【五反田バレーアクセラレーションプログラム アルムナイ特集】女子チーム向けコンディション管理アプリで、女性アスリート特有の怪我や健康課題から守る「LEAN」

中高生が月経や体調の悩みを抱えることなくスポーツに打ち込める社会を実現したいという思いから、女子チーム向けのコンディション管理サービスを提供している株式会社LEAN(リーン)。社名には「凜とした気持ちで過ごせる人を増やしたい」という思いを込めたという代表取締役の立道友緯(たてみち・ゆい)さんに、その事業の概要と、2024年度に参加した「五反田バレーアクセラレーションプログラム」や品川区の創業支援で役立ったことについて聞きました。
(LEANの軌跡)
2023年5月 創業
2024年9月~2025年3月 五反田バレーアクセラレーションプログラム第5期 参加
2024年12月 女子チーム向けコンディション管理アプリ「Lean sports」をリリース
2025年2月 第14回「ウーマンズビジネスグランプリ2025in品川」でグランプリと品川区中小企業応援賞を受賞
(プロフィール)
立道 友緯さん 株式会社LEAN 代表取締役
慶應義塾大学を卒業後、BtoBマーケティングに3年ほど携わった後に2023年に株式会社LEANを創業。特に中高世代の女性アスリートが月経や体調の悩みを抱えることなくスポーツに打ち込める社会を実現したいという思いから、女子チーム向けのコンディション管理サービスを提供している。
中高女子スポーツにおけるコンディション管理で、性差による機会均等を目指す
―まず、LEANの事業について教えてください。
立道 友緯
女子チームに特化したコンディション管理アプリ「Lean sports(リーンスポーツ)」を開発・提供しています。女子のスポーツ選手やチームにとって、生理周期によるコンディションは競技に影響が大きいもの。指導者も対策がとりにくいこの問題に対し、コンディションを見える化して適切にサポートしていくことで、怪我のリスクを減らし、パフォーマンスの最大化を目指せるのがこのアプリです。
―どういった機能があるのですか?
立道 友緯
選手にはLINEアプリで約3~5つの質問に答える形で、毎日体調を記録してもらいます。それで指導側は全員の体調が一覧でき、適切な声がけや練習内容の調整など、必要な対応が分かります。また、選手には個別にAIが体調データを分析して、体調管理に役立つアドバイスが月一度通知されます。振り返りや目標設定をしていくことで主体的なコンディション管理が身につきます。
―ユーザーはどのような方々ですか?
立道 友緯
学校の部活動がメインで、クラブチームも増えつつあります。サッカーから始まり、ハンドボールやラクロスにも広がりつつあります。紹介やSNSを見て問合せをいただくことが多く、2025年5月からは毎月指導者向けのセミナーを開催して、そこから導入に至ったりもします。一般的な指導者向け講習会では男女共通の実技が中心で、女子選手のコンディションについては指導者間で意見交換がほとんど行われません。そのため、弊社では女子チームの指導者向けにテーマを絞ってセミナーや情報発信を行っています。
―なぜこのテーマで起業されたのですか?
立道 友緯
私自身は中高一貫の女子校出身で、男女の差を感じることがなかったのですが、社会に出ると違和感を持つようになりました。そこで、性差による機会損失をなくすことを人生の目標と定め、その第一歩として生理というテーマを選びました。
当初は社会人を想定しましたが、検討していくと根本は中高のジュニア時代にあると感じたのです。中高生のジュニア時代に生理に適切に対処する知識を身につけておけば、その後の人生でもうまく付き合っていけるはずです。調べると、中高生向けのサービスには競合がほとんどないことがわかりました。おそらくマネタイズの難しさが原因だと思いました。そこで、中高生に効果的にアプローチする方法として、スポーツという場に行き着きました。スポーツに取り組むジュニア世代にアプローチすることで、生理に関する正しい知識を広めていきたいと考えています。
―今後の事業展開について教えてください。
立道 友緯
社会人向けよりは、海外のスポーツに広げるなど、スポーツを軸に展開したいです。この10年で女性アスリートの健康課題に関する研究が進んできたので、実装を求める現場へと橋渡しできればと思います。
組織は大きくせず、社会貢献と経済活動を両立させるゼブラ企業を目指します。熱量のあるメンバーでいろいろな人を巻き込みながら、スポーツ界の文化を変えていきたいですね。まずは国内で1000チームの導入を目指し、2027年には海外のチームでPoCに着手。ゆくゆくは海外と日本を半々くらいで、両方をサポートしたいです。

生まれ育った品川区で起業し、自治体の創業支援をフル活用
―2024年度の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に応募された理由を教えてください。
立道 友緯
私は生まれも育ちも品川区であることから、品川区内に法人登記をして起業しました。仕事のペースをつくるためにコワーキングスペースを探していて、西大井創業支援センターの利用を考えたところ、このプログラムの特典で無償利用できると知り、ほかの特典も魅力的だったので応募しました。
―実際に参加されてみて、役立ったことはありましたか?
立道 友緯
やはりオフィスとしてコワーキングスペースを使えるのが有難かったです。事業や私自身のライフスタイルがまだまだ変わっていくフェーズにあるため、オフィスについても流動的にしておきたかったので、特典でいろいろな拠点を使えるのが助かりました。PR TIMESが最大6ヵ月間、毎月1件まで無償提供になるのも良かったです。広報をコスト面でサポートいただけて有難かったです。
また、大企業とのつながりも魅力的でした。パーク24社からの個別メンタリング提供が参加者特典でしたが、五輪で活躍された阿部詩選手が所属されている、女子柔道部の監督にヒアリングをさせていただけました。個人でドアノックしていては得られなかった機会だと思います。
―そのほか、印象に残ったことがあれば教えてください。
立道 友緯
研修で印象的なのは、先輩スタートアップとの交流会で、創業からのご苦労やM&Aによる事業の転機についてお話いただいた㈱YOUR MEALの西川さんの回です。一見、成功されてキラキラに見えても、裏で苦労されたことを聞けると、やはり簡単な道ではないのだと思えます。表に出やすいサクセスストーリー的な内容と違い、リアルな体験談だと自分でも気をつけるべきポイントが分かったりして、とても勉強になりました。
また、ピッチも一気に19名分を聞ける機会が何度もあり、伝わるような話し方など、他の受講者の良いポイントが参考になりました。
―立道さんは、品川区の創業支援もいろいろ活用されているそうですね。
立道 友緯
特定創業支援等事業で法人登記にかかる登録免許税の減免を受けたり、ソフトウェア開発の助成金をいただいたりと、いろいろお世話になっています。創業支援センターに各種パンフレットやちらしが置いてあるので、そこで知ることが多いですね。「ウーマンズビジネスグランプリ」もそこで見て、応募することにしました。それで、2025年2月という、アクセラレーションプログラムの終盤のタイミングでファイナリストとしてピッチを行い、グランプリと品川区中小企業応援賞を受賞することができました。

「ウーマンズビジネスグランプリ」受賞特典のメンタリングで、細かな施策を見直し
―第14回の「ウーマンズビジネスグランプリ」ですね。グランプリを獲られましたが、手応えはあったのですか?
立道 友緯
それまでビジネスコンテストでは、あと一歩で1位に届かず、2位や3位で終わっていたんです。そこで今回は「伝えること」に重点を置いて、ピッチの内容を練りました。気をつけたのは、監督や選手に訴求するのとは違い、この事業のことを初めて見る一般の方々に届けることでした。たとえば、前十字靭帯損傷といえば、監督や選手には切実な悩みで何とか予防したいと思われますが、スポーツをやっていない方にはその切実さが伝わらないものです。ですから、どこまで言うか、どこを割愛するかを熟考し、より印象に残るような話の順番に配慮しました。その結果、より多くの皆さんにアピールできたのだと思います。
―「ウーマンズビジネスグランプリ」で印象的なことはありますか?
立道 友緯
会場の雰囲気が温かく、やりやすさを感じました。審査でも「こうしたらもっと良くなる」など、前向きに見ていただけました。参加するに当たって準備に時間をかけ、ストレスもあるものなので、ポジティブに受け止めてもらえて良かったです。
また、森澤区長とお話する時間もあり、その後、アクセラレーションプログラムのDemoDayでまたお会いしたときも、グランプリのことを覚えていてくださり、声をかけていただいて感激でした。
―グランプリを受賞した後、何か変化はありましたか?
立道 友緯
同じく登壇されていた理学療法士の方に、監修に入っていただくようになりました。当日、帰り道にお話したのを機に、定期的にアドバイスをもらい、今では一緒にセミナー開催もしています。その方がハンドボールのトレーナーをされている関係で、いろいろな方も紹介いただきました。もともとサッカー中心だったユーザーに広がりが出て、感謝しています。
また、グランプリの特典で12月までメンターがついてくれ、毎月面談してもらっています。当社の事業に合うスポーツ領域が分かり、ご自身も起業されている方で、的確なアドバイスをもらえています。たとえば、3期目にやるべきことの優先順位付けだったり、SNSでの集客方法など、ご自身の経験から具体的に教えてもらえます。セミナーを有料にするか無料にするかで悩んだときには、ビジネスの特性から方向性を導き、自分だけではぐちゃぐちゃになりそうなところを整理していただきました。

―最後に、スタートアップとして成長を目指す人へアドバイスをお願いします。
立道 友緯
起業して思ったのは、自治体には想像以上に創業支援の仕組みや制度があるということです。サポートしてもらえる機会をぜひ活用してみてください。アクセラレーションプログラムやビジコンも、自分にはまだ早いんじゃないかと思われるかもしれませんが、未完成でも挑戦することでいろいろな機会が広がります。また、ピッチなど発表の期日があるので、強制的にやらざるを得なくなる効用もあります。最近進められていないとか行き詰まりを感じるような場合も、デッドラインを設けられる機会として活用してみては。また、1人だと自己管理は難しかったりしますが、周りに刺激を受けてモチベーション向上も期待できるでしょう。


