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インタビュー/対談/特集記事

インタビュー 2022.12.16

【東洋経済『すごいベンチャー100(2022)』選出!】 ESG情報開示の支援ツール「SmartESG」を提供するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社 杉本代表に、事業創出と軌道に乗るまでの道のりについて聞いてみた

「ESG・サステナビリティ経営をテクノロジーの力で加速する」をミッションとして、ESG・非財務情報開示に取り組む企業向けに情報収集・開示プロセスを効率化・可視化するプラットフォーム「SmartESG」を提供する、シェルパ・アンド・カンパニー株式会社。2019年9月の創業から、ピボットを経て現在の事業に至り、2022年5月には総額6,000万円のシードラウンドでの資金調達を実施。東洋経済の「すごいベンチャー100 2022年版」にも選出され、成長を加速させています。代表取締役CEOの杉本淳さんに、起業やピボットの経緯、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」一期生としての感想などを聞きました。

 

(プロフィール)

杉本 淳さん シェルパ・アンド・カンパニー株式会社

慶応義塾大学卒業後、証券会社の投資銀行部門で国内外の大型M&A・資金調達案件や、IR・コーポレートガバナンス周りでのアドバイザリー業務に従事。2019年9月にシェルパ・アンド・カンパニーを創業。

世界の潮流である、上場企業のESG情報開示を支援するSaaSを開発

 

―まず、事業概要を教えてください。

杉本 淳

2つ事業があり、「ESG Journal Japan」という、ESGやサステナビリティに特化したメディア運営と、「Smart ESG」という大企業のESGの情報開示を支援するSaaSプロダクトの開発・提供を行っています。

ESGとは、Environment(環境)Social(社会)Governance(ガバナンス)を組み合わせた言葉で、企業の持続的成長における重要な要素です。

近年、世界的にこれらの非財務情報が企業投資の判断基準として重みを増しており、日本企業においても国際競争力の確保や市場活性化を目的としてESGの情報開示に向けた動きが活発化しています。

そのため当社ではESGに特化したメディアをまず始めて、市場ニーズを捉えたうえでプロダクトに取り掛かりました。

―「SmartESG」では何ができるのでしょうか。

杉本 淳

ESGの情報開示においては、自社内の膨大なデータや状況を整理する必要があり、担当部署にとって大きな負担となっています。

そこで、ESG情報をクラウド上に一元化し、部署間の情報共有・ワークフローの最適化やスコアの分析・改善を可能にしました。

また、業界やベンチマークする企業の公開されているESGデータをAIが収集し、分析することで自社のESG施策に役立てることができます。

2022年5月にβ版のプレスリリースを配信したところ、4ヵ月足らずで30件以上の問合せがあり、すでに正式版もローンチ。大手企業に続々と導入が決まっています。

―実は御社は、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」の一期生で、2020年9月から翌年3月まで参加されていましたが、当時は事業テーマが別でした。どのようにして今に至ったのですか。

杉本 淳

もともと30歳になったら起業しようと決めていて、エンジニアの共同創業者と一緒に会社を立ち上げました。

当初は受託開発を行いながら様々な事業を検証しており、プログラム参加中は、コロナ禍で苦しむ飲食店向けのSaaSを模索していましたが、最終プレゼンの場でも企業様の反応が今ひとつで、早々に見切りをつけました。

そこからゼロベースで事業を考える中で、私自身の金融業界のバックグラウンドを生かして得意な領域で勝負しようと決めたのです。

 

 

 

 

ESGに関するニーズを探るため、メディアづくりからスタート

―杉本さんはもともと、証券会社の投資銀行部門にお勤めでしたね。

杉本 淳

財務を中心に、M&Aや資金調達のアドバイザリー業務に従事して、クライアントの企業価値向上に努めていました。

そこで体感していたESG投資の潮流をふと思い出し、今後の企業経営において何か大きなニーズがあるはずだと感じたのです。

それでまず、ニーズを検証するために、グローバルのESGのトレンドなどを集約して世の中に発信するメディアを作りました。それが「ESG Journal Japan」です。

これ自体はマネタイズを意識せず、あくまでニーズを探り、プロダクトへのリード獲得につながればという想定です。

―そこでESG情報開示についてのニーズに手応えが感じられたわけですね。

杉本 淳

そうですね。

読者として、企業のESG推進担当者や投資家、コンサルタントに注目いただき、半年くらいで接点ができるなかで現場の課題を知り、ビジネスのヒントを得ていきました。

そして当時、当社メンバーの半数以上がエンジニアで、すでに受託を含め、多様な開発実績があったので、その開発力を生かしてSaaSプロダクトに着手したのです。

―そもそも無名のスタートアップが発信するメディアでも、注目してもらえたのはなぜでしょうか。

杉本 淳

ESG・サステナビリティに関する有料の専門メディアはあったのですが、その敷居を低くして、無料のオウンドメディアで発信しようと考えました。

ちょうど2021年6月に、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)が改訂され、2022年4月には東証の市場再編があり、気候変動や人的資本に関する開示への対応が企業に求められるタイミングと重なったこともあり、グローバルを中心とする先進的なESG・サステナビリティ情報を定期的に提供し続けたことで信頼を得られたと感じています。

―結果的に、事業創出に向けて必要なステップだったと、いま思いますか。

杉本 淳

そうですね。2回のピボットを経て、その後もメディアを作るなど、遠回りをして良かったと感じています。

以前のアイデアでうまく事業化ができなかった失敗経験は生きていますし、次を模索・検証するなかでESG・サステナビリティという、本気で取り組みたいテーマにタイミングよく出会うことができました。

また、検証と並行して私自身もESGについて体系的に整理するため、EFFAS Certified ESG Analyst®(CESGA)という欧州の資格も取得しました。

そうしたなかで、世の中におけるESG・サステナビリティの重要性も身に染みて感じ、このテーマを通じて世の中を良くしていきたいと強く考えるようになりました。

―先日、東洋経済の「すごいベンチャー100 2022年版」に選出されましたが、いかがですか。

杉本 淳

「すごいベンチャー100」は、くらし、物流、人材、DXなど、カテゴリーごとに未来のユニコーン候補を編集部が選ぶのですが、今年初めて「ESG」というカテゴリーが作られています。

それは、このESG市場が盛り上がっていることの証左であり、四季報の東洋経済新報社によるランキングだというところに重みを感じています。

パーパスへの共感で、エンジニアや営業、COOの仲間が集まる

 

―創業以来ずっと品川区におられます。どのような経緯からですか。

杉本 淳

最初は起業している知人が使っていた五反田駅近くの小さなオフィスの、一部を間借りしました。その後、2020年の頭に、人数が増えることもあって広さを求め、家賃が手頃で、皆が通いやすい南大井に移って今に至ります。

品川区が主催する「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に参加された理由を教えてください。

杉本 淳

いろいろと事業を考えていたときに、パッと目に入って面白そうだと思いました。当時は、自治体によるアクセラレーションプログラムも珍しかったですよね。

―参加して良かったこと、役立った特典はありますか。

杉本 淳

大きかったのはAWS Activateのクレジットで、つい最近まで実質無料でAWSを使い続けることができました。

ピボットしても引き続き開発環境を維持しながら、次を模索できたのでとても感謝しています。大崎にあるSHIP(品川産業支援交流施設)も、アクセスが良かったのでよく利用させてもらいました。

メンタリングやコワーキングスペースも活用しました。

また、そのときは17社がプログラムに参加していて、いろいろな事業を考えている人がいるのだなと刺激になりました。

もっとも私自身のアイデアはうまくいきませんでしたが、プログラムを通して様々な検証ができたので、非常に貴重な時間でした。

―いま組織体制は、どのような状況ですか。

杉本 淳

20名くらいで、約半分が正社員。2023年には30~40名体制にしたいですね。

ESGの事業ニーズが非常に高いので、早い段階からの組織固めを意識しており、来年2023年が勝負の年になると思っています。

もともとエンジニアが充実していたので、プロダクトのローンチのスケジュールなども予定が立てやすく、それに合わせて営業やカスタマーサクセスも強化しています。

―スタートアップにとって、まずエンジニア採用は難しいものですが、どのようにしてチームを作ったのですか。

杉本 淳

共同創業者がエンジニアで、そのリファラルや地道な声がけによるものですね。

また、当初から多様性がありサステナブルな組織を作りたいと意識していたので、外国人のエンジニアや女性も半数近く在籍するなど、ダイバーシティが進んでいます。

またシェルパ・アンド・カンパニーという社名も事業が決まる前からのものです。ヒマラヤ登山をサポートする民族の名を冠することで、人々をサポートする、高みを目指すような企業を創りたいという想いを込めています。

そうした使命感、パーパスに共感してくれる人が自然と集まってくれています。

今後も多様な働き方ができるよう、どの地域でも副業でも、子育てしながらでも参画できる環境を大事にしたいですね。

―最後に、起業や資金調達を考えている人へアドバイスをお願いします。

杉本 淳

いま起業自体のハードルは下がっていて、挑戦しやすい環境ですが、その分、本当に自分がやりたいものをしっかり探すことが大事だと思っています。

ライトに起業したとしても、そこからグロースさせ、大きなインパクトを出したいと考えたときに、そのビジネスを10年後20年後もやり切れるか。そのくらい賭けてもいいと思えるテーマなのかはしっかりと自問自答すべきで、ときには回り道も惜しまない覚悟が必要です。

そのために、起業前の貯金や創業時融資、受託開発などの収入から試算して、たとえば2つくらい事業をつぶしても2年くらいは持つだろうとか、この範囲でならピボットしても立て直せるということを計画しておくべきです。

下地を作って粘り強く取り組むことで、これだというものに出会えるでしょう。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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