【イベントレポート】「SHINAGAWAイノベーションフォーラム2024 in 五反田バレー~Web3が実現する豊かなデジタル社会」 ブロックチェーン、NFT、DAO、メタバースの事例を多数紹介

開催日
2024年12月6日(金)
会場
大崎ブライトコアホール
参加費
無料
詳細
品川区が、情報通信業の交流・連携の促進により新規ビジネスの創出やビジネスチャンスの獲得を目的として毎年開催している「SHINAGAWAイノベーションフォーラム」。第10回目となる今回は、2030年には世界市場規模が815億米ドルにも達するといわれる「Web3」をテーマに行われました。2024年12月6日に開催された、その講演や展示・相談会の様子をレポートします。
国の政策や世界の動向から、Web3の現状や未来図を確認
今回は、「Web3が実現する豊かなデジタル社会」をテーマに、分散型技術によりデータの所有権とプライバシーを強化し、新たな経済圏を形成する革新的なエコシステムである「Web3」が社会へ与えるインパクトや、創出される価値、取り組み事例を多数紹介。会場となった、品川区が運営するSHIP品川産業支援交流施設の大崎ブライトコアホールには多くの聴衆が集まりました。
プログラムは、本フォーラムを主催する品川区の地域産業振興課 小林課長の挨拶で開幕。そして、基調講演1として東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授が「Web3を支えるブロックチェーン技術とその進展」と題して登壇。改ざんされない記録を残すことができ、皆がそれを確認することができるというブロックチェーンの特徴を紹介されました。これにより経済やビジネスの環境が大きく変化し、コンテンツ取引のあり方などの新しいビジネスチャンスが現れるのだといいます。より本質的な革新をブロックチェーンが持ち得るのは、契約がプログラムに基づき自動的に実行される「スマートコントラクト」が実装された時であるとのこと。そこに向け、デジタル庁で行われたWeb3.0研究会ではNFTやDAO、メタバースについて活発な議論や提言が行われ、政策関係者の間で話題になったことなどが紹介されました。
次いで基調講演2として、ブロックチェーンAstar Networkを開発・運用するStartale社 Head of Global Business Developmentの佃龍暁氏が「Web3が社会に与えるインパクト―企業として活用するために知っておくべきこと」と題して登壇。2024年11月は法整備や政治の観点でWeb3の大きな過渡期を迎えた年でありアメリカにおいてETF(ビットコイン)の現物オプションが投資で解禁された結果、機関投資家などが暗号資産に流れ始めているとのことでした。さらに、トランプ新大統領が暗号資産に関わる法整備や規制緩和を打ち出しており、アメリカからWeb3市場の大きな変化が見込まれます。一方で、Web3はここ数年でガートナーのハイプサイクルでいう幻滅期に入り、現実的な期待感のもとで技術が成熟しつつあると伝えられました。それによりユーザー体験の向上が起き、大衆が使用・参加する、実利を伴うサービス・製品の創出が加速すると予測されるとの見解を示されました。その具体例がいくつか示され、最後に官民一体によるユースケース創出や、既存産業とWeb3産業の連携が提言されました。
大手企業・スタートアップによるWeb3活用の最前線を紹介
続いて、企業によるweb3活用の取り組みが紹介されます。まず、NTT Digitalが、同社のデジタルウォレットサービス「scramberry WALLET」「scramberry WALLET SUITE」を紹介。地方のイベント事例では、公式アプリにデジタルステッカー(=NFT)の仕組みを取り入れ、ファンコミュニティの活性化に向けたトライアルを実施。アプリ内にウォレットを組み込むことにより、ユーザーはウォレット作成の手間なくNFTを受け取ることができるようになっており、シームレスな体験が特徴として挙げられました。参加者の16%がNFTを受け取ったといい、NTT Digitalの提供するデジタルウォレットの利便性の良さが見受けられます。シンガポールで行われた売掛金トークン化のユースケース創出に向けたトライアルでは、通常最大90日かかる回収期間の短縮の可能性を探りました。さらに、ブロックチェーンを活用した円滑な企業連携の可能性を探求する共創プロジェクトとして、「web3 Jam」が紹介されました。
次いでサンリオが登壇。個人発のコンテンツやIPなどをUGX (User Generated X)と総称して支援していることが紹介されました。イラストレーターや声優、VTuberらと自社キャラクターとのコラボの場を提供して関係人口を増やしていくとの展望が示されました。メタバース事業では世界最大級のVRメタバースイベント「Sanrio Virtual Festival」を2021年から開催。2024年は2月から3月に開催し、期間中ののべ来場アクセス数は438万。8割が海外からで、近々通年オープン化を予定。2025年も2月・3月に開催とのこと。UGX支援事業では、ガイドラインのもとn次創作ができるイラスト投稿サイト「Charaforio」を運営。ファンコミュニティ事業では、ライセンス事業にNFT要素を組み入れた仕組みづくりを目指すとのことでした。
その後も、スタートアップも含めた、Web3技術を活用する企業4社の登壇が続きます。1社目のフィナンシェからは、同社のトークンコミュニティを通して企業やクリエイターがコミュニティを活性化していること、2023年に暗号資産を用いた資金調達IEOを実施して得たノウハウによりIEOコンサルを提供していることが紹介されました。
2社目のガイアックスは、DAO(自立分散型組織)を使った地方創生と空家活用の事例を紹介。前者では加盟3町村のデジタル村民が地域資源NFTとして体験やサービスを企画・販売することで都市部在住者も地域貢献が可能になるといいます。後者では都内の空家をDAO型シェアハウスにして、管理コストを3割減、裁量ある運営で自己実現などの成果を出したとのことでした。
3社目のUPBONDは、DID/VC技術によりユーザー自身が個人情報を管理するログイン基盤「Login3.0」を提供。このユースケースとして、建設現場で職人同士が相互評価してモチベーション向上・現場活性化を実現しており、ホテルでの事前チェックインサービスにより、フロントの作業時間が短縮できた事例を紹介しました。
4社目のインバースは、「五反田バレーアクセラレーションプログラム2024」の採択スタートアップ。同社が提供する検証可能データベース「Dxhyve」は、機能を絞ったことで、最短2週間で導入でき、1NFTあたり5円と安価で発行。ラグジュアリー業界の真贋判定や、デジタルアートの原本性保証などの事例があると、紹介されました。もう1つ、ワークフローで使っている本人確認のID・パスワードを一元化できる、メールアカウントを用いた電子署名「BeeSig」が紹介され、自社サービスの事例を通じて法人ビジネスにおけるブロックチェーンが生み出す付加価値について示されました。
以上の講演・事例紹介と並行して、ホワイエでは登壇企業によるサービス展示・相談会が行われました。名刺交換とともに資料や詳しい説明を求める様子が多く見られ、Web3をビジネスに生かしたいという意欲が大いに感じられました。