【イベントレポート】起業家のマインドセットを熱く伝授!「五反田バレーアクセラレーションプログラム 研修① スタートアップを立ち上げて世界を変えていこう」
開催日
2023年09月28日
会場
TUNNEL TOKYO
参加費
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詳細
スタートアップの集積地としての「五反田バレー」の認知度アップや地域活力の向上、区内産業全体の活性化を図るため、品川区が2020年より実施している「五反田バレーアクセラレーションプログラム」。今年度は株式会社ゼロワンブースター(以下、01Booster)のプロデュースにより2023年3月までの約6ヵ月間プログラムが行われます。今回は、2023年9月28日に開催された「研修① スタートアップを立ち上げて世界を変えていこう」の様子を紹介します。
毎研修ごとに実施のグループメンタリングで、仲間づくりを推進
今回の会場は、アクセラレーションプログラムの連携パートナーの1つであるセガサミーホールディングス株式会社が大崎で運営する、オープンイノベーション施設「TUNNEL TOKYO」。アクセラレーションプログラム参加者には、このコワーキングスペースのフリーデスク6ヵ月無償利用が特典として提供されているため、研修時間の一部を利用してフロア見学も行われました。
プログラムは、グループメンタリング・講演・交流会の3部構成で行われました。
グループメンタリングは本プログラムの特徴で、毎回の研修で受講者が3~4人のグループに分かれて近況を共有しながら、現在の事業や組織の課題について互いに意見を交わします。共有する項目としては、仕事と個人それぞれにおいて、過去1ヵ月で良かったこと・嬉しかったこと・困難だったこと、今後1ヵ月で期待すること・不安なことをベースにします。
起業してスケールや資金調達を目指す受講者同士がこのグループメンタリングを繰り返していくことで、同様のフェーズでどんな困難があるのか、またそれをどう乗り越えていけるのかを一緒に考えられる「仲間」ができることが期待されます。実際、各グループで活発な意見交換がなされ、互いに刺激を得られている様子が見受けられました。
12社のベンチャー経験に裏打ちされた、起業家のマインドセットを伝授
休憩後に、01Booster代表取締役の合田ジョージ氏が登壇。合田氏自身が、大手メーカーとベンチャー企業での勤務を経て01Boosterを起業しており、特にベンチャーについては計12社の立ち上げまたは関与に携わって、急激なスケールを体感されています。
現在は01Boosterにて事業創造アクセラレーターをアジアで展開中。本講演では、スタートアップを立ち上げる起業家のマインドセットに関して、「行動すること」「前向きな考え方」「人のつながり」の3つが必要だとして、さまざまなトピックが熱く語られました。
・ドラマや映画の脚本ではゴール設定が重要で、そこに向けて過程を作っていく。起業においても同様で、大目標をなるべく早く宣言すべき。将来的に達成したい大きな夢、いわゆる「白い嘘」を掲げよう。
・起業家、CEOの苦労は続く。答えのないなかで意思決定を行わねばならず、成長し続けられるかは不安。人を採用しても大量離職されてしまったり、ビジョンや行動指針を打ち立てても、創業者と従業員、部門の正義が異なったりと、経営はカオスの連続。だから、利害関係なく相談できる相手がいることが大事なので、本プログラムで仲間を作ってほしい。
・成功は誰にでも可能。才能と運の、どちらか成功に大切かという議論があるが、統計的には才能のレベルが中間より少し上の層は成果が高く、才能はあまり関係ないといえる。年齢も若い方がよいとは一概に言えず、B to B事業ではキャリア経験が生きるし、急成長を果たした創業者の平均年齢は42歳というデータもある。才能や年齢は関係なく、成功に必要なのは「行動」「前向きな考え方」「仲間」である。
・そして成功するには、失敗から学ぶべき。スタートアップでは10個程度の施策で1個が当たり、スケールするもの。失敗をどう活かすかを考えることが大事。そのときに、グロースマインドセットの人のほうが起業家には向いている。失敗を振り返り、人からのフィードバックから学べ、チャレンジにワクワクできるようなタイプなので、0→1フェーズではこのタイプで組織を固めるとよい。その反対のフィックスドマインドセットの人は、グロースして、オペレーションを構築していくフェーズには必要になる。
・「ウサギとカメ」の寓話で、能力の高いウサギがカメに負けたのは、カメに勝つことを目標にしていたので勝ったと思った瞬間に競争を止めてしまったから。一方、カメが勝てたのは競争ではなく、ゴールに行くこと自体が目的だったからだといえる。また、PayPal創業者ピーター・ティールは「競争せず独占せよ」と言ったが、それは競争自体に気を取られると、本当に意味あるものを見失うと考えたから。そのように、競争も時には必要だが、それよりは自分は何がしたいのか、大目標を意識していくべき。
・自分は何がしたいのかを考えるうえで役立つ、フレームワークを紹介。自分が好きなこと、得意なこと、稼げること、社会が必要とすることを考え、この4つを全て満たすものが生き甲斐。事業を行っていくと4つのどれかが欠けたり、偏ったりしやすいので、ときどき確認するとよい。
・スタートアップが急成長を行っていくには、効率化しながら非効率な新しいことを始めることが必要。0を1にして効率化すると落ち着きがちだが、上場を目指すなら0→1をどんどん積み上げ、さまざまなビジネス展開を次々と繰り広げていく必要がある。創業者はグロースマインドセットで安定を打ち砕き、新しいことを次々と始めていってほしい。
・事業を進めていくと、富(事業価値)とコントロールで悩むことが出てくるもの。前者は、自分は会社のパーツなので良いCEOがいればいつでも代われる。後者は、自分が創った会社は子どものようでコントロールしたいと思う。良し悪しはないが、急成長を目指すスタートアップには前者の考えがフィットする。また、エクイティによる資金調達は、コントロールを手放すことになる。どちらを重視するかは創業者自身あるいは共同創業者間でよく考えておくこと。
・人類は破壊により平等化を果たしてきた。破壊とは、戦争・革命・国家や体制の崩壊・パンデミックによりもたらされるが、今はまさにパンデミック後というタイミング。多くの人にとって、起業・グロースするには絶好の、おそらく最後のチャンスといえる。日本そして世界市場を見据えてチャレンジしてほしい。
こうしたトピックの合間には、「自分の成し遂げたいこと」「現在までで辛かったこと」「人生最大の失敗は何か」などについて、周りの受講者と1~2分で意見のシェアが行われました。これにより、トピックを自分ごととして考え、相手の意見を聞き、自身の意見を伝えようという雰囲気が自ずと醸成されていたようです。
講演は質疑応答で締めくくられ、その後は有志で交流会へ。にぎやかに会話が弾むなか、合田氏も引っ張りだこで、受講者の疑問や相談に丁寧に応える様子が見受けられました。
執筆者
取材ライター
久保田 かおる
インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。