五反田バレーアクセラレーションプログラム
受講生インタビュー

2024.3.4

【五反田バレーアクセラレーションプログラム アルムナイ特集】 空間認知の社会課題解決に取り組んでいるLOOVIC株式会社山中代表にプログラムでの成果や今後の展望について聞いてみた。

2020年に創業し、空間認知の社会課題解決に取り組んできたLOOVIC(ルービック)株式会社。その事業の概要と、2021年に参加した「五反田バレーアクセラレーションプログラム」での成果、今後の展望について、代表取締役CEOの山中享さんに聞きました。

(LOOVICの軌跡)
2020年10月 創業
2021年5月 会社設立
2021年9月~2022年3月 五反田バレーアクセラレーションプログラム2期
2022年8月 第三者割当増資による資金調達 3100万円

(プロフィール)
山中 享さん LOOVIC株式会社 共同創業者/代表取締役CEO
1999年より生活用品最大手のアイリスオーヤマにてマーケティング・流通を学び、国内最大手通信事業者のソフトバンクでブロードバンド革命の激動の通信技術を経験。その後NTT系SIer、NIerである、最新技術を持つNTTPCで法人通信やモバイル・クラウドにてソリューションで技術の深耕をした。世界最大手のクラウド事業者であるアマゾンウェブサービスで世界基準の最新鋭のサービス戦略・チャネルアライアンス戦略を学び、スタートアップの役員を複数社経験し、スタートアップの経営手法の基礎を学び、自身の家族の経験から社会課題の解決を決意。LOOVICを立ち上げる。

 

苦手を苦手と意識しない社会を目指す。

 

―まず、御社の事業について教えてください。

山中 享

人間拡張技術を用いて、空間認知を解決するための技術開発をする会社です。代表するサービスは、社名と同じ「LOOVIC」といい、だれでも作れるコエのナビ&ガイドサービスです。

これにより、地図利用の面倒さを解決したいです。土地勘のない場所に移動すると、そこに土地勘を持つ誰かがそばにいると、そもそも地図を見る必要がないです。しかしながら、そんな人はいつでも今すぐ、一緒に来てくれるわけでは有りません。

そんなときに活躍する無人のナビガイドサービスを開発しています。
そもそも、なぜこんな事業をやっているのか?というと、
私の子供は移動が難しい当事者だったために、その移動を支援をしてきたことがこの開発に至っています。

世の中には空間認知に障がいを持つ方がいて、移動する際に方向が分からなくなったり、景色が記憶に残りにくく、道順を覚えるのが苦手です。地図アプリを見ながら歩くのも集中しすぎて危険なので、他者に頼らないと外出ができません。

そんな風に、誰でも大なり小なり苦手なことがあるものです。当社は「苦手を苦手と意識しない社会を作る」をビジョンとして、助けとなる技術を皆が自然に享受できるような世界を目指しています。苦手なことがある当事者を救うという発想ではなく、一般の方も苦手なことがある方も同じように、その技術を享受できることが大切だと考えています。高齢者や地図の苦手な人にも使っていただきたいですね。

―2021年度の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に採択されましたが、すでにナビサービスのコンセプトはできていましたね。

山中 享

そうですね。当時は腕に装着するデバイスを想定していました。その後、幾度か形を変え、今は市販のイヤホンを使うようになっています。

―そもそも「五反田バレーアクセラレーションプログラム」には、どのような目的で応募されたのですか?

山中 享

この年のプログラムを運営されていたDMM.comの、秋葉原にあるコワーキングスペースを使ったことがあり、コミュニティマネージャーの紹介でプログラムが開催されるのを知りました。そろそろ融資やエクイティで資金調達をしようと、2021年5月に会社を設立していたので、本腰を入れてビジネスを形にしていくのに役立つと思い、応募したのです。
また、品川区によるプログラムなので、その地域のコミュニティにネットワークができることも期待しました。さらに、ものづくりの起業家を支援するという品川区のコンセプトにも、当社は合致すると思いました。

先輩起業家や大手企業と直接触れ合え、リアルに情報収集できた

 

―プログラムで印象的だったことを教えてください。

山中 享

全6回の研修の中で、先輩起業家がスケールの過程をリアルに話してくださった回があり、とても勉強になりました。起業家の話を聞く機会はそれ以前にもありましたが、後輩起業家である私たちのために資料を用意され、創業期の苦労や工夫にフォーカスして聞かせてくれるような機会は貴重です。この日は2人が話されて時間もそれぞれ1時間と長く、質疑応答もありました。特に印象的だったのはセーフィーの佐渡島社長のお話で、IPO準備の様子や組織の作り方、営業パートナーとのアライアンスの組み方、事業会社との協業のし方など、たいへん参考になりました。

―山中さんは、学研本社の共創スペースで開催された1期・2期の有志による交流会にも参加されていましたね。

山中 享

そうですね。学研のCVC担当者の前でピッチができ、それも貴重な機会でした。教育事業のほか、医療福祉事業も広く手がけられている学研のスタートアップとの共創への考えや投資方針などを直接聞くことができました。

―事業において、プログラムで得られた成果は何でしょうか?

山中 享

何度か事業開発の専門家にメンタリングを受け、フラットに当社の事業モデルに意見をいただけ、強化すべきポイントをアドバイスされました。たとえば、社会課題の解決は大事だが、もっと広く事業を理解してもらえるような取り組みを意識していかねばならないといったことです。それもふまえてブラッシュアップし、最終のDemoDayでよい発表ができました。

―パートナー企業・団体の特典では何が役立ちましたか?

山中 享

AWSのクレジットは活用して、メールサーバーなどに充てました。創業初期で資金調達前でしたので、有難かったです。その他のコワーキングスペースなどの施設は、コロナ禍だったのであまり使えませんでした。今ならもっといろいろ使えたと思います。

―現在は、品川区立の西大井創業支援センターの会員になっていますね。

山中 享

プログラム終了間近の2022年2月にリニューアルオープンしたので見学したところ、きれいで温かみもあり、働きやすいようレイアウトされているので気に入って月額会員になりました。会議室も予約制で使えて便利です。法人登記で住所を使えるので、もともと自宅で登記していたのに加え、こちらも支店として登記しました。

会員になってからは、センター所属のインキュベーションマネージャーとの1on1が月1回あり、事業についてアドバイスや評価をもらえます。事業推進していく上で次に何をすべきかを考える、良い機会になっていますね。

品川発で世界市場を目指し、社会を変える

 

―アクセラレーションプログラム参加後、事業化でどのような進展がありましたか?

山中 享

事業モデルが少しずつしっかりしてきて、2022年8月に資金調達ができました。またスタッフも、それまではプロボノで手伝ってもらっていましたが、正社員を1人雇用しています。ただ、今は人員の増強より事業モデルの構築が課題なので、資金調達で得た資金は事業開発とプロダクト開発に注いでいます。

―プロダクトは現在どのような状況でしょうか?

山中 享

まだ完成形ではないですが、いくつかのフェーズで製品化していこうと考え、2023年10月にフリーミアム版のアプリをローンチしました。自らの声でつくる音声ARナビガイド「LOOVIC Light」で、当社の移動支援テクノロジーの基本部分をまずは体験いただけます。
次に目指すステップは課金することで、収益力を証明したいのです。それができなければ、VCに興味を持ってもらえません。本来なら今が最も資金が必要な時期なので投資を求めていますが、当社の事業は他に競合がなく説得材料が少ないため、自分で実績を作って価値を証明していく必要があります。
2022年に初出展したCEATEC(シーテック:アジア最大級のIT・家電展示会)ではカーナビ業界の方にも興味をもってもらえ、展開に可能性を感じています。また、2023年のCES(セス:米ラスベガスで開催の世界最大級のテクノロジー展示会)にJETRO(日本貿易振興機構)の支援で出展し、ShowStoppers Omdia mobility部門でイノベーションアワードを受賞できました。その後は海外からも引き合いがあり、手応えを感じています。

―その先に目指すゴールを教えてください。

山中 享

この事業を品川発のプロダクトとして世の中に広め、評価されて事業収支が安定し、海外展開を行い、IPOをしていくのを目指しています。
「品川発」にはこだわりを持っていますね。まだまだ無名のときに評価をいただき、アクセラレーションプログラムに採択してもらえたので、恩返ししなければと思っています。

―最後に、起業を考えている人へアドバイスをお願いします。

山中 享

何か機会をもらったら、次はないと思って、できる限りその機会を活かしきることが重要です。今は誘ってくれても、1ヵ月後は誘ってくれないかもしれません。チャンスをものにしていくためにも、何かしら機会があれば、まずはやってみるという考え方でトライしていくべき。失敗経験もまた学びになるものです。

無難なことしかやらなかったり、本音を言わない、空気を読むというばかりでは前に進まないので、PDCAをどんどん回してオープンにしていく。すると本音を語り合え、話が前に進むのだと思います。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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