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インタビュー 2021.1.5

夢を形に!がっつりビジネスからプチ起業まで、女性の創業をサポートする「武蔵小山創業支援センター」のユニークかつ実践的な支援プログラムについて聞いてみた

2010年8月の開設以来、女性の起業や事業を後押ししている、武蔵小山創業支援センター。「つどう つながる そだつ」という運営コンセプトのもと、品川区在住・在勤および品川区で事業展開を志す起業準備者に対して、夢や想いを実現するための起業・経営支援を行っています。

既存のインキュベーション施設とは異なる、その運営の様子や今後の展望について、センター長代行として現場を取りまとめている藤井あい子さんに伺います。

 

(プロフィール)

藤井 あい子さん

品川区立武蔵小山創業支援センター センター長代行

立命館大学経営学部起業家養成コースを卒業後、マンションデベロッパー・ウェディング業界・子育て支援企業にて従事し、一貫して人の人生の大きな転機に関わる。結婚を機に地元大阪から東京に移り住み、出産を経て、生きる道を常に模索。「女性のための起業スクールMU★SAKO」5期生。起業家の「本気の想い」に応えるべく、2019年より現職に就任。(センター長代行としては、2019年4月、事務局スタッフとしては、2016年7月に着任しています。)

学ぶだけ、じゃない。起業スクールのゴールは、ビジネスコンテストの決勝で飾る!

―10周年を迎えている武蔵小山創業支援センターですが、どのように運営をされているのですか?

藤井

中小企業診断士資格を有しているインキュベーションマネージャーと事務局スタッフなど、ほぼ女性11名で運営しています。当センターに起業のご相談に見えるのは女性が多く、そのためスタッフも20代から50代など幅広い世代でお迎えしています。起業する女性は子育てや介護と並行しながらということも多いので、さまざまな状況に寄り添えるよう、私たちの人生経験もお役に立てればと思っているのです。こちらでは、法人化して事業拡大を目指して・・・というよりは、自分のできる範囲で自己実現などを目的に事業を始める方が多いので、そこに共感できる立場でありたいですね。

―活動の内容や特徴を教えてください。

藤井

伴走型の支援を強みとしており、すでにアイデアがあって起業を目指す方への実践的なアドバイスやサポートから、いつかやってみたいという相談に応えたり、啓蒙的に先輩起業家の話を聞けるセミナーなども実施しています。

実践的なインキュベーションの仕組みとしては、「女性のための起業スクールMU★SAKO(以下、MU★SAKO)」という、起業に必要な知識を学んで事業計画を作成し、プレゼンテーションスキルを磨く講座があります。毎年3ヵ月、9月から11月の土曜日に全10回行われ、2020年は第11期を開講中です。定員20名(2020年はソーシャルディスタンスを考慮して、16名)なので、通算で卒業生を170名は送り出している、当センターの財産です。

特徴的なのは、学びっ放しではないこと。この講座で作成した自身の事業計画がそのまま、毎年2月に品川区等が主催する「ウーマンズビジネスグランプリ」にエントリーされる仕組みとなっているんです。このビジネスコンテストには毎回、日本中から応募がよせられ、多いときには100件ものエントリーがあります。書類審査等を経て、最終的に8名が大舞台でプレゼンテーションを行うのですが、「MU★SAKO」でも、このファイナリストになることを目指して受講者が切磋琢磨しているのです。

―そのようなゴールがあるのは、モチベーションになりますね。仲間意識も生まれそうです。

藤井

ちなみに、2020年グランプリのファイナリスト8名のうち、5名が「MU★SAKO」卒業生でした。うち1名は2年前の卒業生ですが、以前に「MU★SAKO」で作成したのとはまた別の事業をブラッシュアップさせての参加です。当センターでは講座の修了後も引き続き起業や事業のサポートやアドバイスを行っているので、このように事業家として歩んでいけるのですね。

「女性のための起業スクールMU★SAKO」10期生であり、「ウーマンズビジネスグランプリ2020in品川」で特別賞と城南信用金庫「よい仕事おこし賞」を受賞した岑山 萌子さんと一緒に

パルム商店街の協力も得た「テスト出店」で、企画や準備をリアルに体験

 

―起業や事業のサポートやアドバイスとは、具体的にはどのようなものですか?

藤井

まず、物販・サービスでのビジネスを希望する女性起業家を応援するテスト出店イベントとして「羽ばたけ!★アントレーヌ」を、毎年1月に開催しています。当センターは武蔵小山駅すぐにありますが、そこからパルム商店街を抜けていったところにあるスクエア荏原(荏原平塚総合区民会館)のイベントホールが会場です。2020年(または2019年度)には女性起業家による20のブース出店があり、ステージイベントやワークショップの開催も。また、地元飲食店のブースも出るので、この間で850名もの来場がありました。

参加者はみな、起業家として直接お客様に接して、物やサービスを売る体験をするわけで、スタートとしてとても良い経験になります。また、文化祭やフリーマーケットと違うのは、事前セミナーで出店の基礎知識を学び、集客用と当日配布用のチラシを作成すること。起業すれば自分で発信をしていきますので、その練習になるわけです。お客様に伝えたいことは何なのか、表現も考え抜いて作るチラシは、100部を当センターで印刷しますので、自分でそれを使って集客活動をします。

―このイベントだけでも起業に役立つプロセスが学べ、体験できるわけですね。

藤井

学べる点は、まだあります(笑)。当日は出店者を、当センターの審査員や来場者からの投票で表彰。受賞者には、パルム商店街で1週間出店できるというご褒美があります。また、その先も、当センターの1階にある「チャレンジショップ」という路面スペースで出店できる機会があるなど、実践的な支援が得られるようになっています。もちろん、当センターのインキュベーションマネージャーからのアドバイスもできますので、起業を目指す女性にはぜひチャレンジしてもらいたいですね。

―参加者は、品川区民に限られますか?

藤井

「羽ばたけ!★アントレーヌ」については参加を広域から可能としており、遠くは神奈川県や埼玉県からも参加実績があります。このイベントも2021年で第12回目となりますが、当初から「品川区で女性起業家を生み出そう」という気概を持ち、広く募っているのです。実際にこれを機に、武蔵小山をはじめ、品川区で事業を始められた方もいますので、地域活性化につながるものと期待しています。

ベビーカーで入室できるコワーキングスペース。女性にやさしい環境を整備

 

―そのほか、武蔵小山創業支援センターではどのような起業支援が行われていますか?

藤井

そもそも起業といっても、何を準備すればよいのか分からなかったり、起業が自分に向いているか迷われているような方向けに、「アントレーヌデビュタント」という連続セミナーも開催しています。毎年7月に、これまでは全3回でしたが、2020年はショップでの陳列など実務的な内容も加えて、全5回コースとしました。

内容としては自分の棚卸しから、起業家としての心構えをもつこと。そして、お店や教室など、自分の夢やアイデアを事業にしていくための、SNSでの集客方法やチラシなどによる宣伝のし方、自分の商品・サービスに合ったディスプレイ方法などを、手を動かしながら学んでいきます。

当センターでは、そのほかにもテーマごとにセミナーを設け、ソーシャルディスタンスを考えてオンラインセミナーも多く開催しているのですが、この「アントレーヌデビュタント」のような実践的なものなど、内容によっては感染対策を十分に行いながら、あえて対面で実施しているものもあります。講師との直接のやり取りや、他の参加者から受ける刺激というのは、やはり掛け替えのないもの。受講しただけで満足するのではなく、その先に進んで、実際に起業へのステップを歩んでもらいたいので、オンラインとオフラインをうまく組み合わせながら、今後も発信していきたいですね。

―創業支援として、専門家と個別で相談ができたり、コワーキングスペースや交流サロンも設けられていますね。

藤井

そのとおりです。特徴的なのは、女性が利用しやすいよう、ベビーカーで入室できることですね。以前は個室を中心に設けていたのですが、女性が行う事業はパソコン1台でかなりの業務が行えるものも多く、利用料を抑えるためにも、コワーキングスペースというオープンな形に改装をしました。交流サロンでは各種セミナーや交流会も行います。先輩起業家の話を聞いたり、起業を目指す仲間と触れあうことも大事にしているのです。

藤井

専門家は、税理士や司法書士、弁護士などの士業の方から、ホームページ作成やブランディング、販路拡大といった相談内容に対応するスペシャリストなど、約60名が登録されています。1時間無料で、対面かメールで相談できますが、みなさん、品川区の相談員として誠実に対応いただいています。また、当センターでも、たとえば動画編集など、最近のトレンドに合わせた分野の専門家も新たに募集するなど、本当に役立つ支援ができるよう努めています。それに、相談内容は申込時に当センターの事務局スタッフが一度取りまとめておりますので、適切な方に的確に相談をしていただけるかと思います。

―今後の展望をお聞かせください。

 

藤井

武蔵小山はもともと、都内では最長の800mのアーケードをもつパルム商店街を中心とした活気ある街並みですが、2020年に入って41階建てのツインタワーマンションが竣工するなど、駅前から近代的に再開発が進められているところです。隣接する当センターでも、いま1階にある3区画のチャレンジショップを2020年度中に改装し、オープンスペース化。また、新たにワークショップなどができる交流スペースや、チラシやポップ等が作成できるデザイン工房を開設する予定です。そうして存在感を示し、地域の方にもっと親しんでいただきたいですね。そして、ここから女性起業家がたくさん生まれているのだという、シンボルになれればと思います。

そもそも女性の起業では、支援する内容も一般的なものとは少し変わる気がします。男性の起業では、それまでの経歴やキャリアで培ってきたものを自分でやって大きくしていく傾向があるのに対し、女性は生活の中での困りごとや趣味でやってきたことがテーマとなったりします。そのため、これまでの仕事からガラリとキャリアチェンジをして、違うことを始めるケースが多いのです。ですから伝えたいのは、その方にとって経験のない、新しいこと。たとえばチラシ制作やパソコンの使い方だったり、事業計画の磨き上げだったりを支援するわけです。そういう、業務・作業レベルで本当に役立つことを提供していることを、もっと多くの女性に知ってもらいたいですね。

また、私たちの活動は当センターのホームページのほか、ブログhttps://ameblo.jp/musashikoyama-sc/やfacebook、Twitter、LINEビジネス、最近ではYouTubeチャンネルでも日々情報発信をしています。特にブログは当センターの開設当時から、多い時には月20件ほども発信して、セミナーやイベントの様子をつぶさにレポートしたりしているものです。当センターから生まれた女性起業家の例も多数紹介しておりますので、ぜひ一度、のぞいてみてください!

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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