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インタビュー 2023.5.2

【資金調達特集】成長産業領域の採用支援で実績多数のフォースタートアップス株式会社に、人材・資金支援における独自のサポート内容を聞いてみた。


2016年9月の創業以来、日本を代表するグローバルスタートアップ企業を生み出すために、「for Startups」をビジョンとして、成長産業領域における人材・資金支援を軸とした「ハイブリッドキャピタル」を目指しているフォースタートアップス。国内の名だたるスタートアップ・成長企業に人材紹介支援の実績を多数有し、2021年にはファンドを組成してVCとしても現在5社に投資を実施しています。その人材・資金支援の内容や目指す世界観について、取締役兼アクセラレーション本部長の清水和彦さんに聞きました。

(プロフィール)

清水 和彦さん フォースタートアップス株式会社 取締役 兼 アクセラレーション本部長

株式会社グローリアス、株式会社RSS広告社(現Unipos株式会社)を経て、株式会社セントメディア(現 株式会社ウイルオブ・ワーク)にてネットジンザイバンクの立ち上げに参画。一貫して人材ビジネスを経験し、2018年に執行役員就任後はCHROとして人事を統括。
2019年6月に取締役兼人事本部長就任、2019年7月より取締役兼アクセラレーション本部長。
2021年5月にフォースタートアップスキャピタル合同会社 ジェネラルパートナーに就任。

 

スタートアップ、ユニコーンの採用支援実績から、資金支援にも注力

―まず、フォースタートアップスの特徴を教えてください。

清水 和彦

世界で勝負できる産業や企業、サービス、人を創出し、日本の成⻑を支えるために、起業支援と採用支援を中核とした成長産業支援事業を推進しています。
なかでもスタートアップのCxOやマネジャー層をはじめとする採用支援を長く行ってきて、ユニコーン企業に関わってきました。

そうした採用支援先から、投資のラウンドで参画を求められることがあったため、2021年にフォースタートアップスキャピタル社を作り、三井住友銀行と一緒に第1号ファンドを組成して、資金支援も本格化させました。

また、海外のVCでは古くから資金支援だけでなくバリューアップチームを持ってスタートアップの成長に寄与していましたので、2016年に当社を創業した頃からバリューアップ支援に加えて、ファンド機能をいつかは備えたいと考えていたのもあります。

―支援を決める際、起業家のどういう点を見て決めているのですか?

清水 和彦

大前提として、当社がまず起業家から選ばれる存在でなければなりませんが、そのうえで、見据えている世界を一緒に見たいと思うか。
この起業家の成長に伴走することで社会が良くなるのをイメージできるかというのを大事にしています。

さらに当社では、その起業家や経営チームがどこまで採用や組織づくりに自分の時間を費やすか、意欲が高いかを重視しています。
それは社内外のステークホルダーを巻き込んだり、外部の応援チームを作っていける影響力にもつながります。

―人材支援はどのように行われるのですか?

清水 和彦

基本的に起業家とのディスカッションから始めます。
課題を聞いて求人像をクリアにしていったり、自覚されていない課題についても提案して、そこに応えるポジションを作って採用を目指したりもします。

そして当社では、スケールフェーズにあるスタートアップにフィットするようなタレントプールづくりを長年行っています。売り手市場のエンジニアについても、コミュニティを創っていたり専門チームが対応することで、ご紹介につなげています。

―最近は、大企業を退職して起業する人が増えていますが、転職先としてスタートアップを考える人も増えているのですか?

清水 和彦

それは隔世の感がありますね。2022年末の日経の「NEXTユニコーン調査」ではスタートアップの平均年収は650万円と、上場企業の平均を45万円、7%上回る水準。医療やソフトウェア領域で、好待遇で専門人材を狙う動きが目立つと報じられました。

当社の体感値でも、大企業で年収何千万円という人が起業して、その瞬間は収入が減っても十分取り返せますし、CxO人材も前職と同等の給与水準で受け入れられるなど、スタートアップをとりまく環境は激変しています。

シード期での出会いから、将来の大きな投資につながることも

―清水さんには先日、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」の資金調達相談会 に参加いただきました。起業家の卵たちの印象はどうでしたか?

清水 和彦

仕事柄ユニコーン級企業を多々見てきましたが、その原点を見るような思いでした。今はすごい経営者も、起業当時は可能性に溢れる卵のような状況かと思います。起業家の社会をより良く変革したいという、その火を消さないことが大事だと思います。

そうしたなかからIPOやM&Aなど、5~6年後に何らかの結果を出す人が何百人に1人いて、その人がシリアルアントレプレナーとなって次にチャレンジするときにはユニコーンを目指すかもしれません。

また、起業家やCxOではなくても、ユニコーンのマネジャー経験者が自身でスタートアップを作るときにはもっと大きな成長を目指すもの。

そうして人材が輩出され、次のスタートアップではもっと大きな絵を描き、高い発射角度を自ら求めていくので、当社のような支援側もその成長に資する支援力を高めていかねばと、改めて思います。

―まだ卵の起業家であっても、可能性や面白みを感じられるのですね。

清水 和彦

そのとおりです。いい意味で、詳しくないからこそ見れる夢もまたいいなぁと思います。

今はシードマネーも増え、法律面などのサポートもあって起業環境が恵まれているので、多くの人にチャレンジしてほしいです。

また、このところ状況によってはちゃんとクローズすることに協力することも社会全体としては大事になってくるのでは、という話が増えたように感じます。日本では、一度起業したらずっと続けるべきとなりがちですが、しっかりとやり切った上でそういった結論になることもありますし、そのうえで次のチャレンジをすればいい。

また起業もできるし、転職市場でも海外では起業経験者は人気があります。そういうキャリアパスが見えてくれば、もっといろいろ活躍や挑戦ができる社会になるでしょう。

創業支援プログラムなどで出会う起業家についても、この1年にとどまらず、5年後、10年後にどこかで活躍しているときなど、未来の投資対象となるかもしれません。
ですから、シード期を対象としたイベントにも積極的に行くようにしています。

―起業経験自体がキャリアの宝になるということですが、そのときに何か気をつけるべきことはありますか?

清水 和彦

一つは不義理なことはしない、ということなのかと思います。起業すれば、多くの方に協力いただいたり、社員を雇用するので、相応の責任が生じます。そこで不誠実な対応をするというのは、よくない印象が残りますし、次の挑戦で投資を受けづらくなったり、仲間も集まりづらくなる気がします。

ですが、誠心誠意やった末に、どこかのタイミングできちんとクローズするのはありですし、そういう方には次のチャンスがあります。そういった姿を見て、次も投資するケースを何度も見ていますし、一生懸命やるのが大事だということです。

スタートアップと大企業、自治体をつなぐサポートも強化

―御社の資金支援における投資判断のポイントは何でしょうか?

清水 和彦

今のところは、採用支援先の資金調達で当社に声がかかるケースが多いのですが、それはシード期から支援をして関係ができているからです。

そうした投資先で、今後イグジットの実績ができてくれば、シードからの資金支援も拡大できるでしょう。

また、採用以外のバリューアップ支援のメニューも増えています。大企業とのアライアンスやオープンイノベーション、地域での実証実験などの求めに対して、当社のネットワークでつなぐ。そうした支援展開も強化する準備をしています。

―御社としてシード/プレシード期の支援メニューというのはありますか?

清水 和彦

これは、起業を意識していない人に起業を進めるケースなのですが、人材支援を行うなかで出会う優秀人材には、その人自身が起業すべきだと思える人がいたりする。

そういう人に起業支援をし、会社設立からやがて採用支援、資金調達支援も行っていくというメニューを2年前から行っています。当社がアライアンスを組んでいるVCに紹介して会社を設立したのが既に8社。うち3~4社は、東洋経済の「すごいベンチャー100」にも選出されています。

また、大学の研究室に起業家人材を紹介もしています。研究者が有望な特許を持っていても、自身はCEOタイプではないこともありますので、CEO候補を紹介して共同創業してもらうのです。

―本人に起業する意識がなくても向いているというのは、どういう人ですか?

清水 和彦

柔軟な人ですね。課題を認識したうえで、状況によってアプローチを変えられるような人が向いていると思います。

また、経営コンサルタントや経営企画職などで、経営全般を見ている人は、意思決定やピボットもうまくできることが多いというのが個人の見解です。

そういう人に、どうしても解決したい領域が見つかると、一気に飛躍したりする気がします。

―面白いですね。起業というと、社会課題や原体験からやりたいことがあって挑戦するイメージがありますが、必ずしもそこから始まらなくてもよいのですね。

清水 和彦

やりたいことは必要ですが、それが特にないと言っている人でも、掘り下げていくと何かしら出てくるものです。それは長年、起業支援を行なってきて実感しますね。

また、スタートアップの前向きな雰囲気というのもすごく良くて、自分のビジネスが世の中に喜ばれ、社会や人の暮らしが変わっていくのを見て、あるいは仲間が増え、社内外のパートナーや地域、自治体などと交流していくうちに、これこそ生きがいだと、改めてスイッチが入ったりするのです。だから、多くの人に起業やスタートアップで働くことをやってみてほしいですね。

世界で勝てるポテンシャルのあるSaaS系や大学発スタートアップに注目

―投資先として、注目されている領域はありますか?

清水 和彦

1つはバーティカルSaaSから進化する会社です。特定の業種・業界から展開を広げ、プラットフォーマーとなって、世の中をDXさせていくような形で大きくなり、ユニコーンになって世界に打って出られる可能性が大いにあります。労働生産性向上の点からも要注目ですね。

もう1つは、技術の強い大学発スタートアップで、これも世界を狙うポテンシャルを感じます。
つい先日も大学発のバイオベンチャー、オリシロジェノミクス社が米国のモデルナに8500万ドルでM&Aされました。エコシステムを成熟させていくなかで、当社としても注視したいですね。

―御社では「STARTUP DB(スタートアップデータベース)」を運営されていますが、これはどのようなものですか?

清水 和彦

日々生まれ、変化するスタートアップの状況を可視化して、国内スタートアップのエコシステムを活性化する目的で作った企業データベースで、現在、約1万7000社を掲載しています。

これにより、アライアンス先やM&A先を探す大手企業への情報提供を行ったり、ジェトロなどが海外に日本のスタートアップ情報を発信する支援を行ったりしています。
基本的には、スタートアップの情報を正しく世の中に伝え、理解促進に貢献したいというもの。将来的にはそこでのマッチングも増やしていきたいですね。

―最後に、起業を考えている人へアドバイスをお願いします。

清水 和彦

私自身、やりたいことがある人は大変素晴らしい状態にあると思っています。
そういうものが見つかっているのは、本当にかけがえのないことだと思うので、後はビジネスにしていくだけ。それに必要な考えを深めていってほしいですね。

大学でも自治体でも、起業支援の講座やアクセラレーションプログラムなどが増えているので、ぜひ活用して自分の目を磨き、仲間を増やすとよいでしょう。

やりたいことが今見つかっていなければ焦らず、見つかったときにやればいい。既に見つかっていれば、突き詰めて進め、ビジネスプランになるかどうか考えてみたらいい。エールを送りたいですね。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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