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インタビュー 2021.1.5

「起業女子」をサポートする武蔵小山創業支援センターで学び、女性起業家のビジネスプランコンテストで受賞もした、エシカルバッグデザイナーに創業ストーリーを聞いてみた

2010年8月の開設以来、女性の起業や事業を後押ししている、武蔵小山創業支援センター。「つどう つながる そだつ」という運営コンセプトのもと、セミナーや相談会、イベントなどを開催してきましたが、2019年10月にセンター6階を改装。インキュベーションオフィスと共有スペースの一部が、コワーキングスペースに生まれ変わりました。

そんな武蔵小山創業支援センターの支援で創業を果たし、コワーキングスペースに入居して、環境に優しいバッグや小物を開発・製造・販売している「LAERSTERENN(ラエステレン)」の代表、岑山萌子さんにお話を伺います。

 

(プロフィール)

岑山 萌子さん ラエステレン 代表

品川区在住バッグデザイナー。鞄会社で働いていた頃、世界で愛されるヒットアイテムをデザインする一方、ファッション産業の大量生産型のものづくりに疑問を持ち、出産をきっかけに人や動物、環境に配慮したバッグブランド「LAERSTERENN(ラエステレン)」の事業を考案。品川区立武蔵小山創業支援センターが運営する「女性のための起業スクールMU★SAKO」10期生。2020年1月にラエステレンを設立。同年2月に開催された「ウーマンズビジネスグランプリ2020in品川」で特別賞と城南信用金庫「よい仕事おこし賞」を受賞。

 

出産を機に、長年仕事で携わってきた「バッグ」への熱い思いが

 

―岑山さんは「LAERSTERENN(ラエステレン)」を創業し、エシカルなバッグや小物を開発、製造、販売されています。どのような特徴のあるブランドなのですか。

岑山

「人や動物に思いやりのあるものづくり」をコンセプトに アニマルフリーで環境に配慮した素材を用い、シンプルな機能とデザインを心がけています。また、日本国内で作り手と相談しながら、楽しくフェアな環境で製造しています。

アイテムとしてはトートバッグに名刺入れ、財布が色違いであり、自社サイト(https://www.laersterenn.com/shop)で販売を行っています。いちばんの特徴は「Piñatex®(ピニャテックス)」という、パイナップルの葉の繊維を活用した素材を使っていること。化学製品である合皮のように劣化することもなく、自然に優しい植物由来の素材で、環境意識の高いヨーロッパで「ヴィーガンレザー」 と呼ばれ、認められているものになります。

―現在は、武蔵小山創業支援センターのコワーキングスペースに入居されていますね。起業しようと思われた、きっかけを教えてください。

岑山

大学では美術史を専攻し、専門学校でバッグ製作を学びました。その後、フランスのナントに留学して、プロダクトデザインを修得。帰国後はバッグ製造の会社に入り、9年近く、企画デザインに携わりました。そこで、最終的には年間100型ものデザインを手がける、つまり、3日に1つ新しいデザインを起こすようなスピード感で仕事をしていたのです。海外出張もあって、充実はしていたのですが、目まぐるしく変わるファッショントレンドに疲れを感じることもありました。それに、海外で自分へのご褒美として新しいバッグを買うのですが、100%満足するバッグというのに出会えていない、どこか空虚な思いも抱くようになっていたんです。

そのような思いは、2年前の出産を機にさらに強くなりました。育児休業に入り、子育てを行う中で、幼稚園の頃に母が作ってくれた通園バッグを思い出したのです。周りの子の既製品とは違い、母のお手製だというのが子どもながらに誇らしく、とても大切にしていたんですね。そんな思い出がよみがえり、私が作りたいのは、そうした思いの伝わるものだと改めて感じました。それで、現実的に独立を考えるようになったのです。

1人ではここまでできなかった! 起業スクールで事業計画のプロセスを実践

 

―起業するにあたっては、どのように準備をされたのですか?

岑山

武蔵小山創業支援センターで運営されている「女性のための起業スクールMU★SAKO」のことをたまたま、応募締切日の前日くらいに知って「これはよいかも!」と思い立ち、慌てて申し込みました(笑)。それが10期生で、2019年の9月から11月の毎土曜日にほぼ終日かけて、11回のコースだったんです。面接では、どんな事業をやりたいのか、家族の理解はあるかなど、心構えを確認されましたね。

セミナーでは、中小企業診断士の資格を持つインキュベーションマネージャーの方たちから代わる代わる、起業アイデアのブラッシュアップの仕方やコンセプト設定、ブランディングについてなど、学んでいきます。そして、肝となるのは自分のアイデアを元に実際に事業計画を立案していくこと。このセミナーのゴールとして、翌年2月に開催される、品川区などが主催する「ウーマンズビジネスグランプリ」に自動的にエントリーされるのです。

―そのカリキュラムを通じて実際に、起業の準備を行える内容になっているのですね。実践的なようですが、ハードでしたか?

岑山

そうですね。事業プランとして甘い部分があると容赦なく指摘されます。本当にマーケットがあるのかなど、突き詰めて考えさせられました。作業レベルでも、次回までの課題や宿題があるので、参加者はみな仕事や子育てをしながらなので、徹夜も辞さない感じ。励まし合って、がんばりました。

それだけ大変でしたが、起業するためには避けて通れないプロセスだったと思います。結局、事業プランをブラッシュアップさせていく過程で、自身の棚卸しを行うことになるんですね。それまでの会社員時代とは意識が切り替わり、自分の考えや思いを人に伝えるということも、とても勉強になりました。

ビジネスグランプリのファイナリストとして、大勢の前でプレゼンテーション

 

―結果的に、岑山さんは「ウーマンズビジネスグランプリ2020in品川」で特別賞と城南信用金庫「よい仕事おこし賞」を受賞されたわけですね。

岑山

そうなんです。この大会自体、全国から100件近い応募があり、書類審査などを経て、当日8名がファイナリストとして、会場でプレゼンテーションを行えるというものです。「女性のための起業スクールMU★SAKO」に通い始めた当初は、まさか自分がその舞台に立てるとも思っていなかったので、驚きです。1つ1つのことに向き合って、一生懸命やって行けば、道が開けるものなのだと実感しました。

実際には、11月末で起業スクールが修了し、そのままエントリーとなりますが、12月7日までに事業プランを提出しました。その後、年が明けて1月の半ばには、開業届けを提出して、「LAERSTERENN(ラエステレン)」を設立しています。バッグ販売を始めたのはもっと後ですが、2月23日が「ウーマンズビジネスグランプリ2020in品川」の開催日で、ファイナリストに決まったのがその1ヵ月ほど前だったので、この1月から2月の期間は本当に怒涛のようでした(笑)。

当日は、新型コロナウイルス感染予防のため、例年のように一般の来場者はなく、関係者のみの無観客開催だったのですが、それでもすごく緊張しました。手応えなどを考える間もなく・・・。それでも、何か賞を取ることができれば嬉しいと思ってはいたので、2つもいただけて本当によかったです。

―事業のほうは、その後、どのように進められたのですか?

岑山

自社ホームページで販売を開始したのは6月です。コロナ禍の影響で、予定より少し時間がかかりました。それでも、グランプリに提出した事業プランをそのままではなく、さらに良いものにと考え直すなど、何度も更新していきました。

たとえば、「LAERSTERENN(ラエステレン)」の特徴として最も打ち出していたのは、日本で初めて、この植物由来のヴィーガンレザーを使うという点でしたが、それ以外にも、自身の強みとなるものを考えてきました。

女性の多いコワーキングスペースならではの、安心感と刺激

―そうしたことを考えていくときには、この武蔵小山創業支援センターのコワーキングスペースに入居していることは役立ちましたか?

岑山

とても良かったです。1人で考えていると壁にぶつかりますし、自分の範囲でしか考えられなかったりするもの。そんなとき、ここにいれば周りの先生方や起業仲間に相談でき、考えをまとめられます。

私は、自宅には工業用ミシンがあるので、バッグ製作に関する作業はそちらでできるのですが、あえてこのコワーキングスペースも借りています。そうすると頭の切り替えができ、また、長く事業をされている入居者の方と5分程度お話するだけでも、いろいろヒントをもらえたりします。ちょっとしたグチを聞いてもらうこともありますし、「私もがんばろう」と思えます。また、たとえば経理のことで簡単な疑問があるときなど、誰かに聞けるのが助かりますね。ネットで調べても良く分からないけれど、やっている人に聞けばすぐ分かるようなことって、あるものです。

それに、こちらは女性が多いので、私と同じく小さな子どものいるママ起業家がいるのも安心材料ですね。ベビーカーでも入室できるコワーキングスペースというのは、他にはなかなかないのではないでしょうか。

―「LAERSTERENN(ラエステレン)」の事業の展望はどのように考えていますか。

岑山

いまはオンラインショップだけの展開ですが、ポップアップストアなどでリアルの出店も考えています。コロナ禍の様子を見て、タイミングが合えば積極的に行ってみたいですね。

また、フリーランスのバッグデザイナーとして企業向けにもデザイン提案をしているので 「バッグデザイナーなら岑山萌子」と言っていただけるよう、目指したいです。トレンドやファッションではなく、道具としてのバッグという考え方もありますし、今後はフェアトレードで作られたものといった、そのバッグの持つ背景やストーリーに価値を見出す方がますます増えていく気がしています。

事業に対する姿勢としては「三方良し」を意識して、製作者にも消費者にも、環境や社会にとっても良いものを届けていくことを大切にしていきたいです。

最後に、起業に興味のある方へメッセージをお願いします。

岑山

武蔵小山創業支援センターでは、講師やスタッフの方々がみなさん温かく、親身になっていただけます。品川区で起業されるならお勧めですし、ご自身が起業に向いているのか、実際にできるものなのかといった相談にも応えてもらえますので、ぜひ一度、のぞいてみてはいかがでしょうか。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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