【イベントレポート】大手企業とスタートアップの対話から共創の可能性を模索!Shinagawa Startup Spark#3「教育・子育て×スタートアップの共創」
開催日
2025年08月19日
17:00~19:00
会場
品川産業支援交流施設 SHIP
(東京都品川区北品川5-5-15 大崎ブライトコア 4階)
参加費
無料
詳細
品川区では2024年10月より、大手企業とスタートアップが対話を通じてオープンイノベーションを目指すイベント「Shinagawa Startup Spark」を開催しています。3回目となる今回は「教育・子育て×スタートアップの共創」と題してシーズ提供企業3社が登壇しました。今回はまずシーズ提供企業が登壇。どのような分野で協業可能なのかプレゼンテーションを実施しました。後半には、スタートアップと登壇企業がテーブル上で輪をなして、どのような側面で共創できるのかなどの対話がなされました。教育や子育てに関する事業を展開している、さまざまなバックグラウンドを持つスタートアップ14社が集結したイベントの模様をご紹介します。
3つの品川区“らしさ”×スタートアップが生み出すシナジーに期待
品川区には約400社ものスタートアップがあり、その中の約60%が五反田・大崎・品川エリアに集積しているのが強み。その強みを加速させる取り組みとして、「品川スタートアップ・エコシステム」が2024年8月に立ち上がりました。
本エコシステムは「日本で最もチャレンジを応援するまち」を目指して、スタートアップをはじめ、企業、金融機関、資金提供を通じて支援するベンチャーキャピタル(VC)・コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、地域・商店街などさまざまな主体が参画。多様な関係者を巻き込みながら相互に交流し、事業成長を促進しています。
本イベントの会場となった「品川産業支援交流施設SHIP」もその取り組みのひとつ。イベントホールやオフィス、オープンラウンジを備え、国内外から集まったクリエイターやスタートアップなどが交流する場となっています。施設の入口には、今年5月にリニューアルした3Dプリンターが使える工房も備え、ITからものづくりまで、分野を問わず企業が集まり、互いに刺激を与え合っています。

そんなSHIPでの共創イベントでオープニングを飾ったのは、品川区の創業スタートアップ支援担当課長を務める栗原氏。品川区の3つの柱について語りました。一つ目は、「ものづくり」。京浜工業地帯発祥の地といわれるこの地には100年以上続く中小企業も多いといいます。二つ目は、「商業・サービス」。品川といえばオフィスが立ち並ぶイメージを持たれることも多いですが、戸越銀座商店街や武蔵小山商店街をはじめ、100もの商店街があります。そして三つ目は、本イベントのテーマでもある「教育・子育て」。他の区に先駆けて小中一貫校を導入したり、森澤恭子区長が子育て支援策を積極的に推進していたりなど、子育て・教育に力を入れています。「品川区の3つの柱と、スタートアップの皆さまの事業をかけ合わせてシナジーを生み出していきたい」と熱意を示しました。
【株式会社学研ホールディングス】ターゲットを拡張して描く、学研が挑む新教育戦略

はじめに登壇したのは、株式会社学研ホールディングスの濱野氏。「学研」といえば、「学研教室」などの学習教室や「最強王図鑑」といった子ども向けの出版物をイメージする方が多いのではないでしょうか。実は現在、売上高の約半分を医療福祉分野が占めており、子どもだけでなく幅広い世代へサービスを提供しています。

「これまでスタートアップの方と協業し、事業成長のために関係性を築いてきました」と濱野氏。CVCを組成してからまだ歴史は浅いですが、今までにAIやVR領域で事業を展開する5つの会社へ出資をしました。今年10月を節目に刷新する中期経営計画では、少子化問題を踏まえて自社の強みを生かしながらターゲットを大胆に広げ、リスキリングなどの大人向けや、海外の教育分野に注力していくと語ります。「子どもから大人、さらにはグローバルまで、幅広い接点・視点でスタートアップの皆さまと共創していきたい」と意欲を示しました。
【株式会社NOLTYプランナーズ】手帳は「自己成長のパートナー」へ。NOLTYが描く教育の未来

企業と学校向けの手帳を提供する株式会社NOLTYプランナーズからは、代表の細野氏と平田氏が登壇しました。1949年に日本初の「時間目盛り入り手帳」として、ビジネス向けの「能率手帳」をリリース。今後は成長を願うすべての人々に寄り添い、応援することを願って、2013年に「NOLTY」へと名称を変えました。
現在力を入れているのが、手帳を使った学校向け教育プログラム「NOLTYスコラ」。手帳を通じて、入試や部活などの目標達成からキャリアデザインまでサポートする仕組みを提供し、実際に約25万人の生徒に使われています。

「今後は生涯にわたって手帳を使ってもらえるような関係性をユーザーと築きたい」と語る細野氏。未だ手帳の価値は予定管理などの固定観念に縛られていますが、自己理解やメタ認知など、活用の幅が広がる可能性を秘めています。最後に「参加者の皆さまと、Win -Winになるような手帳の付加価値を創っていきたい」と締めくくりました。
【さくらインターネット株式会社】日本のAI市場を支援!国産GPUサービスの普及に挑む

レンタルサーバーからデータセンターまで、インターネットインフラサービスを幅広く提供するさくらインターネット株式会社。最近はとくにAI領域に力を入れていると、登壇者の由井氏はいいます。AI領域は海外市場が席巻し、今や日本のデジタル赤字は膨らむ一方です。そんな状況を打破するため、経済産業省の支援を受けながら、大規模なGPU投資を進めています。国産GPUサービスを安価に提供することで、誰もが自由にAIを作る・使う社会を目指しています。海外へのデータ流出の防止という、国産だからこその高い安全性を生かし、教育・医療機関との連携を進めていると説明がありました。

「『やりたいこと』を『できる』に変える」を企業理念に掲げるさくらインターネット。PoCや資本提携、イベント共催など、柔軟に協業することが可能で、「挑戦するスタートアップの夢を全力で応援したい」と想いを示しました。
【支援者からのピッチ】スタートアップの成長を加速させる伴走者たち。さまざまな支援の形を紹介
スタートアップ・エコシステムには、スタートアップを強力にサポートする支援者の存在が不可欠です。本イベントでは、品川区で活躍する支援者2社が登壇し、さまざまな支援の形を示しました。

株式会社ゼロワンブースターからは岩本氏が登壇。東京都が主催する女性起業家支援プログラムの開催や、交流会や壁打ち、ピッチ練習会などができるインキュベーション施設「SAAI」の運営など、幅広い支援実績を紹介しました。また、自身も6歳の子どもを育てている岩本氏。子育てと仕事の両立というテーマでポッドキャストを発信するなど、「教育×子育て」にまつわる活動を積極的に進めています。

PARTNERS FUND株式会社は、品川区の五反田を拠点とするVCです。特徴はスタートアップ企業との距離が近いこと。登壇者の種市氏は元々、スタートアップ3社と共同で拠点をもっていたり、本会場の「SHIP」に参画していたりと、スタートアップと目線を合わせて事業計画から作り、伴走するVCとして活動しています。2025年5月に65億円規模の3号ファンドを立ち上げ、「共にスタートアップを成長へと導けるよういろんな方とお話したい」と語りました。
【テーブルトーク】スタートアップ×大企業 ワークショップ
本イベントの最後には、スタートアップと登壇企業が対話をする「テーブルトーク」が実施されました。会場の入口で参加者に配られたペットボトルに書かれた「Let’s Talk」の文字。その吹き出しの色別に3つのグループに分かれて、登壇企業が順番にグループを回り、共創を目指したワークショップが開催されました。

今回、子育て支援の施設運営やアプリ開発、AIを使った研修設計、キャリアメンタースクールの運営、スマート電池の製造、ゲーム作成ツールの開発など、多様な事業を営むスタートアップが集結。異なるバックグラウンドを持つ参加者たちと登壇企業の間には活発な対話が繰り広げられ、深く相槌を打ち、前のめりになって話に聞き入る参加者たちの姿が印象的でした。

その後、登壇者や参加者同士の交流の時間が設けられました。自由に交わされる会話や笑顔で活気に満ちた様子から、今後の共創への取り組みが期待されます。


