五反田バレーアクセラレーションプログラム
受講生インタビュー

2024.3.11

【五反田バレーアクセラレーションプログラム アルムナイ特集】 コストを気にせずリモート会議を録画、撮りためておくことができるアプリケーションを展開!株式会社 喋ラボの大橋代表にプログラム参加で得られたことや今後の展望を聞いてみた。

米シリコンバレーに約8年間在住し、帰国後は音声認識エンジン関連サービスのスタートアップとして再スタートを切った株式会社 喋ラボ。単なる「AI文字起こしツール」ではない、リモート会議を録画し撮りためておくことができるアプリケーション「喋ラボEditor」を開発し提供しています。

2022年1月には日本スタートアップ支援協会主催のアクセラレーションプログラムに採択され、同ファンドからシード投資を受けることになりました。2023年2月に喋ラボEditorが正式ローンチした後もピボットを続け日々成長を続ける株式会社 喋ラボの代表取締役である大橋 功さんに、起業の経緯や2期生として参加した「五反田バレーアクセラレーションプログラム」で得られたことや、今後の展望などについて聞きました。

(プロフィール)
大橋 功さん

株式会社 喋ラボ
代表取締役

東京大学をドロップアウトした後、受託開発とアドテクのベンチャー企業を創業。その後、同企業を譲渡し、2011年に米シリコンバレーに移住して主にテック系のファウンダーとしてスタートアップ企業に参画する。2018年に日本に戻り、音声認識エンジン関連サービスのスタートアップとして再スタート。現在は米シリコンバレーで得た経験も含め日本の復活に貢献したいと考えながら、喋ラボEditorの開発と運営に注力する。

 

ウェビナー動画の内容も後から効率的に復習をすることができる

 

―まず、御社の事業について教えてください。

大橋 功

2018年に創業したAIスタートアップ企業で「しゃべらぼ」(喋ラボ)と読みます。創業当時は、人が話した言葉を文字にする文字起こしのAIを幅広く誰でも作れるようにするため、データを集めるオープンデータプロジクトからスタートしています。音声認識エンジンを作るためには、ある入力に対し正しい出力パターンについて学習させる必要があります。そのデータセットのことを「アノテーション」と呼んでいますが、そのためのツールを自前で作成していました。そのツールをベースに、動画のテキストを選択することで、簡単に切り張りができるツールとして用意していたものが現在のプロダクトにつながっています。

―「AI文字起こしツール」を開発しようとしていたのでしょうか?

大橋 功

音声認識エンジンを開発していたこともあり「AI文字起こしツール」と言われることがよくあります。
しかし、当社が提供しているサービスは、単なる「AI文字起こしツール」ではありません。
その点で言いますと今後、「AI文字起こしツール」はなくなると考えています。というのも、コンピューターに眼に相当する言語モデルが入ったことで、爆発的にサービスが細分化すると考えるからです。
かつて地球に住む生物には眼がありませんでした。それが約5億4000万年前、生物に眼が発生したことで多種多様な種が爆発的に増えるようになりました。今のAIはそれに相当していると考えています。
人ではなくAIがロジックを理解できるようになることで、文字起こしは当たり前となり、その先のサービスも細分化され爆発的に増えていくわけです。

 

リモート会議やウェビナーの内容がワンクリックでダイジェスト動画に編集

 

―「AI文字起こしツール」ではない、御社が提供しているサービスの内容を教えてください。

大橋 功

当社で提供しているサービスは「喋ラボEditor」と呼んでいますが、大きく分けて3つの機能があります。
1つめは、指示に従って自動実行される「Bot」を使って、ZoomやGoogle Meetなどといったリモート会議の録画が簡単にできる機能です。録画と同時に文字起こしされて要約されるという特徴があります。動画再生時に音とテキスト、それに動画が同期してハイライトされるため、後から見返して「じっくり復習」がしやすくなります。
2つめは議事録的な使い方もできる「サクっと確認」です。記録されたリモート会議の内容を自動的に要点がまとめられ、タスクリストや報告事項となって自動で抽出されるのでサクっと中身を確認できます。それを見つつ、もうちょっと聞きたいと考えたときは動画に対して質問できるようになっています。この「サクっと確認」機能を活用すると、非常に簡単に概要を把握し直せるようになっているということです。
3つめは「クールに共有」という、文字起こしされたテキストを選択してクリックするだけで動画を切り取ることができる機能です。クリック1つで動画の切り抜きやダイジェスト動画ができることで、ウェビナーの要点をまとめるのにも非常に便利です。この機能は日本国内でビジネスモデル特許を取得しています。

―ワンクリックで文字起こしされダイジェスト動画が作成されるのですね。

大橋 功

はい、そのとおりです。Zoomなどのリモート会議を開催されるとき、ホストからリモート会議に参加するためのリンクが送られてくると思います。そこで参加するときにリンクをクリックすると、「喋ラボEditor」の「Bot」が人と同じように会議に参加して、会議が自動的に録画されるようになります。そのリモート会議の内容は瞬時に文字起こしされるのと同時に、3分から5分ぐらいのブロックごとに要約がつけられるようになります。

―じっくり復習がしやすいとはどういうことでしょう。

大橋 功

ウェビナーで説明したいと思います。私は1時間ぐらいのAIセミナーを開催しているのですが、ウェビナーを録画すると「喋ラボEditor」上で音声とテキストがリンクしながら色がついてくるので、内容を復習するのには優れているのです。また、スタートアップの場合、投資家にユーザーインタビューをされることが多いのですが、投資家側から宿題を細かく出されることもあります。そこでインタビュー内容を録画しておけば、投資家からの宿題内容を確認することで、聞き漏らしがないか簡単に確認できるようになります。

また個人的に優れていると思っている点は、「どこでどういう話をしたのか」という録画時刻が返ってくるところです。1時間のウェビナーで質問すると回答が返ってくるだけではなく、例えば、「このウェビナーのこの中でこの内容について話したのはどこだったっけ」とクリックして質問すると、「この内容について話したのここだったよ」ということをしばらくすると回答をしてきます。その時、1時間の中で「どの辺りのブロックで、その話題が出たか」ということも返してくれるので、そこだけを見返せば効率よく復習ができるというようなものになっています。

「五反田バレーアクセラレーションプログラム」の成果はスタートアップの仲間ができたこと

 

―そもそも東京大学をドロップアウトして起業したきっかけを教えてください。

大橋 功

大学をドロップアウトしてどうするのか考えていた時、プログラムを独学で学んで起業をしました。当時はまだインターネットが黎明期で、今のプログラマーの能力からすると非常に低いものがありました。しかし、市場自体が伸びていたために、それでも受託開発やアドテクビジネスの事業を始めてアルバイト含め30名弱の会社にまで成長させました。その会社を売却し米シリコンバレーに移住してからもスタートアップでテック系のファウンダーをしていたのですが、AIが社会に与えるインパクトというかAIの波はインターネットの波と同じがそれ以上に大きいかなと思い、株式会社 喋ラボを起業しました。起業時にはAIの小波が来ている状態でしたが、ChatGPTが2022年に公開されてからAIの大きな波が来ていると感じて今に至っています。

―大橋さんと品川区で活動するきっかけについて聞かせてください。

大橋 功

2018年に日本に帰国してから品川区に住んで、その隣にある「TUNNEL TOKYO」にオフィスをかまえています。TUNNEL TOKYOは多くのスタートアップ企業などが利用しているコワーキングスペースですが、24時間365日使えるのと、空気が澄んだ晴天の日には窓から富士山が見えるところを気に入っています。ですので、ほぼ毎日TUNNEL TOKYOで活動をしています。

―2021年に「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に参加されたのはなぜですか?

大橋 功

1番の参加理由は仲間を作りたいと思ったからです。私は丸8年間、アメリカに住んでいたので、日本での友人や仲間を増やしたいと考えました。プログラムに参加してからは、今でもやり取りをさせていただいている仲間ができましたので、そういった意味では当初の狙い通りかなと思っています。

参加者の多くはスタートアップの起業家でしたので、情報交換ができたのは成果でした。また、プログラムの終盤で、何名か、すでに成功されている先輩経営者の講演を聞く機会があり、それには非常に刺激を受けたのを覚えています。

―そのほか、プログラムで役立ったことはありますか?

大橋 功

もともと私はTUNNEL TOKYOのメンバーでしたのでその利用特典は受けていないのですが、「AWS Activate」によるクレジットは使わせていただきました。AWS(Amazon Web Services)のスタートアップ担当者とはプログラム終了後もやり取りをさせていただいています。

また、プログラムがきっかけで、コグラフ株式会社の森 善隆さんとスタートアップ経営で現れる壁について話をさせていただくこともありました。プログラムに参加していなければ、知り合っていませんでしたので非常に有意義だったと思っています。

私自身、未だチャレンジャー。同じチャレンジャーである皆さんも、1度きりの人生、思いっきりやってみましょう。

―株式会社 喋ラボでは、今後の事業展開はどのように考えていますか?

大橋 功

「喋ラボEditor」を発展させていくという、非常にシンプルな展望です。そのために、これまで私一人で行っていた営業活動に業務委託で営業担当者に入っていただき、その方と一緒に代理店を開拓しています。

「喋ラボEditor」は仕事の生産性を上げるという文脈で開拓を進めていく予定ですが、クリック1つでリモート会議やウェビナーなどの録画の切り抜きやダイジスト版ができることを武器として動画翻訳やコンテンツ編集など様々なユースケースを開拓していきたいと考えています。

たとえば「喋ラボEditor」では、インタビュー動画を半自動でメディア化するということができます。そこで、その機能を使ってメディア事業をスタートしようとも考えています。

仕組みとしては、インタビュー音声を私が開発した別のシステムに取り込むと全てがテキストになります。そこで、そのシステムを使うことによりインタビューを対話形式で文字起こしがされて動画とリンクさせるものがボタンをクリックするだけで完成します。そこでDXのソリューションを持っている企業で担当者がインタビューをして、すぐにメディアになってしまうことを提案しようと思っています。

―最後に、起業を考えている人へアドバイスをお願いします。

大橋 功

私自身が未だチャレンジャーですので、「こうしたら成功できます」というアドバイスははっきりできませんが、動機がなんであれ、新しいことを始めて世の中をかき回そうと思っている起業家は、日本の活性化という意味でも非常にプラスになる存在だと思います。私がチャレンジャーであるのと同様、皆さんもチャレンジャーであるので、メンタル的にも仕事的にもきつい時はあると思いますが、それにめげず、人生は1度きりですから思いっきりやってみましょう。

執筆者

大竹 利実

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