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インタビュー/対談/特集記事

インタビュー 2022.9.26

【ベンチャーキャピタル特集】事業開発に長けたキャピタリスト陣がシード期に特化して支援するANOBAKAに、起業家に求めるポイントを聞いてみた

 

モバイルオンラインゲーム会社KLabが2015年に設立したCVCをMBO(経営陣による買収)するというユニークなスタイルで、2020年12月にスタートしたANOBAKA(アノバカ)。その投資活動の特徴や起業家に求めるマインドセット、注力しているサポート内容などについて、パートナーの萩谷聡さんに聞きました。

 

 

(プロフィール)

萩谷 聡さん 株式会社ANOBAKA パートナー

2013年3月東北大学大学院理学研究科修了。在学中は自身でWebサービスを立ち上げ、運営。2013年KLab株式会社に入社後はゲーム事業部にてモバイルゲームの運用、新規ネイティブゲームの立ち上げに企画として従事。2015年4月よりKLab Ventures株式会社に参画し、複数の投資先ベンチャーの支援を実施。2015年10月に株式会社KVPに参画し、40社以上の投資実行、支援を実施。2020年12月よりANOBAKAのパートナーに就任。

 

シード投資に特化して、日本の起業環境を活性化

 

―ANOBAKAの特徴を教えてください。

 

荻谷

シード期に特化したVCです。創業期やプロダクトが出はじめたあたりのスタートアップに出資を行っており、出資時点でプロダクトがなかったケースは約50%。アイデア段階からプロダクトのローンチ、プロダクトマーケットフィット(PMF)などにおいて支援しています。これまでの出資先は120社を超えています。

また、一般的にVCは金融出身者が多いですが、当社には事業開発や起業経験のあるメンバーが多く、一緒にイノベーションを起こしていくような支援が得意です。投資担当者としても、0→1フェーズで今までにないものが生み出され、世の中に広がっていくのを伴走していくところに面白みを感じています。

―シード期の出資に注力する理由は何でしょうか。

荻谷

日本でもようやくスタートアップへの投資が増えてきて、2020年には米国でのスタートアップへの投資件数が日本の9倍というところまで来たのですが、実はシード期においては23倍もの開きがまだある。

つまり、日本で増えているのはもっと後のフェーズでの投資であって、シード期に関してはまだまだ伸びが足りていないのです。ここを支援することで、日本における起業件数自体をもっと増やしたいですね。

また、2度目、3度目の起業についても、過去の失敗の分析をしてもらったうえで、積極的に支援しています。

―投資先として注力している領域はありますか。

荻谷

IT全般と幅広く捉えていますが、トレンドの変化が速い領域なので、いま流行っているものに投資するのでは遅いですね。5年後などを見据えて早めに仕込むようなイメージで、起業家からの情報や海外の状況を参考に、日々ソーシングやデューデリを行っています。結果として6割がB向け、4割がC向けサービスとなっています。

―いま特に注目している領域を教えてください。

荻谷

産業DXに関するものですね。まだまだ隙間や改善すべきポイントが多く、保険や物流など、大きな市場にも課題があるものです。当社としてノウハウも蓄積しており、引き続き注目しています。また、Web3.0やメタバースは急速に加熱していますが、この1年〜2年くらいで、本当に価値あるものが残ってくると見ています。

そこで流行りモノではなく、真に顧客ニーズに応えられるようなサービスやそのタネを見極めていきたいです。そのほか、バイオやロボティクスなど、ハードテック系のスタートアップも大学発などで増えているので、そうした領域への支援にも関心を持っています。

コロナ禍で人生を見直し、大企業を辞めて起業する人が増えている

 

―コロナ禍で投資環境に変化はありましたか。

荻谷

当社が出資しているIT系の投資先の大多数は順調で、取引のデジタル化やリモート環境整備などのツールへのニーズが高まり、問合せ数も伸びました。

たとえば、飲食~食品卸業者間の受発注システムを提供する「タノム」では従来のFAX・電話からの移行ニーズが急速に高まり、業界全体でデジタル化が進みました。

また、投資先にはサブスクリプションコマースも多いのですが、季節の花を定期的に届ける「ブルーミー」(会社名はユーザーライク株式会社)が好調だったのをはじめ、外出抑制でイエナカ需要など、消費の習慣が大きく変わったことで、新たなビジネスアイデアが生まれやすかったと思います。

―起業自体の件数が減るようなこともなかったのでしょうか。

荻谷

むしろ逆で、コロナ禍が自身の働き方や人生を見直すきっかけとなって、たとえば大手企業に勤める方が起業を考えるケースがとても増えています。もちろん2010年代からスタートアップに興味を持って飛び出す人はいましたが、ごく少数派でした。

それが最近は、その企業で着実にキャリアを積んできた方が30歳を機に、意を決して独立したりしています。同期が起業したり、スタートアップに参画したりするのを見て、刺激を受ける人も多くなっていますね。

―キャリアにおいて、起業がリスクではなくなってきているのですね。

荻谷

そうですね。政府がスタートアップ支援として、創業時の個人保証を免除する方針を打ち出しています。また、株式発行で資金調達するエクイティファイナンスについても、インターネットで情報がいくらでも得られ、理解が進んでいます。

VC自体も増えているので支援元の選択肢が多く、むしろVCとしても起業家から選ばれるために、他のVCとの違いや強みまで考えていたりしますので、より起業しやすい環境になっているといえます。

―ANOBAKAのサポート内容の特徴を教えてください。

荻谷

シード期から次のシリーズAにつなげるプロセスを熟知しており、事業モデルや経営者それぞれに適した投資タイプについても経験値やデータベースに基づき、早期につないで次の資金調達への支援を行うことが可能です。

また、ANOBAKAでは各投資担当者が当事者意識を持って支援していくスタンスをとっています。経営者は特に創業時はメンバーも1~2名だったりして、孤独なもの。周りに相談できる相手もいません。そんなときに悩みを受け止め、サポートできる立場としてそばにいます。

―具体的なサポートの取り組みにはどのようなものがありますか。

荻谷

投資先が120社を超えましたので、その横のつながりを活性化するべく、コミュニティ活動を強化しています。Slackのチャンネル上での質問・相談も活発ですし、成功している先輩起業家を囲む勉強会を開催するなど、コミュニケーションの機会も積極的につくっています。

実際、同時期に起業していると、事業成長に合わせた組織やサーバなどインフラの整備・拡張、改善などについて、同じような悩みが出てきます。そこで互いに情報共有したり、刺激し合える場として、活用していってほしいですね。

身近な業務、業界から自身の生活実感まで、熱中できる課題がカギになる

 

―出資を決める際に、大切にしているポイントを教えてください。

荻谷

起業家には大きなビジョンを持って、世界はこういう風になっていくべきというようなことを語れることを求めています。そもそもリソースの少ないスタートアップという環境で、人を巻き込んだり資金を集めたりするには、起業家自身の欲求や視座の高さというのがポイントになるので、それを語れることが大事なのです。

また同時に、足下の現場で事業をどう進めていくのか、どういう課題に対してどういうソリューションを当てていくのかも非常に大事です。この大きな絵と具体策の両方を見極めるために、議論しながら非常に細かい点まで質問しています。

―プロダクトがない段階であっても、その大きな絵は大事ですか。

荻谷

そのとおりです。たとえば、投資先の「CB cloud」は物流版Uberのようなドライバーと荷主のマッチングサービスで、シリーズCまでで累計約80億円の資金調達を行い、社員も150人ほどになっていますが、代表は初めからドライバーの価値が正当に評価される世界観というのを目指していました。最初のピッチ資料は荒かったですが、熱意のすごさが印象的でしたね。

―産業DXという話もありましたが、その人が従事してきた業界の課題を見つける、といったことがセオリーになりますか。

荻谷

そういうケースやストーリーは分かりやすいし、実際多いですね。ただ、それ以外でも自分ごととしてインパクトがあることをちゃんと語れればよいと思います。

たとえば、「Morght」という投資先では「NELLマットレス」というD2Cの寝具ブランドを展開していますが、その経営者は睡眠を課題と考えて、日本人の睡眠環境を向上させることで日本の生産性が一気に向上させたいと思い、日本発のブランドを世界に届けていくというスケールの大きいビジョンでやってきています。このような自分の生活実感からの課題感というのも、大いにありでしょう。

―最後に、起業や資金調達を考えている人へアドバイスをお願いします。

荻谷

VCに対して、敷居を感じないでもらいたいです。起業は多くの人にとって初めてのことで、経営するにあたっては検索しても分からないことがたくさんあるはずです。ミートアップやカジュアル面談も行っていますので、ぜひ直接、いろいろと聞いてみて欲しいですね。考え込んで動かないのは、一番良くありません。荒くてよいので、スピード感持ってまずは動き始めましょう。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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