インタビュー/対談/特集記事

インタビュー 2022.6.1

株式会社三菱UFJ銀行から五反田バレーへの寄付で、スタートアップの活動をサポート! 取り組みの中身について聞いてみた

五反田駅から程近い、桜田通り沿いにある三菱UFJ銀行五反田支店が、2022年3月に一般社団法人五反田バレーに対して、50万円の寄付を行いました。その際には品川区が間を取り持ち、スタートアップやベンチャー企業にとって、真に役に立つ使われ方を調整することで、三方よしの好例となったとのこと。そこで、今回の寄付活動の背景や、関係者それぞれのメリットなどについて、五反田支店の支店長である竹髙靖さん、同 取引先第二課長の宮本壮一郎さん、同 取引先第二課の守安奈々恵さん、一般社団法人五反田バレー 代表理事の中村岳人さん、そして品川産業支援交流施設SHIPを運営する一般財団法人品川ビジネスクラブ 事務局次長の長江敏治さん(品川区より出向)に聞きました。

 

地域への貢献手段として、五反田バレーへの寄付を提案

―まず、三菱UFJ銀行における寄付の取り組みについて教えてください。

竹髙

もともと当行では支店ごとに、地域に根ざした存在でありたいと考えてきました。実際に清掃活動などを通じて地域貢献を行ってきたのですが、より積極的に寄付活動も行っていこうと、全行的取り組みとしてファンドを作って推進しています。そうした原資をもとに、各支店で地域のニーズを考え寄付先を起案できるのですが、2021年にはコロナ禍をふまえ、医療機関に医療用手袋やアルコール消毒液を寄付させていただきました。

宮本

そして2022年はどうするかを考えたときに、入行1年目の守安さんから「五反田といえば、五反田バレーではないか」という案が出たのです。所属する取引先第二課ではスタートアップ企業支援も担当しており、かねてから何か五反田のスタートアップの皆さんと接点が持てればと考えていたため、寄付は良い機会になると思いました。

守安

私としては、五反田支店に配属された以上、この地域に貢献したいという純粋な気持ちでした。ですので、課長ともう一人の先輩と3人で、まずは行内で話を詰めました。具体的な支援内容については、五反田バレーの中村さんやSHIPの長江さんとお話しするなかで少しずつ決められましたので、形にできて今はうれしく感じています。

―これまで五反田バレーとして三菱UFJ銀行と、接点はなかったのですか?

中村

私自身は、以前に勤務していたスタートアップが三菱UFJ銀行から資金調達をしていたので、メガバンクながらスタートアップ支援も注力されている印象はありました。しかし、五反田バレーとして何か一緒に取り組ませてもらえるような機会はなかったのです。

ですから今回、品川区経由で寄付の話をいただいたときには有難く、今後良い関係ができるきっかけにしたいと思いました。

竹髙

当行として、スタートアップの個別のお客様との取引はあっても、組織としての五反田バレーとのお付き合いはありませんでした。ですが、五反田がスタートアップの集積地として注目されるなか、地元の支店としてもっと身近に感じてもらいたいと思っていたので、今回の寄付は本当に良いきっかけになると期待しています。

近そうで遠い?!スタートアップにとっての金融機関

―起業家にとって、金融機関との付き合い方は大きな関心事でしょう。中村さんは、ご自身が起業準備されたときも、金融機関は悩みどころでしたね。

中村

そのとおりで、法人として付き合う金融機関を自分で選んだ経験って、起業するまではないわけです。すると結局、前職で投資を受けていて一緒に仕事した経験があるとか、先輩経営者に聞いて良いといわれた金融機関を鵜呑みにするしかありません。相対的に比較したわけではなく、最初に触れた情報を信じるようなところがあるので、「何かしら接点があった金融機関」があれば、近しく感じられると思います。

宮本

確かに銀行員として見ていて、金融機関についても五反田バレーのなかで口コミ的に会話や情報共有がされているように感じていました。そこで話題にしてもらうには、どうすればよいのだろうと悩みましたね。どこかでスタートアップの方とお話ができても、大抵はすでに他の金融機関の口座をお持ちであるもの。もっと早い段階からお付き合いができないかというのは、課題でした。

リモート下で、たまのオフラインニーズに応える会議室利用をサポート

―今回、寄付いただいた50万円の使い道は、どのようにして決まったのですか。

長江

もともと三菱UFJ銀行から品川区に話があり、今回は五反田バレーに何か役立ててもらいたいということでしたので、中村さんにつなぎ、欲しいものを考えていただきました。最終的に、SHIPの会議室を使ったときの費用を寄付金から出すことに決まり、4月から運用が始まりました。五反田バレー会員企業の専用アカウントを設けて管理しています。SHIPの会議室は、利用人数目安が24人・12人・6人の3種類あって、区民利用料金でそれぞれ1時間3150円・1780円・1290円。ですから6人用サイズの部屋なら、計420時間分になりますね。

中村

小さい会社なら、全社会議もできるサイズですね。会員企業が今、100社を超えたくらいですので、ちょうど皆さんに使ってもらいやすいスキームになりました。

そもそもコロナ禍を経て、スタートアップの多くがリモートワーク中心となり、オフィスを縮小したりしています。すると、たまに出社したときに執務スペースや打ち合わせ場所が足りないというので、会議室のニーズが増えているのです。その点、SHIPなら大崎駅から徒歩5分と便利で、区の施設なのでリーズナブルです。また、ウェビナーを開催する場所としても使いやすいですし、成長企業だとオフィスの拡大が間に合わないケースもあり、スタートアップならではの悩みに結果的にうまくリーチできたと思います。

―ちなみに使い道として、他にはどのような案があったのですか。

中村

ITスタートアップに最もニーズがあるのはサーバ代でしたが、運用面で難しく断念しました。そのほか、モバイルバッテリーやPC機器関連も考えましたが、それよりは、五反田に近接した大崎で、必要に応じてスペースを使えるというのが、五反田バレーらしくて良いと落ち着きました。

竹髙

あとは、イベント協賛も検討しました。五反田バレーではフットサル大会や運動会があると聞き、ボールやトロフィーの寄贈を考えたのですが、コロナ禍でそうした活動自体が減っているということで諦めました。

今回の取り組みを通じて、スタートアップと金融機関の距離が近づくきっかけに

―改めて、今回の寄付活動がそれぞれの皆様にとって、どのように良いものであったかをお聞かせください。

竹髙

結果的に会議室の提供という、銀行員のわれわれだけでは到底思いつかないようなニーズを見つけられましたので、実際に意見を伺うのが一番だと改めて感じました。サーバもですが典型的な固定費で、大きな額ではありませんが、お役に立てそうで何よりです。時代に応じた、新しいニーズですね。当行の寄付事例でも、従来は地域のお子さんや子育て世代、高齢者のためになるようなボランティア的な支援が多いですが、今回のような産業支援はめずらしく、良い前例を作れたと思っています。

また、内容について相談するなかでも、スタートアップの方々がどのような考えや活動をされているのかに触れることができました。より理解を深め、ビジネス面でもお手伝いができるようになっていきたいですね。何か金融機関に相談したいというときに、当行を思い浮かべてもらえれば幸いです。

中村

スタートアップをあまり閉鎖的にはしたくないという思いを、私自身もってきましたので、今回のように地域貢献という文脈で声をかけていただき、一緒に何かを考えるという貴重な経験ができて良かったです。外部とのコラボレーションにも積極的な五反田バレーと思っていただきたいですね。

長江

SHIPとしては、これを機に五反田バレーの会員企業にも認知を高め、より活用してもらえればと思っています。明るく快適なスペースがリーズナブルに使えますので、会議室の活用事例なども積極的に広報していきたいですね。

―それでは最後に、三菱UFJ銀行の皆さんからスタートアップや五反田バレーへの期待の言葉をお願いいたします。

竹髙

土地の担保のようなものがなくても、将来の日本社会に貢献される、その手前で資金が必要というときに提供して、目指す事業や社会貢献を支援させてもらえるのがまさに銀行業務の醍醐味です。私は入行して25年ですが、銀行員となったのは、日本社会のためになりたいと思ってのことでした。今それを直接的に実現できる一つが、スタートアップ支援と思っています。

宮本

スタートアップは、社会課題の解決を目指されているイメージがあり、そこに対してわれわれが支援できることで、間接的にその社会課題の解決に関われていると感じます。五反田バレーの会員企業は100社を超え、今後の五反田の発展を考えてもさらに増えていくでしょう。五反田支店として引き続き、地域でその支援をしっかりとさせてもらいます。

守安

今回の活動を通して、スタートアップや五反田バレーというものを以前より深く知ることができました。皆さんがますます成長されることで、私自身が将来、「この企業を昔お手伝いさせていただいた」と自慢できるだろうと、楽しみにしています。

―では最後に、SHIPと五反田バレーのお二人からも一言お願いします。

長江

五反田バレーと引き続き連携していくことで、良い循環がさらに生まれ、スタートアップのエコシステムの形成につながればと期待しております。また、その際に間をつなぐお手伝いや媒介となることをSHIPとして積極的に行っていきたいですね。

中村

多くのスタートアップはリソースも限られ、ギリギリの状態です。そこで今回のように会議室が無償で使えるなど、企業や組織として選択肢が増えていくのは有難いこと。成長フェーズにある自分たちにとって、成長しやすい環境を与えていただけたと感謝しています。

また、金融機関とスタートアップの関係性をもっと近しくしたいです。スピード感を優先すると事業を投資で運用しがちですが、先輩起業家に聞くと、投資と融資をうまく使い分けていたりするんですね。ですから、たとえば事業がより安定して、より有利に投資を引き出せるようになるまでは融資でつないだほうがよいなど、資金に関する選択肢は多いほうが良いでしょう。その意味で、金融機関との距離が近づき、起業家が多様な選択肢を持てるようになれば、双方にとってプラス。ぜひ今回の寄付を、今後さらに関係構築していくきっかけにできればと思います。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

TOP