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インタビュー/対談/特集記事

インタビュー 2022.11.1

【品川区で急成長を続けるスタートアップ特集】在庫管理と発注を自動で行うスマート重量計で、モノの流れの最適化を目指す株式会社スマートショッピング 林代表に、スケールするまでの道のりと、”IoTスタートアップ” の難しさ・面白さを聞いてみた。

「モノの流れを超スマートに」というビジョンのもと、在庫管理や発注を自動化して消費の様子をデータで残せるB to Bの「スマートマットクラウド」、BtoC向けに機能を絞り込んだ「スマートマットライト」を提供する、株式会社スマートショッピング。

アマゾンジャパンで定期購入サービスの立ち上げを経て起業した、代表取締役兼共同創業者の林英俊さんに、独自性ある事業の概要や目指す姿、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた事業へのピボット、五反田で活動するメリットなどを聞きました。

 

 

(プロフィール)

林 英俊さん 株式会社スマートショッピング 代表取締役兼共同創業者

2005年京都大学大学院情報学研究科を修了後、株式会社ローランド・ベルガーに入社。電機・自動車・小売・ヘルスケア・メディア等幅広い業界に対して、成長戦略・マーケティング戦略の策定、経営体制の整備、海外進出支援などのプロジェクトを経験し、史上最速でシニアコンサルタントに昇進。IE Business SchoolへMBA留学後、プロジェクトマネージャーに。2012年より、アマゾンジャパン株式会社に入社。プロダクトマネージャーとして、会員サービス(Amazonファミリー)と定期購入サービス(定期おトク便)の立ち上げ・マーケティング、プライシング戦略の策定、新規事業企画を担当し、日本のeコマース市場を開拓。最年少のシニアマネージャー。2014年11月、株式会社スマートショッピングを設立。

飲食店やクリニック、組立工場で在庫管理・発注を自動化

 

―まず、事業概要を教えてください。

林 英俊

サプライチェーンの購買・保管・消費・保管のサイクルに着目して、「SmartMat Cloud(スマートマットクラウド)」という通信するIoT重量計で、在庫管理や発注を自動化しています。

たとえば名刺をグラム数から今ある枚数を把握して、残りが何枚、何グラムになったらソフトウェアから自動でメールやFAXで発注されるといった仕組みです。

 

「SmartMat Cloud」は重さで在庫管理するシンプルで画期的な仕組み

 

 

 

―どういうところで使われていますか。

林 英俊

飲食店やクリニックなど、原材料や道具を多数使う場所がまず多いです。

そもそも在庫管理は雑用として誰かが兼務していて、ノートにつけ、足りなくなると発注していたところからの活用です。

また、組み立て系の製造業や、メンテナンスを行う電力・通信会社の子会社や協力工事会社など、大量に部品を扱う業態も多いです。

こちらはエクセル管理でも、月次でチェックすると大事な欠品に気づいたりしていて、発注まで自動化できるニーズが大きいのです。

―複数ある部品や材料を、どう見分けて管理するのですか。

林 英俊

基本は1商品につき1マットです。

A6、A5、A4、A3サイズを取り揃えていて、クリニックだと約100台、病院だと約1000台などと使われます。最初は一部の材料で使い始めて、使い勝手が良いので増えていくケースが多いです。

また、BtoC向けに機能を絞り込んだ「SmartMat Lite(スマートマットライト)」をAmazonで販売しており、個人宅やスモールビジネスで水や洗剤、コピー用紙などの管理に使われています。

これを自宅で使って便利なので職場でも導入する、というのが1つのリードになっています。

 

「SmartMat Lite」は日用品の残量を計測しAmazonに自動再注文してくれる

 

 

 

―「SmartMat Cloud」のトライアルになるということですね。

林 英俊

そうなんです。SmartMat Liteを自身が使用するなどしたことをきっかけにSmartMat Cloudを知り、お問い合わせやご発注いただくケースがあります。

また、B to Cの製品があるとブランディングとして会社自体の認知向上や、人材採用にもメリットがあると考えています。

最近はB to BのSaaSなどでテレビCMを良く見かけますが、採用広報の意味合いが大きいのでしょう。その感覚ですね。

サプライチェーンからデマンドチェーンへの転換を推進

 

―今後の展開はどのように考えていますか。

林 英俊

サービスを開始した2018年10月から、約4年で出荷台数は3万台を超えました。

もともと1社あたり20台を想定していましたが、使うと便利で数を増やしてもらいやすく、勢いを実感しています。歯科クリニックは全国で7万件あるので、そこに100台ずつ入るだけでも大きいでしょう。

そして、このように在庫管理・発注に関してプロダクトを提供するだけでなく、将来は、モノの流れ全体にこの仕組みを適用させたいと考えています。

たとえば工場では、部品の出入りを1ヶ所で管理するだけでなく、カンバン方式で管理される、仕掛品も含めた各工程間での連絡と生産の最適化ができるということです。

トヨタのジャスト・イン・タイムは、必要なときに必要なだけ作るための生産管理方法ですが、部品はもとより、従来は最適化の対象とはされていなかった副資材や材料も含むあらゆる実在庫を対象に、カンバン方式を適用し、最適化するという発想で、新たなプロダクトに取り組んでいるところです。

―世界観がグッと広がりますね。

林 英俊

そうなんです。
さらに世の中全体を見ると、現在行われているサプライチェーンマネジメントは、供給側がもつ情報を管理することで、部品や原材料の仕入れから商品を届けるまでのプロセスを最適化する、上流から予測するものです。

一方で、消費者などの需要側から得られる情報を起点として、需要予測から生産管理、在庫管理を最適化するデマンドチェーンマネジメントという考え方があります。

つまり、消費者・ユーザーという需要側の在庫が分かると、そこから逆算して生産の計画が立てられるわけです。

世の中のモノの流れを様々な実在庫の動きをベースとして予測し、世の中のモノの流れを最適化することを目指しています。

購買履歴からの予測に勝る「測って買い時を知らせる」というシンプルさ

 

―起業に至った経緯を教えてください。

林 英俊

最初は、社名にショッピングとあるように、買い物の未来を創りたいと思って起業したのです。

もともとアマゾンで、世の中で消費・保管・購入のサイクルを繰り返すものに対して、定期購入というサービスのプロダクトオーナーを務めていました。

ですが、割引があるから使われるものの、設定した購入タイミングがうまくマッチしなかったりと不便も多く、次に代わるものを自分の会社でやりたいと思ったのです。

―通信する重量計、というアイデアはすでにあったのですか。

林 英俊

いいえ。最初は買い物を便利にしようと、B to Cで欲しい商品を、安く買え、代わりに買ってくれるサービスを考えました。

しかし、購買代行についてソフトウェアの購買履歴から予測させようとしたところ、難しい。

たとえばシャンプーを毎月月初に買っていた人も、どこかの店舗で見かけた特売で買うと履歴が残らないし、ほかのシャンプーをちょっと使われただけでも予測が外れてしまいます。

それで次に考えたのが、在庫の状況を把握することでした。

カメラやRFIDも検討しましたが、社内で議論した結果、重量計で測るのがシンプルで対応しやすいとなったのです。

―ソフトウェアからハードウェアへの転換、ですね。

林 英俊

試作してテストマーケティングで、B to Bでの評判が良かったのです。

明日から使いたいという飲食店もあり、たしかに発注作業が毎日あって苦労している。

そうして気づいたら、在庫管理の課題に取り組んでいました。購買頻度も個人とは段違いなので、B to CでなくB to Bでハードウェアを絡めようと決めました。

―スタートアップがハードウェアを扱う苦労は何でしょうか。

林 英俊

海外の工場から輸入して、倉庫で検品して・・・と、一気にオペレーションが増えます。シンプルな製品なので、コスト増は大きくはないですが、品質など生産管理に気が抜けず、私自身で見ていたりします。

また、五反田バレーの先輩スタートアップであるSafieの方をはじめ、様々な五反田バレーにあるスタートアップ企業と情報交換し、経験を教えてもらったりしていますね。

ソフトウェアとの違いとしては、異なるサイズの反響を見たくても、生産するのに1万個などのロットがあるため、100個だけ作って試すようなことができません。ソフトウェアのようにアジャイルには動けず、覚悟を決めて勝負する必要があります。

トライアルのオペレーションの煩雑さとともに、ハードウェアならではの難しさがありますが、手間がかかる分、参入障壁となり、競争優位性につながるメリットもあります。

―サービスが普及すると確信を持てたのは、いつ頃ですか。

林 英俊

試作してテストマーケティング中に、飲食店からかなり引き合いをもらえたときですね。

同時期に補助金を申請したところ、審査員のSHIFT丹下社長に面白いと言われたのも自信になりました。

また、B to Bの在庫管理では当時、RFIDが圧倒的に注目されていましたが、私は個人の買い物が起点だったので、そうした業界常識にとらわれませんでした。

実際に営業してみると、RFIDは10円の単価が2円になれば普及が進むといわれますが、実はコストよりオペレーションの点で、そもそも誰が部品や商品にRFIDタグを貼るのかが普及を阻んでいたのです。

このように、営業先や展示会で声を聞くことは大事です。当社ではプロトタイプで1年ほど出展しましたが、小さなブースでも人が集まるようなら、筋がいいといえるでしょう。

プロトタイプは、最初は画面がダミーで構いません。コンセプトや考え方を分かってもらうことが大事で、動かなくても説明できます。そうして得られたフィードバックが宝物になるので、何か見せられるものを早々に作るべきですね。

リモート下でもコミュニケーションを数値でみて、活性化を目指す

 

―オフィスの変遷と、五反田で活動するメリットを教えてください。

林 英俊

目黒のマンションの1室で起業し、恵比寿の知人所有のオフィスを借り、10人20人になって手狭になって、今の五反田のオフィスを見つけました。

広くしようとすると家賃が気になりましたが、山手線沿線の南側はエンジニアやデザイナーを集めやすいんです。生活圏やコミュニティがこの辺りで、武蔵小山や戸越銀座から通う社員も増えたので、五反田で落ち着きました。

五反田バレーでは、会合で経営者と会うほか、ファイナンスやマーケティングの方たちと実務面で交流ができ、ご飯に誘い合ったりしています。他の場所で会うスタートアップの方にも、五反田同士だと分かると親しみがわいて誘いやすく、つながることが多いですね。

―経営者として、大事にしていることを教えてください。

林 英俊

最初はスタートアップらしく、尖ったMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を考えてしまったのですが、1周回って、朝礼や掃除など、世の経営者が大事にしてきたことの真価が分かった気がしています。

そもそもスタートアップに集まる人たちは、カスタマーに対する姿勢やイノベーションの重要性は分かっていたりするもの。

ですが、バックグラウンドが多様なだけに、もっと根っこのところを伝える必要があるのです。

それで、率先垂範や利他の気持ちを推し進める意味で「ありがとう」と「ごめんなさい」という原点が大事だと思うようになりました。

そのため、役員からその姿勢を示すとともに、Slack上でコミュニケーションを活性化したいと思っています。

人力でがんばるだけでなく、ボットで受注報告やリードの状況などを共有し、各人が興味を持って関われるような環境を醸成したいですね。

1人あたりの投稿数を増やし、社内で「ありがとう」「ごめんなさい」が飛び交うようなカルチャーを目指しています。

―最後に、起業や資金調達を考えている人へアドバイスをお願いします。

林 英俊

起業のテーマは、ビジネスになりそうかなどよりも、本当に自分の好きなことを選ぶべきですね。

ピボットなど、紆余曲折があってもくじけず続けられているのは、買い物という好きなことを起点にしたのと、アマゾンで実感した、人々の日常を変える面白さを自分でも成し遂げたいと思ったからです。

もう1つは反省点から、組織が膨らむビジネスはやはり大変なので、少数精鋭でアウトソースを活用する起業のし方も勧めたいと思います。

最近はマーケティングや広報などを、クラウドソーシングで専門家にリーズナブルに頼めます。MVVで人を集めて浸透させて・・・というステップはエネルギーを要するので、割り切るのもよいかもしれません。

また、ハードウェアスタートアップだと、資金には常にハラハラさせられるので、自治体の補助金などをうまく活用してください。

また、スタートアップだとエクイティによる資金調達を考えがちですが、融資による借り入れもけっこうできるものなので、諦めずにトライしてほしいです。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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