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インタビュー/対談/特集記事

インタビュー 2025.10.1

【ビジネス創造コンテスト受賞者特集】「第15回ビジネス創造コンテスト」で最優秀賞に輝いたUBeingに、こだわりの事業内容と展望について聞いてみた。

「“あなたらしく生きる(You Being)”を予防医療で支える」というビジョンを掲げ、独自のアプローチによる減塩サポートデバイスを開発している、株式会社UBeing(ユービーイング)代表取締役社長の福島大喜さん。2025年2月には、品川区が主催する「ビジネス創造コンテスト」で最優秀賞を受賞しています。そんな福島さんに、UBeingの事業内容や展望、品川区の創業支援の魅力について聞きました。

(プロフィール)
福島 大喜さん 株式会社UBeing 代表取締役社長
内科専門医、脳神経内科専門医。脳卒中患者への臨床業務から感じた課題と「減塩食は美味しくないから続かない」という患者や医療従事者の声から、食体験を維持したまま減塩が可能な方法を探し始めた。減塩食の塩味を増強させる技術と出会い、2022年3月に株式会社UBeingを創業、味覚調整デバイスの開発に挑戦している。

 

微弱な電流で味覚を刺激。少ない塩分でも、しっかり美味しい

 

―まず、UBeingの事業について教えてください。

福島 大喜

ビジョンである「“あなたらしく生きる”を予防医療で支える」を達成する手段の一つとして現在は、電気刺激で味を変える技術を用いた減塩サポートデバイス「umaiNa(ウマイナ)」の開発に取り組んでいます。塩分を控えた食事が美味しくないために継続できず、病気や合併症を引き起こすリスクを減らすのが目的で、美味しい食事体験と健康の両立を目指しています。

―減塩食の提供などとは異なるアプローチですね。どのような仕組みなのですか?

福島 大喜

口に微弱な電流を流すことで食品の味を強く感じさせる「電気味覚」という技術を使っています。デバイスを下あごに装着して微弱な電流を流し、塩味を増強するので、塩分が少なく薄味でも美味しく食べられるという仕組みです。

―現在、事業はどのようなフェーズでしょうか。

福島 大喜

2025年中に「umaiNa」の販売をスタートさせようとしており、数十台を非医療機器として医療機関や介護施設で導入いただくのを目標としています。初期フェーズではこのようにB to B to Cで医療機関や介護施設の利用者の方に使っていただきながら、最終的には、一般の方向けに販売していくことを目指していきます。将来的には、より高機能な医療機器としての展開も視野に入れています。

自治体とともに社会課題の解決を目指そうと、品川区共催(一般財団法人品川ビジネスクラブ主催)のビジコンに挑戦

 

― 一般財団法人品川ビジネスクラブ主催・品川区共催の「ビジネス創造コンテスト」で最優秀賞を受賞されましたが、参加を決めた理由を教えてください。

福島 大喜

私自身は品川区との直接的なご縁はなかったのですが、関東での共同研究の可能性や、日本の中心地に近い品川区での認知度向上を期待し応募しました。加えて、社会課題の解決を目指して始めた事業なので、自治体の方々と協力していきたいという思いがあり、そのきっかけになるような機会を探していたことも理由としてあります。

―2025年の「ビジネス創造コンテスト」は第15回でした。そのように年数を重ねているビジコンだと、取り組み甲斐がありますか?

福島 大喜

私の尊敬するスタートアップ起業家の方が以前、このコンテストで最優秀賞を受賞されているのです。今回、同じように参加し、評価いただけたことがうれしかったです。

―この回は278件の応募があり、ファイナリストの10名として2月7日に大崎ブライトコアホールでピッチをされました。印象に残ったことはありますか?

福島 大喜

途中の選考はオンラインピッチでしたが、最後のピッチはリアルだったことで、他のファイナリストや審査員との交流の機会となりました。実際に当社のデバイスに興味をもたれた方もいて、その場で体験いただきました。また、ピッチのレベルも高く、その中で我々が最優秀賞をいただけたことは自信になりました。
品川区らしさを感じたのは、品川区在住・在学の小・中・高校生を対象とした「区民枠」を同時開催していることです。こどもたちや若い世代の活躍を見て刺激になりました。各個人が不思議に思ったことを、しっかり考えて解決策を出すために試行錯誤する過程を早くから実践し、聴衆の前で発表できるというのは素晴らしいことです。これは品川区ならではの取り組みだと思います。

―あらためて、こうした自治体等が参画するビジネスコンテストに申し込みされるのは、会社や事業にとってメリットがあるとお考えですか?

福島 大喜

こうした場を通して事業に共感していただける方と出会えれば、実証や共同研究などにつながる可能性が高いと思います。会場となったホールと同じ場所にあるSHIPではイベントも行えるようなので、今後、たとえば製品体験会などもできることを期待しています。
また、事業が拡大フェーズになったときには、採用の観点で東京に拠点があるのはメリットになると考えており、時期を見て東京でも拠点を作りたいと考えているところです。

2030年までに日本人の塩分摂取量を1日1~2グラム減らすのが目標

―今後の展望をお聞かせください。

福島 大喜

2030年までに日本人の塩分摂取量を1日1~2グラム減らすことを目標としており、その達成には自治体や食品・外食企業との連携が不可欠だと考えています。たとえば、特定健診の栄養指導で「umaiNa」を使っていただく、地域の健康イベントで減塩と美味しさを両立できることを啓発するといった連携ができれば有難いです。

―最後に、品川区に興味をもたれる事業者の方々へアドバイスをお願いします。

福島 大喜

私自身は医師として、減塩食が継続できず患者さんが健康を損なってしまわれるのを何とかできないかと思ったことから、この事業をスタートさせました。そんな風に解決したい課題がある人は、このビジネスコンテストのような機会を最大限に活用することは一つの方法だと思います。自分の夢やビジョンに共感してくれる人が見つかるかもしれません。ぜひチャレンジしてみてください。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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