば、マレーシアからさらにインドネシアやフィリピンにも進出しようというのは、日本で東京から大阪や北海道に支店を出すのと同じ感覚です。ですから東南アジアのスタートアップは、東南アジア全体を一つの国として見なして事業展開しており、その国で完結させることは考えていない企業が多いのです。当社もその感覚で、2021年7月にはベトナムにも進出しました。

また、日本のブランド力が通じるところもまだまだあります。アポイントを取る際も、日本企業なら一応話を聞いてみようかと思ってもらいやすいですね。あまりエラーが出ないだろう、勤勉で返信が早いだろう、といった日本企業に対する期待があるので、それは生かしていきたいです。

これから起業する人も、アジアを視野に入れておくとよいのではないでしょうか。

―なるほど。そのほかにも、これから起業や資金調達を考えている方にアドバイスをお願いします。

太田

起業すると、ほとんどは自分の思いどおりにならないことばかりです。特に初期は、毎日ジェットコースターに乗っているような感覚で、すごくいいことがあると、翌日は壁に突き当たる。感情の起伏がもうおかしなことになるので、自分のなかに確固たるものを持っていることがすごく大事なんです。

―ぶれない心、ですね。それはどう作ればよいでしょうか?

太田

自分自身が腹落ちするまで考え抜くことですね。私の場合は、こういうシーンでコーヒーを贈ったらきっと喜ばれるという確信が糧になり、後の苦しい時期も乗り越えられました。

これがたとえば、米国で流行のサービスを日本に持ち込むようなアイデアであれば、危機に瀕した時に乗り越えられなかったでしょう。なぜなら、そのサービス自体にそこまで思い入れがないからです。どれだけそこに自分の思いを入れ込めるか、腹落ちし切れるかが大事なのです。

―その感覚を自分が持っていれば、貫けるわけですね。

太田

投資家も、そのアイデア自体がIPOまで行くかよりも「人を見ている」ケースが多いですね。実現したいことの手段としてのサービスがあって、その手段がダメなら別の手段を自ずと考え出すような起業家のほうが、投資したいと思わせるのです。だから「人」が重要で、アイデアのほうは一応見るくらいのことが多いように思います。何をしたいかという思いや、それがどのような原体験から来ているのか、何がモチベーションでこの人は動いているのかが、投資家を動かすのです。

―ありがとうございました。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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