SHINAGAWAイノベーションフォーラム2025in五反田バレー。ビジネスを変革するAIの進化 ~生成AIの発展とAIエージェントの台頭~

イベントレポート 2026.2.20

SHINAGAWAイノベーションフォーラム2025in五反田バレー。ビジネスを変革するAIの進化 ~生成AIの発展とAIエージェントの台頭~

開催日

2025年12月08日

13:00~17:05(展示は18:00まで)

会場

品川区立五反田産業文化施設 CITY HALL & GALLERY GOTANDA

(東京都品川区西五反田8-4-13 五反田JPビルディング3F)

参加費

無料

詳細

2025年12月8日、五反田JPビルディングにて「SHINAGAWAイノベーションフォーラム2025」が開催されました。品川区主催の本フォーラムは、最新のICT動向を区内の中小企業等へお届けし、ビジネス機会を創出することを目的としています。今年のテーマは生成AIとAIエージェント。これまでの対話型ツールから、自律的に業務を遂行するAIエージェントへと進化した技術が、企業の生産性や働き方をどう変えていくのか。講演と展示会を通して、AIの現在地と未来について深掘りするプログラムです。区内の中小企業やスタートアップを中心に約130名の参加者が集結し、熱気に包まれた当日の模様をレポートします。

生成AIはツールから、自律的に動くエージェントへ

冒頭、主催者を代表して登壇した品川区 地域振興部 地域産業振興課 創業・スタートアップ支援担当課長の栗原氏は、開催の背景について「生成AIの登場からわずか数年で、AIは対話ツールから業務を自律的に遂行する存在へと急速に変化している」と語りました。
AIエージェントは単なる文章生成にとどまらず、企画立案、調査、データ分析、さらには複数のシステムを横断した業務代行までを可能にします。特に人手不足や生産性向上という課題を抱える中小企業にとって、これまで多くの時間やコストを要していた領域にAIエージェントがもたらす効果は計り知れません。「本日のプログラムが、ビジネス変革の確かなヒントになることを期待しています」という挨拶で、フォーラムは幕を開けました。

【基調講演】AIエージェント活用の未来地図ー技術・課題・社会実装

基調講演には、東京大学松尾・岩澤研究室とビジョンを共有する株式会社松尾研究所の金氏が登壇。「AIエージェント活用の未来地図」と題し、AIの現在地と未来を語りました。
金氏はまず、Googleの「Gemini 3」やOpenAIの動画生成AI「Sora 2」などの最近話題となる生成AIサービスを紹介。OpenAI o1等のAIモデルが東京大学理科三類の入試に合格する等、推論能力やクリエイティブ領域での進化が著しいことを解説しました。その上で、今後の技術進展には大きく3つの方向性があることを示しました。1つ目は、頭脳労働の代替としての「AIエージェント」です。ここでは社長の思想・知識・経験を可視化する取り組みとして、同社が開発した「松下幸之助AI」について紹介しました。2つ目は、肉体労働の代替としての「ロボット」です。基礎技術に生成AIの一種であるロボット基盤モデルを使用することで、人間さながらの動きを実現しているヒューマノイドを紹介しました。さらに3つ目の話題は「AGI(汎用人工知能)」へ移ります。ビッグテックを中心に大規模な投資が加速する中、多くの有識者が数年以内、早ければ2026年中にもAGIが実現すると予測しています。
最後に金氏は、企業がこれらの波に乗り遅れないためのポイントとして、AIサービスを触ることによる原体験の獲得と、プロジェクトを適切に定義し推進する「発注力」を身につけることが重要だと強調し、講演を終えました。

【国講演】生成AIの競争力確保に向けて

続いて登壇した経済産業省の渡辺氏は、2040年に生産労働人口が2割減少するという日本の厳しい現実を指摘。デジタル赤字の拡大も懸念される中、AI活用による生産性向上は避けて通れない課題です。
その鍵を握るのが、生成AIの基盤モデル開発力の向上です。渡辺氏は、政府の取り組みとして「GENIAC*1」プロジェクトを挙げ、GPUなどの高価なインフラ調達の支援をすでに数十社に対して行っていることに言及。企業間のデータ連携のサポート、さらには開発者とユーザー企業のビジネスマッチングを通じても、基盤モデルの強化を後押ししています。
また、AIの学習データとして、インターネット上のデータは学習され尽くしつつある現状を踏まえ、今後は企業の中にあるエンタープライズデータ、特に日本の強い製造業などの現場データを活用していくことが重要だといいます。「単なるデジタル化ではなく、AIを駆動させることを中心に業務プロセスや組織構造を再設計する必要がある」と訴え、全社員がAI人材となり、全社がAI企業へと変革していく未来のあるべき姿を語りました。

【先進企業の取り組み紹介】AIエージェントが拓く企業のビジネス新時代

アクセンチュア株式会社の佐々木氏は、ビジネスでの生成AI活用のポイントとして、生成AIに叩き台を作らせてアウトプット作成時間を短縮する、AIの豊富な知識を活かして選択肢や着想の幅を広げる、フィードバックを繰り返すことで生成AIを育て上げて品質を上げる、という3つを提示。それらを踏まえ、実際に同社で成果を上げている具体的な活用事例が紹介されました。1つ目は、コンサルティング業務における資料作成。同社の「勝ちパターン」を学習したAIエージェントがプロジェクトの構成案の作成から情報収集、スライド作成までをサポートします。「我々の価値は現場に出て生の声を拾うことにシフトすべき」とAI時代の人間の役割を強調しました。2つ目は営業。関連データを収集・解析し、顧客の絞り込みや、顧客課題に合わせたトークスクリプトの生成をAIに提案してもらうのです。これにより、案件増加や工数削減、成約率の改善といった効果が出ているといいます。3つ目はカスタマーサービス。実際に同社が大手メガネチェーン「JINS」に導入した接客用AIエージェントの事例が紹介されました。スタッフの接客ノウハウと商品データを学習したAIエージェントが、24時間365日接客できるというサービスです。
「AIエージェントはまさにビジネスパートナーとなる存在」と語り、今後のAI導入の重要性を強調しました。

【大手企業の取り組み紹介】AIエージェントが加速するエンタープライズ変革

富士通株式会社の滝澤氏は、AIエージェントが「単なるツールから、仕事上の同僚であるバディへと進化している」といい、会議に参加して自ら発言したり、資料を渡すだけでアバターと音声でプレゼンを代行したりするデモを実演。
さらに、このようなオフィスワークだけでなく、現場作業での活用の広がりについても話題が及びました。サプライチェーンの領域では、調達・製造・物流の各エージェントが連携して欠品対応などの全体最適を行うソリューションを提示。各部門を横断して、統括担当、監査担当などのエージェントとも連携することで、意思決定のスピードや精度、生産性を向上できると解説しました。
一方で、生成AIの普及によって高まるセキュリティリスクにも警鐘を鳴らします。対策として、ChatGPTのような「汎用型」と、自社データを学習させた「業務特化型」のAIの使い分けを挙げました。企業データは機密性が高いため、データを自社の管理下に置き、安心安全に運用できる仕組みを構築することが重要だからです。さらに、法令、業務プロセス、企業規則など、業界・業種・企業ごとに異なるルールに準拠できるメリットも。大企業ならではの課題と、それに応えるソリューションを紹介しました。

【企業の取り組み紹介①】“日本企業のためのAIエージェント”が実現する日常業務の自動化と新しい働き方

これまで数百社のAI活用に伴走してきたJAPAN AI株式会社の飯田氏は、その知見をもとに、AI導入の実用的なロードマップを提示。大切なのは短期的なアプローチと中長期的なアプローチで分けて考えることだといいます。
短期的には、いきなり技術導入するのではなく、まずはAIに慣れるフェーズから始めることを推奨。例えば会議が終わったら議事録を読み込み、欠席者に内容を送ったり、チャットに通知したりする「会議メール生成AIエージェント」といった、身近な業務から自動化していくことでAIエージェントの活用が進む雰囲気が醸成していくのです。
このように、連続したタスクをツールやデータを使い分けながら実行できるAIエージェントを作るのは「チャットで相談すればすぐに完成するほど簡単」だとする一方で、その質を高めるためにはデータの蓄積や統合が不可欠だと指摘。
だからこそ、中長期的には業務データ、マーケティングデータ、基幹システムなどのデータをまとめてAIがデータを活用できる形で統合することが重要になってきます。データが整備されて初めて、より業務に深く入り込んだAIエージェントを作成し、活用することができるのです。
「来年は皆さんが当たり前のようにAIエージェントを作る年になると思います」と展望を語り、講演を終えました。

【企業の取り組み紹介②】生成AI時代の経営戦略を支えるナレッジ活用術-企業に眠る膨大なナレッジの戦略的活用を実現するEKPとは

ストックマーク株式会社の林氏が語ったのは、これからの企業経営におけるナレッジマネジメントの重要性でした。林氏は、従来のような「モノ・カネ」を管理するERP(Enterprise Resource Planning)だけでなく、ベテラン社員の頭の中にある「ナレッジ」や技術文書を構造化し、次世代へ伝承・活用する「EKP(Enterprise Knowledge Platform)」という新たな基盤が必要だと提唱します。
背景にあるのは、爆発的に増大する社内外のデータ量。一方で、それらのほとんどが図表やExcel方眼紙などといった、AIが解釈しにくい非構造化データだという事実です。それに対し同社では、カオスな非構造化データを最適化・構造化する技術を開発し、これら社内のデータと、国内外の約3.5万サイトのニュース、論文、特許、官公庁レポートを集約したデータの掛け合わせにより強固なデータ基盤を構築しました。その基盤を活用して、市場のニーズに対し自社の技術をどう活かせるかを提案するAIエージェントや、社内規則や法令に適合しているかを確認する資料レビューエージェント、提案の際のブリーフィング資料作成エージェントといった機能を実現しているといいます。
林氏は、新規事業の創出や社内の技術伝承に活用された事例を紹介しながら、社内の非構造化データをいかに資産化するかが、これからの企業の競争優位性を左右すると語りました。

【企業の取り組み紹介③】実務で使えるAIエージェント~業務事例を多数紹介~

最後に登壇したジンベイ株式会社の上田氏が紹介したのは、生成AIベースのOCR*2技術「ジンベイ GenOCR」を活用した多種多様な業界での事例です。
同社プロダクト最大の特徴は、事前に読み取り箇所を指定する「テンプレート設定」が不要である点です 。フォーマットが異なる修理報告書や手書きのアンケート、さらには複雑な図面に記載された寸法数値に至るまで、AIが文脈を理解し、必要な情報のみを自律的に抽出できるのが強みです 。この技術により、従来は人手に頼らざるを得なかった業務の自動化が可能になります 。さらに、これまで活用しきれていなかったデータをAIで扱えるようになるため、新たなソリューション開発の可能性も大きく広がります 。
例えば教育業界では、記述式模試の自動採点システムに加え、隣り合う座席の生徒の回答内容が不自然に一致していないかを分析するカンニング検知の自動化を実現。建設・不動産業界では、過去の膨大な紙資料から物件の構造や面積などのスペック情報を自動抽出し、新規プロジェクトの提案時に類似した過去事例を瞬時に検索・参照できるシステムを構築するなど、具体的な導入事例を次々と提示しました。また、バックオフィス業務においても仕分け起票、科目推定、税務判断などで導入の取り組みが進んでいるとし、業種・業界・職種を問わず、人間がより創造的な業務に時間を割くことができるようになる未来へ期待を寄せました。

展示・相談ブースも盛況

講演終了後、会場併設のギャラリーでは、登壇企業および株式会社Srushによる展示・相談ブースが賑わいを見せました。富士通の「Fujitsu Kozuchi」や、ジンベイの「ジンベイ GenOCR」、ストックマークの「Aconnect」や「SAT」、JAPAN AIの「JAPAN AI AGENT」、そしてSrushのデータ分析AI「SrushAI」など、各社の最新サービスを実際に体験できるデモ画面の周りには、参加者が列を作りました。
「AIエージェント」という言葉が、単なるバズワードではなく、実務を変える具体的なソリューションとして定着しつつあることを強く印象づけた今回のフォーラム。品川区から始まるイノベーションの波が、今後どのようにビジネスを変革していくのか、期待が高まる一日となりました。

*1GENIAC:経済産業省とNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が立ち上げた国内における生成AIの開発を強化するプロジェクト
*2OCR:紙の文書や画像データに写っている文字を、コンピューターが認識・編集できるテキストデータ(文字コード)に変換する技術

執筆者

エディターチーム

インクデザイン株式会社

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