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インタビュー 2025.10.8

【品川区で活躍する女性起業家特集】「ウーマンズビジネスグランプリ2024」でグランプリを受賞し、品川区の「オンラインMy助産師」事業に採択されたMamaWellに、こだわりの事業内容と展望を聞いてみた。

自身の助産師・妊婦体験や研究成果をふまえて「女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする」をミッションとし、妊婦の伴走型健康管理サービスを提供している、株式会社MamaWell(ママウェル)代表取締役の関まりかさん。品川区が主催する「ウーマンズビジネスグランプリ2024」でグランプリを受賞し、2025年度には都内初となる品川区の「オンラインMy助産師」事業に採択されています。

(プロフィール)
関 まりかさん 株式会社MamaWell 代表取締役
大学卒業後、助産師として病院で勤務、500人以上の赤ちゃんの誕生の場に携わる。その後、千葉大学大学院に進学し、「妊婦の身体活動」をテーマに研究を始める。博士課程在籍中の2022年8月に、自身の研究・助産師・妊娠経験を起業シーズに株式会社MamaWellを創業。「女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする」をミッションに掲げる。文部科学省よりアントレプレナーシップ推進大使を拝命。子ども家庭庁より「伴走型相談支援事業」の検討委員を拝命。1児の母としても日々奮闘中。

 

妊娠~産後を専属助産師×デジタルヘルスでサポート

 

―まず、MamaWellの事業について教えてください。

関 まりか

当社は、2022年8月に創業し、妊婦とそのパートナーを対象としたパーソナル助産師による伴走型の健康管理サービスを提供しています。千葉大学と筑波大学より大学発ベンチャー認定を受けており、経済産業省や厚生労働省の事業にも採択され、導入企業数は100社を超えました。サービス展開は、企業・健康保険組合・自治体向けの3軸で進めており、自治体での本格導入に至ったのは、今回の品川区が初めてです。

―「パーソナル助産師による伴走型の健康管理サービス」とは具体的に、どのような内容ですか?

関 まりか

妊婦さんにウェアラブルデバイスを無料で貸与しており、そこで取得したヘルスデータを当社アプリ「MamaWell」で記録・モニタリング。さらにデータをもとに、その妊婦を担当するパーソナル助産師が運動量や健康についてアドバイスし、妊娠合併症のリスク低減や妊娠中の不快症状の予防を支援しています。単なるアプリやチャットボットではなく、テクノロジーと妊娠・出産の専門家による親身な寄り添い型のハイブリッドなサポートが特徴です。

―「パーソナル助産師」というのがポイントでしょうか。

関 まりか

そのとおりです。専属で1人の助産師がつき、妊娠初期から産後まで継続的にサポートするので、その都度状況を説明・確認する手間がありません。専門的な知識や経験に基づいた信頼できる専門家を拠り所とできることが重要なのです。
また、妊娠期はリスクも伴うため、その助産師の「質」も大事です。そのため当社では、登録助産師を合格率1/3という厳しい基準で採用しており、採用後もMamaWell独自の教育プログラムと認定試験をクリアした人のみが妊婦を担当できます。そうして現在は約70名の優秀なパーソナル助産師が在籍しています。
そもそも助産師は国家資格で、定義としては妊娠・子育てのスペシャリスト。もちろん看護師資格も持っていないと活躍できない職種ではありますが、妊娠・子育て期をしっかりサポートするには看護師や医師に加え、フィジカルだけでなくメンタルも診られる専門家が必要だと考えています。私自身が助産師であることもあり、病院以外でも活躍できる仕組みを作っていきたいのです。
ちなみに社名の「MamaWell」は、ママのウェルネスとウェルビーイングを掛けており、さらに助産師(midwife)の略称である「MW」を大文字にすることで「助産師の力で母親をより健康で幸福に」という思いを込めています。

―企業・健保・自治体向けの3軸で展開されるのはなぜですか?

関 まりか

個人からは利用料をいただかないようにするためです。日本は少子化が進み、今後ますます出産する方が減ってマジョリティではなくなっていくときに、妊娠・出産する方を支援しなくてもいいと思ってほしくありません。子育ては社会全体で支えるべきだと強く思うので、企業や健康保険組合の活動、自治体による住民サービスとして提供するビジネスモデルとしました。一部、今まさに困っていて自費でも利用したい方向けに個人にも提供はしますが、3軸で推進することで、経済的な負担なく必要な支援を受けられる社会を目指しています。

「ウーマンズビジネスグランプリ」後、導入企業数が5倍に

 

―次に、品川区でのご活躍についてお聞かせください。品川区が主催する「ウーマンズビジネスグランプリ2024」に参加を決めた理由は?

関 まりか

スタートアップ支援をしている知人から「ウーマンズビジネスグランプリ」のことを教えてもらい、品川区に拠点を置いていなくても申し込めると知りました。参加を決めたのは、自治体が主催するビジコンであり、女性に特化したものもめずらしかったからです。ビジコンに出るのは認知の拡大につながりますが、相当な準備も必要なので、何にでもエントリーするわけではないのですが、それでも「ウーマンズビジネスグランプリ」であれば、当社の事業を知っていただく良いきっかけになると感じました。

―2024年の「ウーマンズビジネスグランプリ」は第13回で、84件のエントリーから勝ち抜いた8プランが、2月18日に大崎ブライトコアホールで最終プレゼンテーションを行いました。当日、印象的だったことはありますか?

関 まりか

応援者が盛り上げるというカルチャーを知らずに、登壇者の応援団席というのがあって驚きました。独特のアットホームさがありますね。また、同じファイナリストの方々のプレゼンがすごく良かったので、自分も頑張らねばと気合を入れました。
私自身、グランプリを目指していて、それまでにプレゼンの内容をしっかりと練り、タイムキーピングもして練習を重ねていたんです。ここで自分の熱い思いを込めるぞというポイントも決めたりしていました。

―そうしてグランプリを受賞されて、何か変化はありましたか?

関 まりか

直接的な影響ではないかもしれませんが、導入企業数が5倍になりました。メディアの取材も増えたので、認知が進んだのだと思います。企業にとって新しいサービスを導入するのは不安も多いと推測しますが、こうした自治体のお墨付きというのが信用につながったと思います。
また、グランプリを受賞したときに、品川区の森澤区長とお話ができ、「すごく良いサービスですね」と言っていただけました。その後で知ったのですが、もともと森澤区長がマニフェストに「My助産師制度の整備」を掲げておられました。グランプリを機に、これだと思っていただけたのであれば有難いです。

4日間で年間受付数の1割が埋まった「オンラインMy助産師」

 

―その後、MamaWellで2025年度に都内初となる品川区の「オンラインMy助産師」事業に採択されました。実施に至るまでの経緯を教えてください。

関 まりか

新たなコンセプトの事業なので、まずどの部署に話を聞いていただけるか。母子保健や男女共同参画の部署とも意見交換していき、妊娠中の支援は子どもの健康につながるということで子ども育成課で実施することになったのです。4月から毎月のように相談を進め、ようやく9月頃、実現できそうな手応えを感じられました。最終的には区議会で予算案が審議されるので緊張しましたが、年度末に予算が決定されて、2025年4月より当社が採択されて「オンラインMy助産師」の事業を始めることができました。

―この事業の概要や反響を教えてください。

関 まりか

品川区在住で妊娠の届出をされた妊婦さんとそのパートナーが対象で先着300組まで受け付け、無料で妊娠から産後3ヵ月までをフルサポートします。内容は当社が既に提供していたスタイルそのままで、ウェアラブルデバイスとアプリによるデジタルヘルスケアと、専属助産師の伴走でサポートします。
反響としては申込み開始4日間で年間受付可能数の1割にあたる30組が埋まり、待ち望まれていたのを改めて感じました。
印象的なのは、パートナーによる申込みも多いことです。実際、男性の育休も進むなか、病院や自治体の支援は妊婦中心のため、父親は疎外感を抱きがちです。ですが、こうして父親も正しい識を得られることで妊娠中から父性を育み、夫婦での共同育児へのスムーズな移行を支援できればと思います。

―MamaWellの今後の展望をお聞かせください。

関 まりか

当社では、質の高いサービスを維持・発展させるため、システム開発は全て自社で行い、助産師が専門家として正当に評価され、十分な報酬を得られる仕組みを追求しています。そのため、ソーシャルグッドな評価をいただきながらもNPOではなく株式会社として事業を行っています。
今回の品川区との事業をモデルケースとして、全国の自治体や企業、健保への導入をさらに拡大していきたいですね。

―最後に、品川区に興味をもたれる事業者の方々へアドバイスをお願いします。

関 まりか

品川区は本当にスタートアップフレンドリーで、区の創業支援部門と他の部門との距離感がとても近く、相談しやすいのを感じます。また品川区の武蔵小山創業支援センターは、品川区に複数ある創業支援センターのなかでも女性の起業支援に特化していて、起業について相談できる体制が整っていると感じます。「起業するなら品川区」とお勧めしたいです。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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