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インタビュー/対談/特集記事

インタビュー 2021.3.26

企業のオープンイノベーションを推進。ビジネス化の実践へのこだわりを「Innovation Space DEJIMA」に聞いてみた

東五反田、目黒川にほど近いビルの13階にある「Innovation Space DEJIMA」。2017年10月開設の企業の新規事業創出にチャレンジする人やスタートアップが、オープンイノベーションを実現するためのスペースです。運営する、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)のグローバルネットワークを活用して、業種業態、領域を超えるための運営体制や独自企画のミートアップやワークショップ、コロナ禍における新たな取り組みなどについて、プロデューサーの五十嵐知宏さん、松元絹佳さんに聞きました。

(プロフィール)

五十嵐 知宏さん Innovation Space DEJIMA プロデューサー

2002年CTC入社。ネットワーク技術のポスト・プリセールスエンジニアを経験後、カリフォルニア州に駐在し現地スタートアップ企業とのパートナーシップ構築を担当。帰国後はクラウド技術のソリューション開発、組織施策担当など経て、現在は新規事業創出担当。Innovation Space DEJIMAの企画・運営をしながらテクノロジーを活用した事業開発を進めている。

|大手企業とベンチャー企業が交流できるサードプレイス

 

―「Innovation Space DEJIMA」をつくられた経緯を教えてください。

五十嵐

DEJIMAの運営会社は、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)という、伊藤忠グループのITソリューションプロバイダーです。そこでハードウェアからソフトウェア、クラウドサービスまで幅広く提供する一方で、システムインテグレーターとして外部の方々と一緒にビジネスを作っていくような、新たな価値創出を模索していました。、日本ではIT人材の配分に偏りがあるために、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まないのだといわれています。100万人以上いるIT人材の7割以上が我々のようなIT企業に属しており、製造業や金融業などのよりITが必要なユーザー企業には十分な人材がいないのです。一方、欧米ではユーザー企業が多くのIT人材を確保できていますが、それは雇用流動性が起因するため、日本が一夕一朝に倣えるものでもありません。

そこで私たちは、企業側が組織の壁を超えて協働するような仕組みを作ろうと考えたのです。そのため、受発注の関係だけではなく同じ目線でビジネスを作っていける文化醸成を目指し、交流できるサードプレイスとしてつくったのが「Innovation Space DEJIMA」です。

―どのような特徴があるのでしょうか。

五十嵐

サードプレイスということで、CTCの拠点のある霞が関や大崎ビル内ではなく、あえて離れた場所にするのを意識しました。まさに「出島」ですね。結果的に様々なご縁もあり、当時まだコワーキングスペースがあまりなかった五反田に決めたのです。大企業だけが集まっても広がらないので、品川区にも協力いただいて五反田のスタートアップにも入ってもらうようしました。DEJIMAの開設当初から、イントレプレナーや企業変革に重きをおきながら、大企業もスタートアップも混ざり合って交流しているのが、DEJIMAの特徴ではないかと考えています。

また、CTC自体が海外スタートアップとの協業を70年代から行っており、もともと同業他社と比べても特にオープンイノベーション的なDNAがあると思います。私自身シリコンバレーオフィスに駐在していた際、日本に展開できるスタートアップを支援し協業するという体験をしました。同じようにして今、国内スタートアップの人たちとも一緒に活動させて頂いています。そして、とりわけ私たちが大事にしているのは、マッチングだけで終わらせないこと。プロジェクト化、ビジネス化していくことを何よりも大切にしています。

コミュニティを活性化させ、新たな事業創出につなげる

 

―CTCのスタートアップ企業との協業事例には、どのようなものがありますか。

五十嵐

協業には、「技術面」「資金面」のアプローチがあり、その両方を行った例もあります。DEJIMAだけでなく、当社ではCTC Innovation Partnersというコーポレートベンチャーキャピタル機能も持っており、必要に応じて出資もしています。

もともと、スタートアップ企業の製品・サービスをCTCが販売するというビジネスモデルはあるのですが、そのビジネスにハンズオンで入るなど、自由度高くアプローチが可能です。

―こうした協業において、「Innovation Space DEJIMA」は実際、どのように活用されているのでしょうか。

五十嵐

物理的な場があってイベントを開催することが、出会いのきっかけづくりにたいへん役立っています。「Innovation Space DEJIMA」のイベントスペースはミートアップやワークショップで使うことを想定して作られており、120名規模が集え、グループワークもしやすい環境です。また、オフィス感が出てしまわないよう、家具等をオフィス用ではなく商業施設用のものを用いていますし、CTCのイメージカラーであるブルーや、伊藤忠やCTCの文字も一切使っていません。

イベントスペース以外にも、大小の個室があり、商談や打ち合わせに使っていただけます。

松元

「Innovation Space DEJIMA」では事業を創ることが目的です。そのステップとして、コミュニティの形成からプロジェクトの組成を生み出していくことを考えています。まず人と人との出会いを生み出すために数多くコミュニティを形成し、その中で目的や価値観が合うことでプロジェクトが、数件など組成されていくでしょう。そうして具体化していった先に、ビジネスがようやく1つ生まれる。そのくらいの確度を想定しているので、まずコミュニティ活動を盛り上げることを大事にしているのです。

―協業につながる環境づくりとして、イベントが起点となるわけですね。

松元

そうです。イベントに対して、単純に開催して人を集めるのではなく、あくまでビジネス化を念頭においた人との出会いを狙いとして捉えています。DEJIMAでは、ビジネスを生み出すためには「人材」「アイデア」「刺激」が必要な要素だと考えています。この3要素は、新規事業を美味しい料理と例えると、それぞれ「料理人」「食材」「スパイス」といったイメージです。

「人材」にポイントを置いたイベントとしては、新規ビジネスを作る人材を育成するためのイノベーション促進プログラムや、「Innovators’ Talk」というセミナー形式のものを提供しています。「アイデア」を創るためには、自治体の課題をテーマとしたワークショップ「デジマ式plus」や、幅広くDX(デジタルトランスフォーメーション)をテーマにしたワークショップを提供しています。そして「刺激」として、米国でテクノロジーをリサーチするグループ会社の現地駐在員からの最新情報の提供や、物理空間とバーチャル空間の連携を探る「DEJIMA digital」の取り組みなどがあります。

リアル空間とバーチャル空間の連携で、新たなイノベーションに挑戦

 

―特徴的なイベントについて、もう少し教えてください。「Innovators’ Talk」とはどのようなものですか?

松元

「Innotvators’ Talk」は、企業の新規事業担当者に向けたコミュニティ形成の場と位置づけています。スーパーアプリやロボティクスなど、そのときホットな話題をテーマに、その業界第一線のエキスパートを講師としてお呼びして、インタラクティブなセミナー形式で開催します。このシリーズは、世界中のエキスパート・ネットワークを構築する株式会社ミーミル(ユーザベースグループ)との共催で、定期的に開催しているもの。一般のイベント告知サイトにセミナー情報を掲載することにより、幅広い領域の方に参加いただいています。

―「デジマ式plus」はどのようなものでしょうか。

松元

「デジマ式plus」は、地方自治体が抱えるリアルな地域課題に対して、参加企業がその場で解決策のアイデアを考えて発表し、「地域課題解決」と「新規事業創出」を目指すワークショップです。地方自治体の課題を解決するスタイルとすることで、地方自治体から実証フィールドの場の支援をしてもらえますし、地場の企業と一緒に新しいビジネスを立ち上げることも考えられます。ビジネス化を目的とした活動ですので、アイデア出しのためのワークショップを開催したあとの、アイデア具体化のアフターフォローに力を注いでいます。2020年2月に長崎市をテーマとした回では、長崎県や地銀、地元テレビ局、大学まで巻き込んで、長崎全体のチームとしてオープンイノベーションに向けた推進体制を整えることができており、現在3つのアイデアが進行中で、PoC(実証実験)に進むものも出ています。

また、2020年11月には、品川区の共催を得て、区内2つの商店街をテーマに開催しました。これについても長崎市と同様に、アフターフォローを進めていくつかのアイデアの実現を目指しています。

五十嵐

「デジマ式plus」にはもう一つ、参加する大手企業にとって、社会課題に向き合って解決方法を創出するという経験そのものが学びとなる側面があると考えています。そもそも大手企業では様々な制約により新規事業を生み出すことが難しく、DEJIMAでもイントレプレナー育成プログラムなどを用意していますが、アイデアがあってもなかなか事業として展開できません。それが、手触り感ある社会課題解決を検討することで、未来に繋がっていくのではないでしょうか。もちろんまだワークショップは完成形ではなく試行錯誤を重ねており、少しずつ進化させていきたいと考えています。

―「Innovation Space DEJIMA」として、今後の目標をお聞かせください。

五十嵐

「DEJIMA digital」による、リアル空間とバーチャル空間を連携させたイベントの展開は、大きなチャレンジです。もともと当施設の設計・施行を担当された丹青社とのプロジェクトで、CTCはバーチャル空間のプラットフォーム構築を担うとともに、「Innovation Space DEJIMA」のリアル空間でのコミュニティづくりやワークショップ運営等のノウハウを、バーチャル空間において展開。丹青社は空間づくりのノウハウを活かし、バーチャル空間の構築やコミュニケーション価値を向上させるプロデュースでの挑戦となります。これは、コロナ禍で転換期を迎えているイベントスペースやコワーキングスペースの今後を占うチャレンジであり、新しいスタイルでのイノベーション創出に、ぜひつなげたいですね。

また、2020年に品川区とは、区内商店街をテーマとした「デジマ式plus」と、スタートアップ企業の事業成長を支援する「五反田バレーアクセラレーションプログラム」で協力をさせていただき、連携を深めることができました。今後もさらに、地元である五反田バレーの方々との連携などに注力していきたいと考えています。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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