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インタビュー/対談/特集記事

インタビュー 2022.6.1

【令和4年度 新規事業特集】 品川区のものづくり企業と全国のスタートアップをつなぐ事業創出プログラムを開催! 事業をプロデュースするCreww株式会社に起業までの道のりとともに、意気込みを聞いてみた。

先進国のなかでも起業率が低く、チャレンジ後進国である日本の環境を変えたいという思いから、2012年に設立されたCreww(クルー)株式会社。現在は「大挑戦時代をつくる。」というビジョンのもと、約6000社のスタートアップが登録するオープンイノベーションプラットフォームを運営している。国内トップクラスを誇るオープンイノベーションプログラムの開催や、事業や個人の挑戦を応援するスタートアップスタジオなど、「事業会社・スタートアップ・個人」の多様なニーズに対応したサービスを展開しています。その創業者であるCEOの伊地知天(そらと)さんに、起業からスケールまでの道のりや今後の展望を聞くとともに、Crewwが企画・運営する「しながわ新規事業創出(事業共創)プログラム2022」について、担当者の伊地知中(あたる)さんに聞きました。

 

(プロフィール)

伊地知 天さん Creww株式会社 代表取締役CEO

高校、大学を米国で過ごす。カリフォルニア州立大学在学中に起業したことをきっかけに、これまで国内外で合計4社の企業を設立した実績を有す。東日本大震災を機に帰国し、2012年8月Crewwを設立。現在は、スタートアップ・エコシステムの構築やオープンイノベーションに関わる多くの組織やプロジェクトに参画している。

【加盟組織・プロジェクト】

・(社)新経済連盟 監事

・(社)情報社会デザイン協会 理事

・J-Startup 推薦委員(経済産業省×JETRO×NEDO)

 

伊地知 中さん Creww株式会社 Open Innovation Dept. Partner Team Director

米国ワシントン州のカレッジ在校中に大学の同期生らと初の起業。

その後、フィリピンのセブ島でWebシステム開発会社を起ち上げ設立から3年で事業売却。

2014年にCrewwへ入社。スタートアップ企業の成長支援と事業会社の新規事業創出を支援するオープンイノベーションプログラムを多数手がける。

現在は、オープンイノベーション事業のパートナーチームのディレクターとして事業創出を支援する活動に注力している。

 

起業や事業づくりが日常的な西海岸留学中に、21歳で起業

―まず伊地知社長に伺います。16歳で渡米されていますが、もともと起業マインドがあったのですか?

伊地知天

そういう意識はなかったのですが、西海岸で学生として過ごしていると、友人同士で会社を作ったり、Webサイトを立ち上げたりというのが、ごく自然に行われていて、私自身も気負うことなく起業をしました。21歳でしたが、日本の感覚からすると珍しいことだったのだと、後に帰国して初めて知りました。最近では日本でもようやく学生起業など、若いうちからのチャレンジも増えていますから、良いことだと思いますね。

―2012年にCrewwを設立する前に、米国とフィリピン・セブ島で起業をされていますね。

伊地知天

そうです。セブ島では立ち上げだけ関わって、兄に代表を務めてもらい、2年ほど現地で事業をしてもらいました。

―英語圏ではそのように、思い立ったら起業できるような雰囲気が当時からあったということでしょうか?

伊地知天

日本と制度的な違いというのは、特にないと思います。雰囲気やカルチャーの違いですね。

東日本大震災を機に、日本にも「挑戦できる風土」を創ろうと決意

―日本に帰国したのは、2011年3月の東日本大震災がきっかけですか?

伊地知天

そうです。何かしなければという思いで、4月には帰国を決意しました。以前から親しくさせていただいていた大学教授が当時山形大学にいらして、被災地にバスを出すというので、学生と一緒に通ってボランティアをしていました。ボランティアをしている中で現地の方がおっしゃられていた「復旧はしても復興はしない」という言葉が印象的で、土地の資源だけに頼らないIT・テクノロジーを活用した事業ができるようになれば新たな産業が創出され地場の産業も活性化するようになるのではと思い、ITスタートアップが生み出すエコシステムの形成を目指して起業をしました。それは、被災地だけでなく全国でもいえることだと思います。

―それが一時帰国ではなく、そのまま日本で起業されたのですね。

伊地知天

当初はあくまで一時帰国の予定でした。米国でのビジネスも現地では継続していて、住まいもそのままにして来ていたんです。ただ日本で、チャレンジする人たちのプラットフォームを立ち上げようとして、最初はプロジェクトで進めていました。しかし、片手間でできることではないと途中で気づき、半年後くらいに会社を設立した。それがCrewwですね。

―そのときは、どのような想いだったのでしょうか。

伊地知天

長いこと海外にいると愛国心が湧くのですが、外から見ていると改めて日本の良さを実感します。治安が良く、心理的な安全性が最低限担保されており、サービスのクオリティやホスピタリティの点でも非常に優れた国です。一方で当時、米国をはじめグローバルでは、新しい産業を生み出すようなスタートアップなどの育成、成長産業に力を入れており、西海岸で感じたような挑戦できる環境を日本でも醸成していきたいと思ったのです。

大企業文化の日本らしく、企業とのコラボでスタートアップを支援

―当時、プラットフォームとしてどのようなものをイメージしたのですか?

伊地知天

米国には「Angel List」という、個人投資家と起業家を結びつけるプラットフォームがあったので、そのように日本のどこにいてもキーパーソンと繋がることが出来れば、インターネットの恩恵を受けてアントレプレナーシップの文化が醸成できると思いました。ただ、米国ではキーパーソンが投資家ですが、日本では、豊富な経営資源や資金力のある大手・中堅企業ではないかと考えたのです。むしろ、日本が大企業文化だというのをポジティブに生かし、日本ならではのスタートアップコミュニティを作ろうと思いました。

―豊富な経営資源や資金力のある企業と、新しいアイデアやテクノロジーを持つスタートアップをつなげることで、「Angel List」のような起業支援ができるがということですね。

伊地知天

そうですね。創業期は東京のスタートアップによる登録が圧倒的に多かったですが、3~4年目頃には首都圏以外の地域のスタートアップの登録も増えていきました。そのうちの1社が九州のスタートアップで、アクセラレータープログラムによって東京の事業会社とコラボして、事業提携だけでなく、資本提携までできたサクセスストーリーのような案件もできました。それを契機に、ますます全国各地のスタートアップが登録していただけるようになりました。

―やはり、スタートアップの登録社数を増やすのが大命題なのでしょうか。

伊地知天

当時はそうでしたね。今は約6000社が当社のプラットフォームに登録しており、毎月平均100社くらいずつ増えています。ただ、現在日本のスタートアップは1万社いるといわれているので、この数を増やすことよりも、登録後のフォローに注力するようにしています。そのために、登録したスタートアップ1社ごとに面談をして、考え方や課題感をヒアリングを実施しています。プラットフォームを通じてのデジタルなマッチングだけでなく、直面する課題に寄り沿って支援をする人的なマッチングが大事ですね。無機質ではない、生きたデータベースを目指しています。

スタートアップ支援で「プラットフォーム」にこだわった理由

―御社のビジネスでは、どうマネタイズしているのでしょうか。

伊地知天

企業がDX推進(デジタル化)や新規事業創出を自社だけではノウハウがなく推進できなかったり、そもそもどうやればよいか分からないといったところに需要がありますので、企業からオープンイノベーションプログラムの開催費用をいただいております専任で人材を雇い、ゼロから自社内で始めると資金と時間を相応に要しますが、それをスタートアップと取り組むことで、短期間・省コストでイノベーション創出の推進ができるので開催する企業が増えてきております。

当社で特徴的なのは、業界のトッププレイヤー企業だけではなく、それ以外の大多数の企業でもスタートアップと協業できるようにサービスを設計しています。そもそもスタートアップ関連でビジネスをしようと思えば、金融機関もベンチャーキャピタル(VC)も利益を考えてトッププレイヤーと組むのがセオリーですが、トッププレイヤーたちは経験・ノウハウがあるので自走ができます。当社は、自走できない企業に対してオープンイノベーションを促していくことで、日本社会全体のイノベーション創出の支援していきたいのです。

―金融機関やVCは金銭的なリターンを前提としたビジネスとして投資先を探す流れでスタートアップを支援しますが、Crewwが別のアプローチをとり、スタートアップ支援のプラットフォーマーとなったのはなぜでしょうか?

伊地知天

やはり「Angel List」がすごく刺激になりました。米国でもかつてはシリコンバレーかニューヨークにオフィスがないと投資家には会えなかったのですが、インターネットの恩恵により、どんな地方にオフィスを構えようとも機会が平等になりました。誰にでもチャンスがある、というのがプラットフォームの大前提です。その点、日本でも10年前からスタートアップコミュニティは六本木界隈にはありましたが、限られた人たちだけの、ごく特別なものでした。かつてのシリコンバレーも閉ざされたコミュニティだったのが「Angel List」で民主化されました。ですから、日本にもプラットフォームが必要だと思ったのです。

またアプローチとしてVCは純投資で、利益が出るかどうかが軸ですが、事業会社はシナジー投資なので事業シナジーが大事で、キャピタルゲインは二の次だというケースが多いのです。ですから投資の軸がVCでは1つですが、事業会社だとたくさんあり、その内容やテーマも個社ごとに異なります。そうなると、どのようなスタートアップにも投資されるチャンスがあるといえます。そうした複雑な状況下でのマッチングにはプラットフォームこそが重要なのです。

―なるほど。大変意義深いスキームだということですね。また、Crewwでは、IT企業の経済団体である新経済連盟で幹事を務めるような活動もされています。

伊地知天

新経済連盟では、スタートアップエコシステム全体の発展を目的とした政策提言やオープンイノベーションプロジェクトチームのリーダーを務めています。2020年4月から始まった「オープンイノベーション促進税制」の施行前に、オープンイノベーションついての理解を促進するために国会議員に向けた講演なども行いました。

本税制は、国内の事業会社またはCVCが、スタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%が所得控除される制度です。
事業会社がスタートアップと協業し、イノベーションを生み出すことを国が推奨するという明確なメッセージなので、協業の必要性や新規事業を創出するマインドを醸成できるのではないかと思います。オープンイノベーションの推進を後押しする一つの理由になると思いますし、スタートアップにとっては、大歓迎すべき税制だと思っています。

クロスボーダー強化で、海外のスタートアップと日本企業の架け橋に

―今後の事業展開について教えてください。

伊地知天

現在、弊社はオンラインでオープンイノベーションプログラムを開催できる「Creww Growth」(https://growth.creww.me/)を展開しています。本サービスを通じて、企業のデジタル化や新規事業創出の支援とスタートアップの成長支援を行っています。業界や地域によって特性もあるので、今後もさらなるリサーチと改善を重ねてクオリティを高めていきます。

もう1つ、注力しようとしているのがクロスボーダーの取り組みです。日本のスタートアップが海外投資家と組むのはもちろん、日本の事業会社が海外のスタートアップと組むのもチャンスがあると考えています。

―言語の壁は、問題になりませんか?

伊地知天

昨今、高精度の自動翻訳ツールがあるので、コミュニケーションレベルでは問題がなくなってきています。

―日本の事業会社と海外のスタートアップとの協業は、ニーズが高いのでしょうか。

伊地知天

そうですね。つい先日もインドのエネルギー系スタートアップと日本の事業会社をマッチングするピッチイベントを開催しました。また、台湾の工業技術研究院(ITRI)と共同で、台湾のスタートアップと日本企業によるオープンイノベーションプログラム「日台アクセラレータープログラム2022(仮称)」を開催することが決まっています。

このような取り組みを通じて、日本の会社と組みたいとか日本市場を目指したいという海外のスタートアップは多いと実感しています。ただ、そもそも日本社会や企業が保守的なイメージも持たれているため、そこをつなぐ当社のような存在に意義があるといえるでしょう。日本の事業会社がオープンに取り組めば、クロスボーダーで格段に機会を広げられると感じています。

実証実験の費用サポートも! 品川区の「製造業×スタートアップ」共創プログラム

―ここからは、Crewwが企画・運営を行う「しながわ新規事業創出(事業共創)プログラム2022」について、担当されるDirectorの伊地知中さんに伺います。まず、どのようなプログラムですか?

伊地知中

品川区内のものづくり企業と全国のスタートアップとの協業を支援する約6ヶ月のプログラムです。自社だけでは難しい新規事業創出や課題解決のために、革新的なアイデアや技術を持つスタートアップとつなぐもので、当社が伴走支援するのがポイントです。まず参加企業がスタートアップに募るテーマを策定するところから、チーム組成、事業課題の整理、事業開発テーマの選定、事業計画のブラッシュアップなどを一緒に進めます。

そのうえで、8月8日~26日にスタートアップからの提案を受け、一次・二次選考を経て、プレゼンテーションを受けて12月2日に最終選考を行い、採択プランを決定して実証実験に入ることができます。その成果や今後の展望を、2023年3月3日の成果発表会で披露しますので、具体的な実りを得ることができるというプログラムです。もちろん、プランの選定や実証実験過程においてもCrewwが伴走支援していきます。

―このように自治体を通して地域の企業と全国のスタートアップをつなぐ取り組みは、これまでも行われてきたのでしょうか?

伊地知中

当社では、「47クルーズプロジェクト」(https://creww.me/47crewws)という自治体や地方銀行と共に地域企業とスタートアップのオープンイノベーションを推進するプログラムを開催しており多くの実績を挙げています。

たとえば、浜松市と当社が主催で開催した「浜松アクセラレーター2021」のプログラムを通じて、静岡県浜松市にある創業60年の中堅企業「朝日電装」と「タタメルバイク」を展開する東京のスタートアップ「ICOMA」は、EV用HMII(ヒューマンマシンインターフェイス)の共同開発の実証実験を実施して、今後の二輪業界のEV化を見据えたHMII仕様の開発を進めています。開催企業からは「社内の変革意識を刺激できた」「業界をまたいで多様なスタートアップと関わり、新鮮だった」という反響をいただいています。

―それでも中小企業にとっては、スタートアップとの連携といっても、すぐにはイメージが湧かないかもしれません。どのようなメリットがあるのでしょうか。

伊地知中

自社の業務や製造工程を効率化したいといったことが、デジタル化やDXで解決できたりします。また、自社の技術を転用して、新たなサービスを生み出せないかなど、中小企業にとっても課題はあるはず。自社単独では難しい、そうしたことに向き合うのに、オープンイノベーションという協業スタイルは打ってつけなのです。

製造業のものづくり企業には技術があり、一定の顧客基盤もあります。スタートアップというのは、それらと掛け合わせられるような技術やアイデアの宝庫といえます。実際、スタートアップからの提案内容を見るだけでも、企業側にはいろいろと気づきがあります。募ったテーマとは外れていても、言われてみればそれもありだということは起こるもので、それもオープンイノベーションの醍醐味ですね。

―今回、品川区のプログラムでは、何か工夫点などはありますか?

伊地知中

Crewwで支援してきたプログラムでは初めてのことになるのですが、実証実験費用の一部を品川区がサポートします。これは、大企業ほどリソースに余裕のない中小企業にとっては大きなメリットですので、ぜひチャレンジしてもらいたいです。

伊地知天: 品川区といえば、ITスタートアップの集積地である五反田バレーが存在感を示しています。今回のこのプログラムを単発で終わらせず、製造業の方たちがスタートアップと何か挑戦してみたいと思われたときに参加してみるなど、好循環を創れればよいですね。そのためにも、まず今回のプログラムで中小企業・スタートアップの双方にとって良いアウトプットを実現したいと思います。

 

※現在、品川区ものづくり企業からのプログラム参加を募集中です(6月10日(金)申し込み締切)。

詳しくは、下記ホームページをご覧ください。

https://www.mics.city.shinagawa.tokyo.jp/shinagawabrand/2285.html

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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