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インタビュー 2026.2.20

【急成長を続ける品川区のスタートアップ特集】世界初の小型センサーで「モノづくりの民主化」に挑む。創業3年で2度の資金調達を実現したメタセンシング株式会社奥野代表に、事業拡大の舞台裏を聞いてみた

2023年3月創業のメタセンシング株式会社は、自社開発の小型・高性能なセンサーと生成AIを用いたデータの解析サービスを提供し、研究開発や製造業の現場を支援するスタートアップです。
約3年という短期間で2度の資金調達を完了し、成長を続けてきた同社。今回は代表取締役社長の奥野義人さんに、事業の特徴や事業拡大のポイント、今後の展望についてお話を伺いました。

(プロフィール)
奥野 義人さん
メタセンシング株式会社 代表取締役社長 工学博士

大阪大学大学院にて工学博士号を取得。専門は応用物理学。堀場製作所やHuaweiで研究開発に従事した後、2023年にメタセンシング株式会社を創業。「モノづくりの民主化」をビジョンに掲げ、高度なセンシング技術を核に、計測からデータの解析までを行えるプラットフォームを開発・提供し、事業拡大を牽引している。

 

手のひらサイズのセンサーが「モノづくりの常識」を塗り替える

――事業概要を教えてください。

奥野 義人

主に製薬や化学、半導体メーカーに向けて、非破壊・非接触で物質の中身を分析できる小型のラマンセンサー「Raman EYE」と、センサーから取得したデータを解析するAIエージェント「MetaSpectraBot」を提供しています。従来、専門知識を持ち合わせた技術力の高い人しか、センサーの操作やデータの解析ができませんでした。
しかし当社のサービスでは、誰でも直感的にセンサーを操作できます。また、お客様ごとにカスタマイズしたデータベースを構築することで、柔軟に解釈・解析いただけるようサポートをしている点が特徴です。

――具体的にどんな場面でRaman EYEが使われていますか?

奥野 義人

例えば製薬メーカーでは、錠剤や粉末状の薬を製造するプロセスで活用されています。こうした薬は胃の中で溶けて血液に吸収されるため、一粒一粒の成分がムラなく混ざっているか、濃度が正確かという点が、品質を安定させるうえで重要です。
当社のRaman EYEは、製造後ではなくプロセスの中で、成分のムラや配合ミスがあった場合に早期に原因を特定し改善につなげられるので、製造効率や品質をより上げることができます。

――サービスの強みは何でしょうか?

奥野 義人

導入へのハードルの低さが強みです。一般的なラマンセンサーは両手を広げた長さくらいの大型サイズで、重さは50キロから100キロ、価格は4,000万円から5,000万円にものぼります。サイズやコストの面で使用する場面が限定されるため、「さまざまな製造プロセスに組み込みたい」「日々の品質チェックに気軽に使いたい」といったニーズを満たせていませんでした。一方、Raman EYEは世界最小クラスの手のひらサイズです。一般的なラマンセンサーのようにフルスペックでなくとも十分である場合も多いため、スペックを抑えたことで低価格を実現しました。その分、いかにデータを扱いやすくするかといった方向に価値を訴求しています。

「技術」を売る前に「信頼」を築く。資金調達を支えた初期の営業活動

――創業に至った経緯を教えてください。

奥野 義人

大学院で応用物理学の研究室に所属していて、光を使った研究やモノづくり、分析などをしていました。卒業後も分析・計測機器メーカーなどで研究開発に従事する中で、お客様にとって、専門知識と分析技術がモノづくりの足かせになっていることに気づきました。「モノづくりに集中できるようになってほしい」「分析を通して、モノづくりがさらに発展してほしい」という思いが芽生え、分析を起点としたモノづくりの支援がしたいと思い、創業に至りました。

――資金調達の状況と使い道を教えてください。

奥野 義人

2024年2月にシードラウンドでの最初の調達を終え、2025年7月にはシリーズAとして3.6億円の資金調達を完了することができました。資金はさまざまな用途で活用する予定ですが、サービスのハード・ソフト両面の質向上に向けた研究開発や、海外進出に向けた代理店とのパートナーシップの構築に投資していきたいと考えています。

 

――短期間で2度の資金調達を完了されたとのことですが、技術力以外に評価されたポイントは何でしょうか?

奥野 義人

創業1年目から営業に注力した結果、代理店やお客様とのネットワークを構築できたことがポイントだと思います。今では代理店などのパートナー数が約30社、案件数が100件以上になりました。歴史ある理化学機器メーカーや代理店が多く、当社のようなスタートアップは最初信頼が得られず苦労することもありました。ただ、当社は「モノ」を売る以上営業が何よりも大事だと考え、営業体制を戦略的に強化し、根気強く活動を続けました。技術力だけでなく、現場で積み上げた初動の実績が、資金調達の実現につながっていると思います。

――今後、資金調達の予定はありますか?

奥野 義人

シリーズBとして、今年の年末に最後の調達を予定しています。昨年、データ解析のAIエージェント、MetaSpectraBotをリリースしたことで、プロダクトは全て揃い、売上拡大までの準備が整いました。2030年のIPO実現を目標に据えて、ハード・ソフト両面でモノづくりを支援できる企業としての地位を確立していきます。

コミュニティへの参画が事業拡大を後押しする

 

――品川区に拠点を置いている理由を教えてください。

奥野 義人

ビジネスを進めるうえでの効率性の高さが理由です。金融機関やVC、サプライヤーが集中していて、品川区内でコミュニティが完結しています。すぐに直接会って話すことができるので、コミュニケーションも円滑です。営業メンバーが地方や海外に行くことも多いので、品川駅の新幹線や羽田空港に近いのも便利です。

――今後の事業展開について教えてください。

奥野 義人

海外進出に向けて準備をしています。インドや中東、韓国ではパートナーとなる代理店が見つかりました。海外進出をしている同業他社が少ないため、現状は手探り状態で販売に向けて準備をしている状態です。例えばインドでは、日本と商慣習や流通網が異なることもあり、そのあたりの整備をしたうえでやっと販売する準備が整います。

その点ヨーロッパは、取引慣行やメーカーの雰囲気、コミュニケーションの取り方など日本と共通する部分が多く、ビジネスを展開する土壌が十分に整っています。まずはヨーロッパの代理店とのパートナーシップ構築に注力していきたいと考えています。

――最後に、起業やスケールを考えている人へアドバイスをお願いします。

奥野 義人

起業してビジネスを広げていくためには、日常的な情報交換や、サポートし合えるコミュニティに身を置くことが大切です。例えば資金調達一つとっても、誰に相談したらいいのか、どのようなプロセスが必要かといった情報はなかなか表には出てきません。その点、品川区には資金面から事業推進まであらゆるフェーズで手を差し伸べてくれるコミュニティがあります。一人で抱え込まず、そうしたつながりを広げておくことが、挑戦し続ける力になると思っています。

 

執筆者

エディターチーム

インクデザイン株式会社

わかりやすく、おもしろく。経営の課題をデザインの力で解決する、デザイン・コンサルティング会社です。

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