「SHINAGAWAイノベーションフォーラム in 五反田バレー」~ニューノーマル時代の小売・飲食業界のDX戦略、店舗DX事例をたっぷりと紹介
開催日
2021年08月20日
13:00~18:30
会場
オンライン
(EventHubを利用)
参加費
無料
詳細
2017年度より情報通信業の交流・連携の促進に取り組み、新たなビジネスの創出やビジネスチャンスの獲得を目指している品川区。その取り組みの一環として、令和3年8月20日に「SHINAGAWAイノベーションフォーラム in 五反田バレー」をオンライン開催しました。
今回のプログラムでは小売・飲食業界にフォーカスして、特に店舗周辺における取り組みの最新事例を詳細に紹介。配信と並行し、オンラインツールEventHubを通して登壇者との交流も活発に行われた、当日の様子をレポートします。
コロナ禍でダメージの大きい、小売・飲食業界の店舗DXにフォーカス
今回のテーマは「ニューノーマル時代に加速する小売・飲食業界のDX戦略」。新型コロナウイルスの影響により、構造的な変化が避けられない昨今ですが、特に小売・飲食業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)に着目し、最先端のICT/デジタル技術や活用事例を交えたDXの新潮流が紹介されました。当日は13時から18時半まで、大手企業や老舗食堂のリアルな取り組みの紹介やスタートアップによるサービス活用事例が次々と紹介されていきました。
プログラムは、本フォーラムを主催する品川区の久保田地域振興部長の挨拶でスタート。そして、基調講演1として東京大学大学院工学系研究科の森川教授より、ニューノーマル時代のDXへの向き合い方として、ウォルマートの例などを紹介。同社はこの数年、オンラインでの注文品を店舗で受け取るピックアップタワーという、最先端のIT装置への投資を意欲的に展開してきましたが、コロナ禍による来店忌避傾向を受けて戦略を急転換。このタワーの廃止、撤去を進め、新たなテクノロジーへの投資を始めています。このようにクイックな判断および行動がDXには重要だと示されました。
また、基調講演2では中小企業に向けてデジタル活用支援を行うスプラム竹内氏が、国別IT投資競争力で後塵を拝する日本の中でも中小企業、特に小売業では会計管理や販売でのIT活用率が49%に過ぎないという現状を提示。そのうえで、飲食店向けOMOの「Okageシリーズ」やマニュアル作成ツール「Teachme Biz」、テレワークをサポートする「Google Chromeリモートデスクトップ」、自分のビジネス商圏を適切に判断できる「Googleトレンド」など、導入しやすいITツールが活用事例とともに多数紹介されました。
街中の商店にも参考になる! デジタル化が叶えた業務効率化と販路拡大例
続く、大手企業のDX取り組み事例では、まず『ローソン』よりレジレス実験店舗Lawson Goの実験経緯やそこで使われた技術について、さらに、「レジ待ちのない購買体験」と「省人化営業と機会ロス削減」という価値の追求、今後の展開について詳細に紹介。
『良品計画』からは、創業時から「消費社会へのアンチテーゼ」、「最良の生活者を探究」がミッションであり、現在、店舗と並んで最も重要なコミュニケーションチャネルと目する「MUJI passport」をどのように改良してきたか紹介。また、店舗の土着化や、ESG/環境を意識してリリースした「水アプリ」、家具などの月額定額サービスといった最新の取り組みも紹介されました。
さらに、古くから街中にあった店舗によるDX取り組み事例として、伊勢の老舗食堂『ゑびや』が実現した店舗オペレーションのデジタル化を紹介。2012年には食券とそろばんで集計していたのを、エクセル、POSレジを経て、2016年にはAIを導入して機械学習による来客予測から、食材仕入れや従業員のシフト組みを効率化。こうしたDXによるオペレーション支援を、別会社の『EBILAB』で30以上の地方自治体や200社以上の中小企業に提供していることが伝えられました。
もう一つの事例が、1937年創業で現在は浅草・合羽橋に本店を構える海苔専門店『ぬま田海苔』が手がけてきた、他業界とのコラボによる新商品開発や越境ECも見据えたネットショッピング体制の取り組みです。日頃はnoteで情報発信をされているという沼田社長から、shopifyやSquareといったツールやSNSの実践的な活用法がメリットとともに伝えられました。
スタートアップ4社より、接客・販売・マーケティング支援サービスを紹介
その後は、アパレルを中心にチャットボットなどによるオンライン接客サービス支援を行う『空色』、小売・飲食業から建設・不動産・製造業などで活用が広がるクラウド録画サービスの『セーフィー』、店舗でのサブスクリプション導入で会員延べ7万人以上もの実績を持つ『favy』、電源やアプリ不要でスタンプラリーやポイントカード、チケットとして使えるデジタルスタンプを提供する『エム・フィールド』という4社のスタートアップ企業から、それぞれのサービスおよび事例が紹介されました。特にエム・フィールドでは、2020年11月に開催されたワークショップ「デジマ式plus」で品川区商店街連合会に提案された内容をもとに、既存のキャンペーンシステム「品川区通行手形」のモバイル化に取り組んでいることも伝えられました。
プログラムの最後を締めくくったのは、一般社団法人五反田バレー代表理事の中村氏。会員企業や品川区と連携して、商店街や地元店舗のDX推進につながるような取り組みを五反田バレーでも推進しており、現場の危機感もあってむしろ新たなチャレンジを行いやすい状況だと実感しているとのこと。今回紹介した数多の事例から参考になるものを調べてみたり、五反田バレーに相談や品川区の支援制度を当たってみるなど、ぜひ次のアクションにつなげてほしいというメッセージが語られ、幕となりました。
当日のプログラムは以下となります。一部の講演につきましては視聴いただけますので、詳しくは、(URL)をご参照ください。(準備中)
主催者挨拶
品川区地域振興部長 久保田 善行
01 基調講演1 (50分)
東京大学大学院工学系研究科 森川 博之 教授
『ニューノーマル時代のDXへの向き合い方』
COVID-19により社会・世界観の変化が生じつつある中、デジタルシフトが加速しつつあります。企業の経営戦略の中にもデジタルを取り入れ、新たな価値の創出につなげていかねばなりません。関わる人やモノすべてに共感し、つないで巻き込むカスタマーサクセス人材も事業開発において重要となります。「土俵にあがる」「気づきにつながる多様性」「パイを奪い合うのではなくパイを広げる」などといった視点の大切さを伝えます。
02 基調講演2 (30分)
株式会社スプラム 代表取締役/中小企業診断士 竹内 幸次 氏
『小売・飲食業界のIT化の現状と身近なDXの活用事例』
コロナ禍で大きく変化した小売業界と飲食業界。一方で世界的に進行するDX(デジタルトランスフォーメーション)。日本のIT活用、DXの現状と、企業のDX挑戦事例を分かりやすく説明します。
03 DX取り組み事例1 (30分)
株式会社ローソン マーケティング戦略本部 兼 オープン・イノベーションセンター アシスタントマネジャー 佐藤 正隆 氏
『レジなし店舗「Lawson Go」の取り組み』
ローソン オープン・イノベーションセンターでは、最新技術を活用して、省人効率化、新しい買い物体験の提供を目指し、さまざまな実験や新規事業の立ち上げを行っています。今回は2020年にオープンしたレジなし店舗「Lawson Go」の取り組みを中心に、ローソンが目指すイノベーションの方向性について紹介します。
04 DX取り組み事例2 (30分)
株式会社 良品計画 EC事業部 部付部長 山内 智裕 氏
『生活者の「役に立つ」ために「MUJI passport」が目指すコト』
無印良品は、「感じ良い暮らしと社会」の実現に「役立つ」ことを目指し、その中でMUJI passportはお客様と店舗とオンラインを密接にシームレスにつなげていくコミュニケーションツールとして進化してきました。ニューノーマルの時代における、無印良品が目指す温かみや手触り感をもったデジタル化の方向性について紹介します。
05 DX取り組み事例3 (30分)
有限会社ゑびや 代表取締役社長/株式会社EBILAB 代表取締役 小田島 春樹 氏
『老舗企業は変革し続ける 伊勢の地から変革する理由 & データを活用したコロナ禍での私達の取り組み』
伊勢の老舗食堂『ゑびや』はほんの数年前はそろばんを弾いて経営する昔ながらの食堂でした。それが数年前にデジタルシフトに成功。どのようなステップで必要な技術を取り入れチーム組成をし“データをもとに考える経営”を成し遂げたのか、従業員を増やさず売上5倍利益10倍を実現した背景と、withコロナでのニューノーマルに対応した経営術、明日からでも簡単に始められるデータ活用法を紹介します。
06 DX取り組み事例4 (25分)
株式会社NUMATA HARUO SHOTEN 4代目当主 沼田 晶一朗 氏
『商店街の海苔屋がECビジネスを+30%させたDX戦略とは?』
商店街の海苔屋がコロナでピンチに。店舗売り上げに依存したビジネスモデルからどうやって脱却し、ECの売り上げを上げていったのか? EC売上を昨年対比+30%につなげた3つのDX戦略を中心に紹介します。
《ECで売れるオリジナル製品の開発》《オンラインチャットによるサービス力向上》
《Square決済で海外売上のシェア拡大(越境ECの第一歩に)》
07 スタートアップのサービス紹介1 (20分)
株式会社 空色 取締役 CSO兼CFO 瀧 直人 氏
『売上に差をつける”接客のDX”チャットサービス「WhatYa」』
デジタルシフトが加速し、ECサイトもあふれるなかCX(顧客体験)の差別化として“接客DX”チャットサービスが注目されています。空色の提供するチャットサービス「WhatYa」(ワチャ)は単なるカスタマーサポートの効率化で終わらせずファン化、売上をあげるためパーソナライズされた接客体験を実現しています。今回は実際の導入企業の事例を交えながら、効果的な活用について紹介します。
08 スタートアップのサービス紹介2 (20分)
セーフィー株式会社 マーケティング部 副部長 瀧山 博之 氏
『映像データの活用でDX実現、小売・飲食業界での成功例をご紹介』
防犯カメラだと思っていたデバイスがDXのキーツールに! 映像データを活用し段階を踏みながらの「失敗しないDX」実例を紹介します。人手不足対策や、業務の効率化、オペレーション改善など、さまざまな切り口のソリューションを体感ください。あらゆる店舗現場をDXしてきた弊社のナレッジを余すことなくお伝えします。
09 スタートアップのサービス紹介3 (20分)
株式会社favy サブスク事業責任者 久野 慶太 氏
『サブスクを活用した店舗DXと最新事例について』
コロナ禍での新しい生活様式により店舗の役割が変化している中で、店舗DXの取り組みとして「サブスク」を活用する企業や店舗が増えています。収益性の改善だけでなく、サブスクによる顧客管理、データ分析、コミュニティ強化など、企業や店舗によって幅広い活用目的があります。2,500店舗以上の店舗でサブスクを展開してきたfavyがその可能性と最新事例を紹介します。
10 スタートアップのサービス紹介(20分)
株式会社エム・フィールド 営業統括本部 プロダクト&サービス営業部 岸崎 比佐良 氏
『コロナ禍でのデジタルスタンプを活用した集客施策と行動分析』
株式会社エム・フィールドでは「スマホに押せるスタンプサービス」HiTAP®により、デジタルスタンプを活用した集客サービスや回遊サービスを提供しています。新型コロナウイルスの影響で、店舗や施設でのリアルの集客施策が打ちづらい状況においても集客に成功している企業の事例と、デジタルスタンプを用いた行動分析手法について、また、品川区商店街連合会様との取り組みについて紹介します。
11 閉会の挨拶/五反田バレーの取り組み紹介
一般社団法人五反田バレー
主催:品川区
共催:一般社団法人五反田バレー
運営:株式会社キャンパスクリエイト(電気通信大学TLO)