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インタビュー 2023.11.1

【急成長を続ける品川区のスタートアップ特集】次世代の幸せのために、DXやWebマーケティングで産業をアップデートさせ続けるナイル株式会社 高橋代表に、スケールの秘訣や経営哲学を聞いてみた

2007年の創業当初よりインターネットを活用して顧客企業の業績向上を支援してきた、ナイル株式会社。Web・アプリ領域でのマーケティング支援から、2018年にはネット完結の車のサブスクリプションサービスをリリース。2021年には50億円の大型資金調達を実施し、産業DXカンパニーとして人々の暮らしの近くで、次の世代を幸せにするような事業・サービスの提供に努めています。代表取締役社長の高橋飛翔さんに、事業の特徴や強み、起業からスケールに至るまで、五反田で活動するメリットについて聞きました。

(プロフィール)

高橋 飛翔さん
ナイル株式会社
代表取締役社長

1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中の2007年、ナイル株式会社を設立。多様な産業のデジタル化をテーマに、インターネットを活用して顧客企業のビジネスを支援するホリゾンタルDX事業を展開する。様々な事業を支援する過程で自動車産業に変革の余地を見出し、2018年より自動車産業DX事業を開始。「幸せを、後世に。」をミッションに、巨大産業のアップデートに取り組む。

 

日本の産業をホリゾンタル/バーティカルの2面で支援

 

―まず、御社の事業について教えてください。

高橋 飛翔

ホリゾンタルDX事業と自動車産業DX事業の2本柱で、前者ではあらゆる産業を横断してDXやデジタルマーケティング領域でコンサルティング支援を行っています。後者では車の販売領域において、当社があらゆるプレイヤーとのやり取りをデジタル化して自動化・効率化を果たし、完全オンラインで自動車リース販売を行っています。

―創業は2007年ですが、どのように事業を拡張してきたのですか?

高橋 飛翔

入り口はSEOでコンサルティングの提供を始め、徐々にメニューを広げました。SEO、コンテンツマーケティング、オウンドメディア制作・運用支援Web広告運用などを、顧客企業の状況に応じ、コンサルティングを通じて組み合わせ、提供しているのが特色です。そうしたコンサルティングのクオリティにより、業界後発ながら高い評価をいただき、これまでに2000社を超える企業のマーケティングを支援しています。

―ホリゾンタルDX事業では、アプリ情報メディア「Appliv(アプリヴ)」も運営されていますね。

高橋 飛翔

2011年頃にゲームのプラットフォームがガラケーやPCのブラウザから、スマートフォンに移行し始めたため、スマホアプリの比較をし、より最適なものがユーザーにとって見つけやすいことが大事になると考えました。それでアプリメディアを立ち上げ、7万件を超えるアプリを紹介し、月間1000万人が利用するメディアへ成長しました。

―もう一方の自動車産業DX事業は毛色が異なりますが、立ち上げた背景を教えてください。

高橋 飛翔

もともとあらゆる産業を水平に、DXやマーケティング支援、メディア運営をやってきたわけで、これがホリゾンタルDX事業です。一方、自動車でやっているのは縦に、日本の主要な産業をアップデートしていくことです。起業当初から構想はあり、医療や不動産、教育などの産業を検討した結果、自動車の領域が最も変化する可能性があり、日本に貢献できる余地も大きいと考え、2018年に事業を立ち上げました。

―具体的にはどのような事業になりますか?

高橋 飛翔

おトクにマイカー 定額カルモくん」という、自動車を月額1万円台からのリース契約でお持ちいただけるサービスを提供しています。当社が企画する商品を、提携する金融機関に組成していただき、当社は仲介のようなポジションで、在庫を持たずに、ブランディングと集客を担い、ユーザーを獲得する。ユーザーが契約するのはその金融機関となる仕組みです。さらにメンテナンスや保険もクロスセルしています。

―ユーザーはどういった層ですか?

高橋 飛翔

2つあって、まず、これまでディーラーで購入してきたが店舗に行くのが面倒で、オンラインで手続を完結できる当サービスを選ばれる方たち。もう1つ、審査が通りにくいような方も、提携金融機関と協力して受け入れやすくなっています。
月額1万円台だと軽自動車になりますが、日本車は大方カバーして、全グレード提供可能です。低価格で提供できるのは長期のリース契約を作っているからで、いま累計申込者数20万人以上と、より多くの人が自動車を持てる機会を生み出せています。

 

次の時代のためになるビジネスを創ろうと、在学中に起業を実践

 

―東大法学部在学中にこの会社を設立していますが、起業を考えたきっかけを教えてください。

高橋 飛翔

かねてから、自分が生きている間に次の時代のためになることをしていきたく、その手段として政治を考え、東大に進みました。そこでできたばかりの起業サークルで、同世代の起業家たちと出会って刺激を受けたのです。一方で、政治の世界ではいろいろと交渉を重ねて積み上げる必要があると知り、やりたいことはすぐ実行したい自分には合わないと思いました。それができるのはビジネスの世界であり、実際に学生が創ったgoogleが10年で数億ユーザーを獲得するようなことが起きているので、自分でも次の時代のためになるビジネスを創りたいと考え、起業しました。

―それが2007年のことです。今まで続けてこられた秘訣は?

高橋 飛翔

もちろん会社が大変な時期はありましたが、16年連続で増収は果たしています。続いているのは、お金のためにやっていないからでしょうね。売却して利益を確定させるより、一番の興味は、次の時代のためになるかどうか。そのなかで、いかにこのビジネスや組織を大きくできるかが重要です。

―ナイル(NYLE)という社名の由来は「Near Your Life」だそうですが、どのように決めたのですか?

高橋 飛翔

起業当初はあまり考えず、ヴォラーレと付けましたが、いつかもっと思い入れのある社名に変えたいと思っていたのです。それで、メディア事業で海外展開を始めた2015年頃、自分で考えに考え、これしかないと思って決めました。

―16年連続成長ながら大変な時期もあったとのことですが、どんな困難があり、どう克服したのですか?

高橋 飛翔

最も大変だったのは2009年頃ですね。借り入れが何千万円かに対して、残金が500万円だけになり、年間で20人採用しても20人辞めるような状態でした。

好転のきっかけは、商品ラインナップを強みや特徴のあるものに絞ったことでした。それまではいろいろな商品を幅広く扱っていましたが、どこにも強みがなかった。そこで思い切って、SEOに特化して営業を強化したところ、急成長できたのです。数があっても強い商品でなければコストになるだけ。当時は数だけの「悪い分散」でしたが、1つ1つに圧倒的強みがあれば「良い分散」で、いまの当社はそれができています。

 

市場環境に応じ、恐れず変化することこそ経営者の仕事

 

―経営者として大切にしていることを教えてください。

高橋 飛翔

事業の軌道修正などにおけるアジリティー、機敏性ですね。市場もユーザーのニーズも常に変化していますので、当社の事業はコレと決めて変わらずにいると取り残されます。そうではなく、変化する状況に応じて、昨日まで一生懸命がんばっていたことも今日からやらないという選択を当たり前に行っていくのが、企業成長には必要。それができるのが自分の強みであり、そういう経営を今後もしていきたいです。

―いま250人以上の大きな会社になっていますが、そこで社長が変えようと言って、みなが同じように変えられるものでしょうか?

高橋 飛翔

私が変えるといえば、変わります。逆に、私が言わなければ変われないので、それが社長の仕事だと思いますね。投資を最適分散させるための意思決定です。社員は、誰かが一生懸命やっているほど、それは止めた方がいいとは言えません。それは経営者でなければ言えないのです。

―そうした経営哲学は、どうやって学ばれたのですか?

高橋 飛翔

あらゆる経営者の話を聞くことが大切。私はどんな相手にもいろいろと掘り下げて聞いていくタイプです。なぜそれをやっているのか、どんなビジネスなのかと深堀りし続けていると、そのなかでいろいろヒントが得られるもの。そこでコレだと思ったことはどんどん実行してみます。すると、うまく行くこと、行かないことがあるので、それをまた糧にして自分の意思決定の精度を上げていく。その繰り返しですね。

ですから普段からコミュニティなど、会話できる機会は増やせるよう心がけており、誰かに話を聞いてみたいと思えば、すぐ聞きに行っています。

 

事業推進でも資金調達でも肝になるのは「気合と覚悟」

 

―オフィスの変遷を教えてください。

 

高橋 飛翔

創業したのは大学に近かった大塚で、2013年に五反田の今のビルに移転してきました。社員が60~70人くらいになり手狭になったので、手頃な場所を探したのです。途中で2フロアに増床しており、今はリモート主体で出社は週2日程度ですが、社員400人くらいまではこの場所でいけるでしょう。

―五反田にいるメリット、良い点は何でしょうか?

高橋 飛翔

もともと電車通勤が苦手で職住接近にしており、五反田に移転したのに合わせて自分も品川区民になりましたが、暮らしやすく気に入っています。また五反田は、オフィス街や繁華街、雰囲気の良い住宅街が渾然一体となっている、他にはない味わいのあるエリアだと思いますね。会社帰りに社員と飲みに行くにも、家族での会食にもよい飲食店が多く、子どもの教育という点でも保育園などが充実していて、朝送っていってそのまま通勤するなどしています。非常にQOLの高い生活が送れますね。

―最後に、起業や資金調達を考えている人へアドバイスをお願いします。

高橋 飛翔

私は大学時代に起業して、サラリーマンを経験しませんでしたが、経営には問題ありません。会社勤めを2~3年しても、経営に役立つことが得られるわけではないでしょう。勤務する仕事と経営は全くの別物です。

大事なのは、どういう課題をどういう手段で解決するのかをしっかり考え、起業する前にこうすればできるという青写真を描くことです。それができていれば、あとはやるだけですね。

そうして事業を行っていくにも資金調達にも必要なのは、気合と覚悟です。特に資金調達では、100社にあたって95社に断られるのが当たり前なので、できたらいいなと思っているだけではダメ。覚悟を持ってやり切るしかありません。圧倒的気迫を持ち、プレゼンのために何度も何度も投資家の反応を見ながら事業計画や資料をブラッシュアップさせればよいので、断られても反省材料にできます。あらゆる経験をプラスにして活かしましょう。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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