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インタビュー 2023.5.24

【参加企業募集中!(7/9〆切)】「五反田バレーアクセラレーションプログラム2023」をプロデュースする01Boosterに、プログラムの注目ポイントや新たな取り組みを聞いてみた。

「五反田バレーアクセラレーションプログラム」は、品川区がスタートアップの集積地としての「五反田バレー」の認知度アップや地域活力の向上、区内産業全体の活性化を図るために2020年度より毎年9月から翌年3月まで実施している、起業家の事業成長支援プログラムです。そのプロデュースを行う株式会社ゼロワンブースター(以下、01Booster)の桑田靖章さんと平岡仁志さんに、昨年度の振り返りや実績、2023年度プログラムの工夫点を聞きました。

特設HPはこちら:https://www.shinagawa-startup.com/2023/

(プロフィール)

桑田 靖章さん
株式会社ゼロワンブースター
テックイノベーション部 執行役員

1998年、大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程を修了後、大手OA機器メーカに入社。大手医療機器メーカを含め、研究開発から生まれた自社技術の商品化、新規事業の立ち上げに従事。自社の販売チャネルが無い市場への参入をはじめ、技術のQCDから販売まで広い視野で自社のビジネスを考える事業開発を経験(経験した製品カテゴリ:液晶ディスプレイ、半導体レーザ、体外診断薬、他)。転機を迎えている日本の製造業の活性化に係りたいという想いが強くなり、香港政府系機関に転じ、日本企業の海外進出、輸出入、ビジネスマッチングの支援に従事。2018年6月より01Boosterに参画し、大学研究技術の社会還元支援に従事。

 

平岡 仁志さん
株式会社ゼロワンブースター
事業創造ソリューション部 ディレクター

2004年、新卒で自動車内装部品会社に入社。主にトヨタ自動車に対する内装部品の営業・企画・生産準備・品質管理等に従事。2007年、日本GE Commercial Financeへ転職。中小企業を中心にリース・保険等の金融サービスのソリューション営業を担当。2009年、医療系ベンチャーの株式会社エス・エム・エスに転職。同年12月、エムスリーとの合弁会社、エムスリーキャリア株式会社の立ち上げに参画し、医師転職支援の紹介事業立ち上げ、マネジメント、人事評価の設計、アライアンス等を担当。創業5年で従業員数25人から250人超に成長し、ベンチャーの1→10→100フェーズを経験。2015年9月、医師の採用コンサルとして独立。2016年3月、01Boosterに参画。大手企業や自治体が主催する複数のアクセラレータープログラム、大手企業のイントラプレナー支援プログラム、ベンチャー出向プログラムなどに従事。グロービス経営大学院MBA。

 

参加者同士のグループメンタリングが、かけがえのない「仲間意識」を醸成

 

―まず、「五反田バレーアクセラレーションプログラム2022」の振り返りを、昨年度のプロデュースを担当した桑田さんからお願いします。

桑田 靖章

昨年度は、IT分野の製品・サービスを提供するシード・アーリーステージの事業者や個人事業主を対象として、16社が参加しました。
研修では、01Boosterのスタートアップネットワークから、事業成長や資金調達に向けて実体験をもとに実践的に指導できる講師を集めました。
また、品川区からの「このプログラム発で『起業家コミュニティ』が生まれるサイクルを創りたい」という要望を受け、参加者同士のグループメンタリングを全6回の研修で毎回、実施したのが特徴です。

―3~4人ずつ毎回グループを変えて、自己紹介からはじまり、事業の状況や課題を伝え、相談などを行っていましたね。回を重ねるごとに、参加者間の親密さが増していたのが印象的でした。

桑田 靖章

当社が多くの自治体でプログラムを運営してきて、実績のあるコミュニティ醸成策でしたが、参加者の募集段階から、そうした交流を望む起業家が集められるよう意識していたのもプラスに働いたでしょう。
また、研修後には簡単な飲食をしながらの交流会タイムも設けるようにしていました。そこで講師も含め、ざっくばらんにコミュニケーションができたことで、交流がさらに深まったように思います。


―その成果、効果はどんなところに表れたでしょうか?

桑田 靖章

同じフェーズの起業家コミュニティが本当にできていましたね。会場での交流会以外にも、有志で飲みに行く人たちもいました。
プログラムの総仕上げであるDemoDayのピッチで、多くの方が「仲間ができた」ことを成果として発表されていたことからも分かります。
交流や仲間ができる効用として、情報や悩みを分かち合えるのはもちろん、「刺激になる」というのも大きいのです。
他の参加者がどんな風に活動しているかが、毎月聞こえてくるので、それに比べて自分はどうかと考えさせられたようで、「焦りを感じた」という声もありました。

―そのほか、プログラムによる成果、効果としてどんなことが挙げられますか?

桑田 靖章

このプログラムには多くのパートナー企業がおられ、コワーキングスペースの無償利用や個別メンタリング、技術サポートといった特典がありますが、実証実験支援という、スタートアップにとって魅力的な特典も用意されています。
実際に、セガサミー様、東急様などの協力でイベント開催した事例があったり、複数の参加者で大手企業との実証実験を予定しているという話もありました。
また、実証実験に向けた調整や交渉では、事務局のサポートもあり、心強いかと思います。

―研修を通じてピッチのプレゼン力もみなさん、目に見えて向上したように思います。

桑田 靖章

そうですね。資金調達に向け、投資家やVCに伝わるプレゼンのポイントをテーマにした回があったり、Chatwork創業者の山本敏行さんによる、ピッチの直接指導もありました。そこでさらに他の参加者の様子が刺激にもなって、奮起しやすかったのではないでしょうか。
9月のKick-Offと3月のDemoDayで参加者のピッチに対してコメントをいただいたパートナー企業は、ある参加者に対して「半年でピボットし、やりたいことがより明確になり、とても伝わるピッチになった」と評価されていましたね。

IPO経験者から聞く「リアル」に触れて、EXITを目指すプログラム

―では、「五反田バレーアクセラレーションプログラム2023」について、今年度のプロデュースを担当する平岡さんから教えてください。

平岡 仁志

コミュニティや仲間づくり、実証実験などパートナー企業との協業推進といった良い部分は引き続き注力します。
そのうえで今年度は対象者を、「事業においてITを活用するシード・アーリーステージの『EXITを目指す』事業者および個人事業主」としました。
スモールビジネスではなく、スタートアップとして飛躍的な成長を目指し、上場やバイアウトなどのEXITを意識して、資金調達にも意欲的な方がよりマッチする内容です。

―そのために工夫したことはありますか?

平岡 仁志

講師陣には、起業家やCxO、VCとして投資先のIPO経験がある人をそろえ、EXITに向けたリアルを伝えてもらえるよう、研修テーマを組みました。
ノウハウなどの形式知化された情報はネットや書籍でも得られますが、EXITというのはケースごとに千差万別で、身近に例がないと考えにくいものです。
達成するまでにどういう過程をたどったのか。
どういう苦労があり、どういう人材やボードメンバーが必要だったのか。そうした具体的な話を聞くことで、IPOというゴールがイメージしやすくなり、自分ごとにできるでしょう。
実際、上場したスタートアップのCFO、CHROが登壇しますが、そのポジションであっても元から専門家ではなかったりします。
チームの中で誰もファイナンスの経験がなくても、誰かがCFOを担わなければならない。
それこそスタートアップの事業成長におけるリアルであり、当事者からの話には多くの学びがあるはず。
それらをノウハウと合わせて提供できるプログラムとなっています。

―EXITに意欲や興味がある人には、貴重な機会となりそうですね。

平岡 仁志

実際にEXITを果たした起業家自体が、日本ではまだ数少ないので、接点を持てるのは貴重です。
当日の交流だけでなく、ぜひ起業家の先輩・後輩として「縦や斜めの関係」も続けてほしいですね。
もちろん研修の際には質疑応答や、講師を含めた交流会の機会も積極的に設けていきます。


―講師陣も、後輩の役に立ちたいと思われていますか?

平岡 仁志

自分の経験を後進に伝えたいというマインドの強い方たちにお願いをしていますので、意欲があれば、何かしら後につながる関係性もできやすいでしょう。
昨年度に引き続き登壇いただくSEVENの山本さんも、自身のChatwork創業経験があったからこそ、いまエンゼル投資家と起業家の育成・支援に、GIVEの精神で注力されています。
参加者によるアンケートを、登壇された講師にも後に共有するのですが、山本さんからは「ピッチを見てその場で添削することが、後輩たちに本当に役立ててもらえていると検証できた」といわれており、今年度も登壇をすごく楽しみにされています。

―一方的な講義の場ではなく、講師も含めて起業にまつわる縦・横・斜めの関係ができるコミュニティなのですね。最後に、参加を考える読者にメッセージをお願いします。

 

桑田 靖章

良い雰囲気のコミュニティの土台はできています。
今年度が4期生なので、さらにOB/OGも含めた同窓生のつながりを強めていきたいですね。後に歴史を振り返って、「品川区のあのコミュニティっていいね」といわれるものにしたいです。
ぜひスタートアップとして成長を志向する起業家に集まっていただき、資金調達を意識したスケールイメージでプログラムを進めていきましょう。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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