品川区

品川区内の起業家・スタートアップを応援し、最新情報を発信 SHINAGAWAism 品川区スタートアップナビ

インタビュー/対談/特集記事

インタビュー 2020.12.16

近未来的なビジュアルの、めちゃ雄大なコワーキングスペースを、セガサミーHDが大崎に作ったワケを聞いてみた

総合エンタテインメント企業グループのセガサミーホールディングスが、大崎で運営するコワーキングスペース「TUNNEL TOKYO(以下、トンネル東京)」。1400平米を超える面積に、約80席のオープンラウンジや会員専用エリア、貸しオフィス、8室の貸し会議室を備えています。

その開設の意図やスタートアップをはじめとする会員への支援の様子、今後の展望について、「トンネル東京」の総責任者である、同社の投資マネジメント部担当部長の清宮俊久さんに聞きました。

 

(プロフィール)

清宮 俊久さん セガサミーホールディングス株式会社 投資マネジメント部 担当部長

1999年、セガ入社。2000年以降、社長室および経営企画部門にて新規事業企画、投資・アライアンス企画、予算編成、コーポレートガバナンス、海外事業等に従事。2013年セガネットワークス(現、セガゲームス)設立、経営企画部部長、(兼)投資戦略部部長、(兼)コーポレートガバナンス部部長。2016年、セガゲームス秘書室長、(兼)セガサミーホールディングス資産運用部担当部長。2017年、セガサミーグループCVC部門の責任者として現職。2018年、ゲームチェンジャーをテーマとするイベント・コワーキングスペース『トンネル東京』デザイン、総責任者(兼)。

 

本社移転で活性化を図る中、シナジーを目指してコワーキングスペースを開設

 

―とても近未来的なデザインと、とにかく広いという印象の「トンネル東京」です。コワーキングスペースとして、どのような特徴がありますか?

 

 

清宮

まず開設の背景ですが、2018年にセガサミーグループとして、それまで分散していた各事業会社、延べ20社、従業員数約6500人を集約し、大規模な本社移転を実施しました。このビル自体が、都内最大級のワンフロア1600坪という広さを誇りますが、その中でセガサミーグループは2階から13階までと24階を占めています。そして、そのワンフロア(9階)をこの「トンネル東京」と、社内コミュニケーションおよびコワーキングスペースともいえる社員食堂としたのです。この場所で、セガサミーグループが多くの企業やスタートアップ、個人起業家の皆さんと一緒に、オープンイノベーションを起こしていくことを目指しました。

これにより、グループ社員にとっては外部の才能と触れ合う機会になりますし、会員にとってもメンバー間やセガサミーグループ社員との交流を刺激にしていただきたい。また、当社の投資部門としてオープンイノベーションにつながるサポートもしていきたい考えです。

そのためには、どの分野・領域においても、いわゆる「尖った」人に注目をいただき、集ってもらいたいと考えて、デザインや機能性、自由度高く使えるルールや仕様に徹底的にこだわりました。

―オープンラウンジから会員専用スペースに向かうまでの、トンネルのような通路はとてもインパクトがあります。LEDライトでカラーリングも絶えず変化していますね。

清宮

デザインとしては、ビジネスの未来へつながるトンネルといった位置づけですね。このトンネルの入口からがセキュリティで分けられた、会員スペースとなります。トンネル内の左右には、今お話をしている会議室や大小8室のオフィススペース、利用者のロッカー、1人でこもって作業に没頭できるスペースなどが設けられているわけですね。通り抜けた先にはメンバーラウンジがあり、自分専用のワークスペースを持てる固定メンバー席や、さまざまな働き方が可能な約100席のフリースペースがあり、24時間利用可能です。

清宮

窓側の席は、真下を走る新幹線も眺められて開放的ですし、交流しやすい大テーブルもあれば、Yogiboのクッションでごろごろできる小上がりスペースもあります。

清宮

これらの、気分に合わせて選べる多様なシチュエーションがありながら、トンネルの外のオープンラウンジでさらに多くの方と交流いただくことも可能です。また、エレベーターを挟んで反対側にある、社員食堂もご利用いただけますし、フロア内にはコンビニエンスストアもあるので、飲食にも便利。テナントビルの1階にコンビニがあるのは珍しくないと思いますが、同じフロアなのでエレベーターを待たずにふらりと行けるというのは、意外にメリットとして大きいようですね。

 

振り幅の広い「尖った」イベント開催で、注目と期待を集める

 

―なるほど。自由度が高いというのは、そうした多様な空間づくりやレイアウトによるものなのですね。そして、オープンラウンジではいろいろなイベントも開かれています。

清宮

それが、「尖った」人から注目をいただける最大のポイントといえます。壁一面に広がる幅20メートル、高さ3メートルの大型LEDビジョンが、イベントやセミナーでのスクリーンとしても活用いただけますし、普段から環境ビデオ的にアート性の高い映像を流していたり、希望があればビデオチャットに使ってもいただける。自由な発想で、かつ、先進的な「トンネル東京」のイメージを象徴するものとなっています。

開催するイベントも、ママ向けの起業イベントから、SDGs関連のネットワーキングイベント、オンライン配信のニコニコ生放送による都知事選の開票特番収録、テレビ東京系の人気特番シリーズ『やりすぎ都市伝説』のトークイベントなど、振り幅の広いテーマで行われています。

―本当に振り幅が広いですね。それ自体が、新しい出会いや発見、ビジネスのヒントになるということでしょうか。

清宮

一つには、当社が考える「エンタテインメント」が、いわゆる映画や音楽、ゲームだけではなく、生きていくために必要な最小限のもの以外の全てだということがあります。衣食住であっても、友人と美味しいものを食べに行く、最新のスポットで食べる、お気に入りの服で装うのであればエンタテインメントであり、何が新しいビジネスのヒントになるかには限りがありません。ですから、開催するイベントもテーマを幅広く、しかも、新奇性に富んだユニークなものを意識しています。

それはまた、セガがもともとオープンイノベーションの得意な会社であることにもよるでしょう。UFOキャッチャーはアメリカ生まれのクレーンゲームを再発明したものですし、脳トレという遊びもセガトイズのおもちゃに起源があります。カードゲームやレースやシューティングのように、ゲームと親和性の高い領域の枠に捉われず、異業種や広義でのエンタテインメントの面白い部分にリーチできる場でありたいと考えています。

 

新奇なデザインやイベントにより、会員や入居企業から「愛される」空間に

 

―そうしたオープンラウンジのユニークさは、コワーキングスペースとしての「トンネル東京」への呼び水となりますね。

清宮

そのとおりです。デザインとしては昭和のレトロフューチャーに、当社の「アウトラン」というレーシングゲームのテイストを一部取り入れています。それに加え、コンピューター制御でさまざまな演出が可能なので、遊んでもらったり、新しい表現やスタイルに挑戦いただけるわけですね。

実際、こちらでイベントや打ち合わせをされたのをきっかけに「面白い場所がある」と広めてくれる方が多いのです。たとえば、ドワンゴの代表取締役社長である夏野剛さんは当社の社外取締役でもありますが、「トンネル東京」を気に入ってくれ、それがニコニコ生放送の都知事選開票特番にもつながっています。また、DREAMS COME TRUEの中村正人さんもここを気に入られて、ご自身の番組配信をしてくれました。ちなみに中村さんはセガと深いご縁があって、初代UFOキャッチャーのBGMやメガドライブ用ゲームソフト「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の音楽を手がけられているのです。そのため、海外のゲームファンには「ソニックの音楽を作った人」として特に知られてもいるよう。その方が「トンネル東京」から発信をしてくれるのは感慨深いですし、また新たなものが生まれる期待も感じます。

―不動産的な付加価値とはまた別の、「トンネル東京」らしいアピールポイントですね。

 

清宮

一般にコワーキングスペースといわれるものには、スペースを小分けして賃貸料を得るシェアオフィスという立ち位置と、シナジーを目指すオープンイノベーション施設という立ち位置があると思います。ビジネスとして安定的なのは前者ですが、快適に作業をされるだけではネットカフェの個室にこもるのと変わらず、交流が生まれません。シナジーを起こせるよう、広い開放的な空間を自由に使ってもらうには、経営を考えると相応の費用をいただく必要があります。

「トンネル東京」では両者のバランスをとって、イベントでファンを集め、シェアオフィスの部分から得た収益を運営コストに当てて、オープンイノベーションにつながる場を提供することを考えています。今のところ、安定的な運営と「尖った」人に集っていただくところまでは順調に進み、人が人を呼ぶ良い循環もできています。そろそろ次のフェーズとして、より交流や新しい結びつきを積極的に提案していきたいですね。

入居企業には、メディアに注目されるスタートアップも

 

 

―「トンネル東京」の会員は、どういう方が多いのですか。

清宮

会員全体では300人ほど。事業所として登記も可能で、そういう方は50~70人ほどいらっしゃるかと思います。ですが、コロナ禍の影響で働き方が変わり、当社自体もリモートワークを推奨している状態。もともと気軽な交流の場としてバータイムが好評だった社員食堂も、今は飲食対応をランチタイムのみとしています。コワーキングスペースの会員も、コロナ禍対策として休会される場合は、手数料不要でいつでも再開できるよう対応しています。一方で、この大崎近辺にお住まいの方が、リモートワークを自宅以外で快適にできる場として、新規に申し込まれる例が目立っているのです。その意味では、ワンフロアにさまざまな環境のワークスペースがあって自由度高く使え、コンビニもある利便性というのが支持を得ているのだと思われます。

―では、今後はそうした「便利」を魅力に感じられる会員も増えそうですね。次の段階としての、交流や新しい結びつきについては、どのような展開を考えておられますか?

 

清宮

昨年から会員同士の交流会が立ち上がっていたところですが、ソーシャルディスタンスの観点から、以前どおりの運営はむずかしいかもしれません。

実は、オープンスペースで開催するイベントでは「バーチャル・トンネル東京」と銘打って、バーチャル空間とリアル空間を融合させた企画を行い始めているんです。もともと「トンネル東京」を会場として、空間に設置した輪やすき間で設定したコースにドローンを飛ばしてタイムを競うドローンレースは何度か開催していたのですが、今は大人数が集うことができません。そのため、レース参加者のみオフラインで参加し、レースの様子はオンラインでの生配信としました。それだけでなく、オープンラウンジやメンバーラウンジまでをバーチャル空間に忠実に再現した、バーチャルレース用の空間を開設。3Dデータに基づいて、バーチャルの参加者とリアルの参加者が競い合うというレースを行ったのです。プロ同士で競った結果、3周で0.5秒ほどの僅差と盛り上がりました。このように、オフライン/オンラインを組み合わせ、デジタルはさらにさまざまな技術を掛け合わせるような企画というのは、今後も模索していきたいですね。まだまだ完成形ではないのですが、「バーチャル・トンネル東京」という言い方をあえてすることで、「何それ?!」と興味を持ってくれる方が出てきて欲しいと期待しているんです(笑)。

また、毎年恒例の、週刊東洋経済が特集する「すごいベンチャー100」の2020年版https://premium.toyokeizai.net/articles/-/24390に、「トンネル東京」の入居企業のスタートアップが2社選出されていたのがうれしかったです。ゲームの不正対策をするホワイトハッカー集団の「Ninjastars」と、倉庫内業務を効率化するアプリを提供する「KURANDO」というスタートアップですが、前者は特にまだ学生で、よくオープンラウンジにたむろしてくれているんです。若さや才能が感じられて、頼もしいですね。

ちなみに「トンネル東京」では「StartupBaseU18」という高校生向けの起業体験支援団体のピッチイベントも行われていて、私も審査員を務めたのですが、こうした未来につながる支援も個人的には盛り上げていきたいと思っています。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

TOP