【イベントレポート】本音トークで、シード/アーリー期起業家がネットワーキング「五反田バレーアクセラレーションプログラム OB×受講者交流会」

イベントレポート 2023.12.27

【イベントレポート】本音トークで、シード/アーリー期起業家がネットワーキング「五反田バレーアクセラレーションプログラム OB×受講者交流会」

開催日

2023年11月16日

会場

品川産業交流支援施設SHIP 多目的ルーム

参加費

詳細

2023年9月から2024年3月までの約6ヵ月間、開催中の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」は今年で4期目。これまでに52の起業家が修了し、それぞれに事業拡大されています。その交流を推進し、スタートアップコミニュティを醸成するために、過去にプログラムに参加したOB起業家と今期の受講者との交流イベントが企画されました。2023年11月16日に品川産業交流支援施設SHIPの多目的ルームで開催された「OB×受講者交流会」の様子を紹介します。

 

3期52社のOB・OGと今期受講者の有志が、少人数で濃く交流

会の冒頭に、品川区商業・ものづくり課の小林徹課長からの主催者挨拶で、2020年に始まった「五反田バレーアクセラレーションプログラム」は1年単位のプログラムだが、それで終わりにせず、起業家同士のネットワーク形成を支援していくので、1人1人の参加企業の皆さんの財産にしてほしいという話がありました。

次いで、司会進行を務める西大井創業支援センター(PORT2401)の野田賀一センター長から、自身が前職でオフィスコンサルとしてベンチャー支援を通じ、困りごとを互いに解決していこうといった仲間意識や横のつながりの良さを強く感じたこと。

そのなかで、今回は参加者同士の濃いコミュニケーションができそうで楽しみだという挨拶がありました。

そして、参加者である今期の受講者およびOB4名が順に自己紹介を1人ずつ行っていきました。それぞれ取り組んでいる事業の概要や最近のトピックを話し、OBからはプログラム修了後の事業の進捗や苦労にも軽く触れられ、この後の発表に期待がふくらみます。全体的に、交流が目的ということで、趣味や最近ハマッていることなども交え、互いの人柄が伝わる内容でした。

 

OBピッチ① 創業直後のコロナ禍でピボット、事業化にプログラムを活用

その後は、OBが1人ずつ登壇し、取組紹介と質疑応答が各20分ほど行われました。

最初のOBは、株式会社Mimmy(ミミー)代表取締役CEOの守屋亮さん(2020年1期)。Zoomを使った「子ども×世界の面白い人」のライブコミュニケーションプラットフォーム「Mimmyアドベンチャー」の運営などを行っています。2019年に創業後、コロナ禍となりピボットを考える中、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に参加して、現在の事業につながったそう。実際に日本の小学校とマレーシアやシンガポールをつないで行ったライブの映像も披露しながら、来年は売上1億円が期待され、5年後の上場を目指したいとの発表でした。

質疑応答では、「ライブをやる海外の大人はどう見つけているのか、その契約や報酬支払いはどのようにやっているのか」「やりがいがあるし、子どもたちも楽しそうだが、マネタイズはどう工夫しているのか」などの質問がありました。海外の大人は、インスタなどで目に付いた人にメッセージを送って交渉しており、契約は外国人社員が担当。送金はオンライン海外送金サービスのWiseだと、5万円程度の送金手数料が約100円で手頃だとのこと。ビジネス面は、高校のOBから教育委員会の方を紹介された縁で小平市の公立小学校で導入されているのと、一方で一般向けサービスは料金設定含め、現在、提供のし方を検討中ということでした。

 

OBピッチ② 現在も行政主催の事業などに参加し、海外進出への布石を

2人目のOBは、FutuRocket(フューチャーロケット)株式会社 Ceo & Founderの美谷広海さん(2021年2期)。設置した室内・店内の利用人数を計測できるエッジAIカメラ「ManaCam(マナカム)」を、過去の動向を確認できるWebサービスとセットで提供しており、1台1万円と手頃な価格、かつ工事不要で設置できるスタイルが特徴です。この価格設定は、導入しやすいよう決済の容易な金額にしたのと、将来新興国市場へ輸出する際の関税負担が少ないこと、EMS(国際スピード郵便)でも補償内で送付しやすいなどの理由で決めたとのこと。

実際、大手企業のオフィス利用を中心に数十台規模での導入事例が多数出ており、クラウド型のセキュリティカメラよりも機能がシンプルなことで、独自の市場が取れているといいます。

また、新たに害虫検知や笑顔検知などについても試作を進めていたり、行政主催の新興国への進出事業に複数採択されるなど、活躍ぶりが紹介されました。

質疑応答では、「店舗なら交換できるが、スマートファクトリーなどの場合、電源はどうするのか」という質問に対し、現在は電球ソケットやライティングレール、USBケーブル経由の給電だが、屋外利用ニーズもあるので、ソーラーパネルの活用も模索したいとのこと。

さらに、「エッジ側に画像データを残さないとのことだが、アップデートはどう行うのか」に対しては、機能とコストのバランスは難しく、たしかにデータ学習させるにはエッジ側からデータをどんどん送信すればよいが、運用コストを抑えるために、あえて通信はしていない。学習用データの取得専用の端末をどこかに設置してアップデートはそれをもとに行い、各端末は2年くらいで交換するイメージとのことでした。

 

OBピッチ③ プログラム参加中にピボット。その後できたβ版でニーズを開拓

3人目のOB、株式会社喋ラボ 代表取締役の大橋功さん(2021年2期)は、「AI×動画」によるDXがコンセプト。リモート会議やウェビナーなどの動画を音声認識などで処理して、いろいろ役立てることを考えています。プロダクトアウトで無料試用を通してユースケースを広げ、多様な可能性の中から会議DXをマネタイズ。Zoomなどのリモート会議で、bot録画・文字起こし・要約機能で内容をじっくり振り返ったり、要点の自動生成・質問でサクッと確認したり、文字起こしテキストを選択してダイジェスト動画作成などが可能。SaaSの月額モデルで提供し、営業はパートナー代理店に委託とのこと。

事業の進捗については、プログラム参加中にピボットしたため、3月のDemoDayではプロトタイプの状態。8月にβ版ができ、ユースケース開拓とフィードバック取得を目的に約20社の試用を経て最近、上場企業などに有料で導入が始まったそう。

反省点は、マネタイズできる対象を早く見極めて動くべきだったこと。周りのエンジニアやスタートアップは、AIには感度が高くフィードバックはもらえるが、生産性向上に価値を感じてくれるのは一定規模の企業のみ。中小企業では費用対効果を厳しく求められ、DXというキーワードだけでは弱いそうです。

最後に、起業して2年も経つと、競争優位性に突然自信がなくなり、頭が真っ白になったりするが、落ち込みそうなときは価値を感じてくれる人とだけ話をするといい、とアドバイス。その後の質疑応答では、学会やコンサル業界など、活用シーンが提案されたりしました。


OBピッチ④ スケールのため、オープンなイベントページ版を開発中

4人目のOB、ニジュウニ株式会社 代表取締役の安川尚宏さん(2021年2期)の事業は、同僚や友人とグループで注文できる送料無料のフードデリバリーシステム「ぼくデリ」。近年の生活スタイルで友だちを作ることができないのを社会課題ととらえ、コミュニケーションツールとしてご飯をみんなで食べることをサービスとしています。

もともとはLINEグループを作って注文するクローズドな仕組みでしたが、よりスケールさせるため、現在Peatix×Uberのようなスタイルで、イベントページのURLをシェアして拡散・周知できるオープンなシステムを開発中。すでに活用事例として、コワーキングスペースでのコミュニティ活性化や、起業家のビジネス紹介&仲間集めで好評だそう。ビジネスモデルとして、ユーザーインタビュー、営業・採用活動など、企業向けに機能追加や料金設定を検討中とのことです。

質疑応答では、コワーキングスペースでの利用が共感を集め、さらに各人の体験から活用シーンのアイデアがいくつも出て、工場勤務でいつも社員食堂だとか、人事部による社員交流の推進、ファンミーティング、YouTuber応援などで話が盛り上がりました。


今期受講者の飛び入りプレゼンで、場がさらに熱を帯びた

ここで、司会進行の野田センター長が突然、今期受講者に呼びかけて、急遽1名がピッチを行うことに。「では、昨日の商談でプレゼンしたことを話します」との言葉に、全員から拍手が起こります。

内容は、離職防止のコミュニケーションツール事業で、10月の研修の際のグループメンタリングピッチで登壇したものですが、商談した内容だけに、ツールとしての使い勝手や導入のしやすさ、メリットが、心理的安全性などの興味を引くキーワードとともに、コンパクトにまとめられていました。

質疑応答で、ターゲットの業界を聞かれると、飲食チェーンでSVが臨店するが本部からは現場が見えにくい業態や、受託開発会社のエンジニア組織は相性が良いと感じているとのこと。

そこで、学校など教育現場で生徒・学生向けといったアイデアも出ました。

また、「やりがい・ストレスの2軸で従業員の状態を見える化しているが、他の要素はないか」という質問には、エンゲージメントなどもあるが、現場のマネージャーにとっての分かりやすさで2つにしたそう。当初いろいろ考えたがレーダーチャートでは分かりづらいと悩んだときに、AmazonのFire TV Stickのシンプルさを見て、ボタンの多いリモコンではなくコレでいいと思ったといいます。

こんな風に、各人が事業化やスケールに奮闘している状況がリアルに伝わり、質疑応答でアイデアや議論が深められたのに続いて、交流会となりました。品川区の職員も加わって、OB・受講者らが親交を深め、誰もが新たな刺激を得られた場となったようです。冒頭の野田センター長の言葉のとおり、とても濃いコミュニケーションとなっていました。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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