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インタビュー 2020.12.16

都会のど真ん中で実証実験ができる?! ITベンチャーにとっての五反田メリットを、「五反田バレー」の立役者に聞いてみた

五反田・大崎エリアのベンチャー、スタートアップ企業をとりまとめる「五反田バレー」。2020年2月放送の『出没!アド街ック天国』では五反田エリアを代表する1位にランキングされるなど、ますます注目を浴びています。

今回は、ベンチャー、スタートアップ企業が五反田で活動することのメリットや品川区との連携、今後の展開について、五反田バレーの草創期から広報に携わる、株式会社Patheeの中村岳人さんに聞きました。

 

(プロフィール)

中村 岳人さん 五反田バレー代表理事/株式会社Pathee Sales & Marketingグループリーダー

組織・人事コンサルティング会社を経て、2016年株式会社マツリカに入社。セールスチームシニアマネージャー、エバンジェリスト、Public Relations Vice President等を歴任。2018年7月五反田バレーの立ち上げに尽力。代表理事として一般社団法人五反田バレーの運営に務める。2018年12月、同じく五反田にある株式会社Patheeに入社。

 

立ち上げ間もないITベンチャーに、家賃も環境も優しかった五反田

 

―最初に、ムーヴメントとしての「五反田バレー」をおさらいさせてください。いつ頃から、どんなきっかけで呼ばれるようになったのでしょう?

中村

2017年頃、日経などの経済記事で「ベンチャー企業が集まる五反田エリア」を「五反田バレー」と呼ぶ記事がちらほら表れはじめたんです。

当時はベンチャーといえば、渋谷のイメージ。もともと渋谷に有名な大手ITベンチャー企業があったり、資金調達先のベンチャーキャピタルも多かったため、みな渋谷エリアにオフィスを構えたがったのです。けれど、人気エリアで家賃も高額です。そこで、穴場として注目されるようになったのが五反田でした。

―たしかに、家賃相場は手頃ですね。データを見ると、小規模オフィスの賃料坪単価は渋谷が2.5~3.5万円に対し、五反田は1.5~2万円だそうです。

(注:コロナ禍以前の相場観によります。)

 

 

中村

そうなんです。それに五反田には、小規模なオフィスに適した中小ビル物件が多い。また、起業し立てで資金に余裕のないベンチャー、スタートアップ企業としては、設立・移転費用や家賃などの固定費はなるべく抑えたいもの。それに対して、土地柄ですが、五反田のビルオーナーは何かと融通を利かせてくれたりします。「優しい」んですね。

それに、従業員やその家族が暮らしやすい手頃な物件が都営浅草線や池上線沿線で見つけやすく、職住接近しやすかったのもプラスでした。

―なるほど。環境的にも予算的にも、ちょうど良いのですね。

中村

交通至便というメリットもあります。山手線の内側にアクセスしやすいですし、新幹線が発着する品川駅まで2駅。羽田空港にも出やすいから、出張にも便利なんです。IT経営者にはもってこいの立地でしょう。

地域でのネットワーキングを自分たちで運営

 

―そうした好条件により、五反田にITベンチャー企業が増えていきました。2018年7月には、一般社団法人五反田バレーが設立されています。

中村

自分たちで自律的にまとまり、発信をしていこうという考えからです。そのきっかけとなったのは、各社の広報担当者で始めた勉強会でした。もともと広報という職種は、他社との交流に積極的なところがあります。そうして互いの顔が見え始めると一体感も生まれ、会社同士のネットワーキングに広げていこうとなりました。

また、「五反田バレー」がメディアに紹介されるにつれ、大手企業からアライアンスなどの問合せも増えてきたので、その窓口も必要でした。そこで、広報勉強会の中心だったマツリカ・freee・トレタ・セーフィー・よりそう・ココナラの6社が理事企業となって、一般社団法人を設立したんです。

 

―当時は、すでにITベンチャー企業の中で、オフィス移転を考えるなら五反田も選択肢に上がる感じでしたか?

中村

そうですね。もともとの歓楽街のイメージから、ITベンチャー企業をやるなら「渋谷や六本木と並んで、五反田も」と意識してもらえるようになりました。一般社団法人の設立がメディアに多く取り上げられたのも、相乗効果がありましたね。

―一般社団法人では「五反田バレー」をベンチャー・スタートアップの集積地として認知してもらうことで、五反田バレーに参画している企業の成長に貢献することを目的とされています。いま、会員企業は何社くらいですか?

中村

全体で70~80社というところです。五反田・大崎エリアのIT企業は400社ほどあるのですが「五反田バレー」が会員企業としてイメージしているのは、従業員数1~10人で資金調達額数千万円から、10~100人で数億円の資金調達を行うようなフェーズにある企業ですね。

大体、前者のフェーズで五反田にオフィスを構え、後者でオフィス拡張の移転をされますが、この段階では営業先の開拓や会社、サービスの認知度アップが課題だったり、大手企業とアライアンスを組みたいというニーズが高いもの。そうした企業にとって価値あることを意識して活動しています。

ベンチャーに役立つ、品川区の「ありがたい」企業支援制度を情報発信

 

―活動の、具体的な中身を教えてください。

中村

品川区との連携による活動は主に4つ。「ビジネスマッチング支援」「オウンドメディアによる情報発信」「エンジニア採用支援」「地域活性化支援」ですね。

―ITベンチャー企業にメリットのありそうな匂いがとてもしますね(笑)。1つずつ内容を教えてください。

中村

ビジネスマッチングは、もともと行っていた、メディアや大企業から問合せをいただいた時にマッチする会社に紹介し、商談や事業提携につなげてもらうというもの。また、ベンチャー以外の会社も含め、区内の企業同士のネットワーキングにも取り組んでいます。

さらに積極的に、ビジネスマッチングイベントなどを品川区と共催も。五反田バレーとしてスタートアップ企業を束ねたり、過去に問合せのあった大企業への声掛けができますし、品川区に入る全国からの問合せまで一元管理して効果的に開催しています。

―1社単体では得がたいような、他社との連携につながるチャンスですね。オウンドメディアでは、どのような情報を発信されていますか?

中村

「五反田計画」https://project.gotanda-valley.com/というサイトで、会員企業の情報発信を行っています。さらに、今期特に注力しているのが、品川区の助成金・補助金等の企業支援制度についてです。例えばエンジニアの採用費の一部を助成してもらえる制度など、多くのベンチャー企業にとって価値のある支援制度が品川区には多くあるのです。なかなか知られていない、こうした情報を区内の企業に届けるチャネルとしてこのサイトを育て、支援制度がもっと活用されるようにしていきたいですね。

―たしかに、そうした支援制度って税理士や社労士からアドバイスでもない限り、なかなか気づけないかもしれません。後から「この申請をしておけば、ウン万円もらえたのに!」とか気づいたら、残念ですね。そもそも、制度を知っていればベンチャー企業でも、より積極的、効果的な対策や投資ができそうです。

中村

そうなんです。品川区はそのあたりが手厚いので、知らないと本当にもったいないです。そして、エンジニアの採用支援でも、品川区との共催で採用イベントを開催するなど連携しています。「五反田バレー」として行うことで1社単体よりも集客でき、より多くのエンジニアと接点が持てるでしょう。

品川区の顔である商店街の、IT化をサポートしてビジネスに活かす

 

―地域活性化としては、どのようなことを行っているのですか?

中村

今期行っているのが「しながわ商店街応援プロジェクト」で、5月13日に品川区、品川区商店街連合会との3者共同で始めています。品川区は商店街が多いのが特長ですが、全国の商店街と同じく後継者や人手不足が課題です。その解決に、会員企業のITの力を活用しようというのが、このプロジェクトです。

もともと商店街の支援自体を品川区と相談してきましたが、コロナ禍により、求められる内容もより緊急度が増しました。そこで販促支援としてWebサービス「note」で、インターネット販売(EC)の始め方や、そのPR/告知手段についてなど、商店街の各店舗がオンライン販売を始める際に役立つ情報を提供しています(https://note.com/shinagawa_shoten)。

次のステップとしては、会員企業各社が持つデジタルサービスをまずは試してもらえるよう、店舗向けのキャンペーンなどを検討中です。それにより、商店街ではIT化の機会ができ、会員企業は自社サービスのPRができ、品川区は商店街を活性化できると、三方良しでしょう。

―行政と共同で行うプロジェクトというと、いわゆるベンチャー的なスピード感はなさそうなイメージもありますが、品川区とはクイックに、現況に応じた活動ができているのですね。

中村

そうなんです。区民全体がステークホルダーとなるため、調整作業は大変だろうと思うのですが、品川区では話が進むのが早いんですね。思っていた以上に、品川区内のいろんな方たちを巻き込んでもらっています。

また、商店街のプロジェクトにしても、ITだけをやってきた会員企業と、実際にお客さんに向き合って商売をされている店舗の方たちとでは、ITに対する目線や考え方にも差があるもの。ですが、品川区や商店街連合会、五反田バレーの3者が間を取り持つことで、その溝が埋められるんですね。

―それはよいですね。行政と連携できるとそのほかの医療や保育といった社会課題においても、取り組みを進めやすそうな気がします。

中村

そうですね。五反田バレーという法人を立ち上げて行政と連携することで、個々の会社が動きやすく、話を進めやすくなっています。五反田で活動されるIT企業には、そうしたメリットをぜひ活用してもらいたいですね。

新しいデジタルサービスを、街ぐるみで実証実験できる場に

 

―仲間に加わっていただく企業に対して、求めることはありますか?

中村

特に、五反田バレーに対して何かして欲しいというのはないんです。それよりは、事業に集中してもらって、こちらが出したパスをぜひうまく活用してもらいたいですね。

大前提として世の中全体でベンチャーやスタートアップ企業の盛り上がりがあり、また、大企業でも変革の機運が高まっています。五反田バレーはその架け橋として、どんどんパスを出していきたいと考えています。

私自身、マツリカ、そしてPathee(パシー)という五反田のIT企業で仕事をしながら、五反田バレーの運営も行う中で、品川区には助成金や融資の制度など、会社の成長にとってたいへん役立つ支援策が数多くあることに気づかされました。だからこそ、そうした行政による支援についても、多くのITベンチャー企業に伝えてあげたいなと思うんです。

―今後は、五反田をどのように活性化していきたいですか?

中村

五反田で事業をやることによって得られるメリットを、さらに独自色を強められないかと考えています。五反田で働いてみて感じる良さは、街がアットホームで、人々の距離感が近しいこと。

ですから、「しながわ商店街応援プロジェクト」のような行政・地元とタッグを組んだ取り組みをさらに発展させて、たとえば街ぐるみでの実証実験が行えるような環境整備を行っていきたいのです。ITベンチャー、スタートアップ企業が考案した新しいサービスやプロトタイプを、行政を通じて地元の方に試用してもらったり、取り組みをオフィシャルにしてもらうことで、開発やデータ取得、実績づくりに役立ててほしい。他のエリアとは違うチャンスのある場所に、五反田をしていきたいです。

―それはいいですね! 地方自治体などで、そうした体制をとっている例はありますが、都心で、たくさんの人が生活をしている中でPoC環境が持てるのは、この上ないメリットに思えます。

中村

もう一つ、このコロナ禍による変化への対応も考えていきたいです。オフィスや対人コミュニケーションのあり方が大きく見直されており、たとえば従業員数30人で駅前にオフィスを構えていた会社でも、リモートワークが進んだ結果、10人分程度のコワーキングスペースで代替し、全従業員が集まる会議などの際には、会場を借りればよいとなっていたりします。

そうなると、これまでは五反田エリアの多様なITベンチャー企業の、多様なメンバーがコミュニケーションをとるハブであった五反田バレーも、あり方が変わるでしょう。物理的なコミュニケーションだけではない、新たなネットワーキングのハブとしての役割を模索していかねばと思っているところです。

―五反田マインド、みたいなことがキーになるでしょうか。

 

中村

そうですね。五反田はごった煮みたいな、いい意味でのカオス感がある街なんです。ちょっと歩くといろんな雰囲気やカテゴリーのものに出会えるわけで、そういう良さを持ち続けながら、五反田マインドでつながるIT企業の架け橋として、存在感を示していきたいですね。

また、コロナ禍以前から懸念していたのが、IT企業が成長して従業員が100人を超え、200人300人となると、そのキャパシティのオフィスが、実は五反田にはあまりないんです。それで渋谷や恵比寿に卒業していかれる例が出てきていました。そうした企業にも、移転で縁が切れるわけではなく、むしろこれから成長される企業への良いアドバイザー、相談役となってもらえることを期待してるんです。五反田バレー出身というネットワークですね。

もちろん、オフィスのあり方が変わるなかで、企業として大きくなっても比例してオフィス面積を要するとは限らなくなるでしょう。つまり、五反田の中で成長し続けられる状態というのも可能なはず。そうした体制への支援なども、品川区と連携して考えていければと思います。

―いろいろな可能性がありそうですね! 五反田バレーの今後に、期待しています。今日はありがとうございました。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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