五反田バレーアクセラレーションプログラム
受講生インタビュー

2024.3.8

【五反田バレーアクセラレーションプログラム アルムナイ特集】 こどもたちの「社会をいきぬく力」を育むための事業に取り組んでいる株式会社Mimmy守屋代表にプログラムでの成果や今後の展望について聞いてみた。

2019年に創業し、異なる価値観や文化をもった人たちとのふれあいを実現して、こどもたちの「社会をいきぬく力」を育めるよう事業を展開してきた株式会社Mimmy (ミミー)。その事業の概要と、2020年に参加した「五反田バレーアクセラレーションプログラム」での成果、今後の展望について、代表取締役CEOの守屋亮さんに聞きました。

(Mimmyの軌跡)
2019年3月 創業(株式会社link&Relations)
2020年7月 第三者割当増資による資金調達
2020年9月~2021年3月 五反田バレーアクセラレーションプログラム1期
2021年5月 第三者割当増資による資金調達
2021年6月 会社商号を株式会社Mimmyに変更
2021年11月 第三者割当増資による資金調達

(プロフィール)
守屋 亮さん 株式会社Mimmy 代表取締役CEO
大学卒業後、松下電工株式会社(現、パナソニックHD)に入社。国内営業に従事後、コーポレート本社にて経営企画を担当し、新規事業開発やグローバルにまたがる全社プロジェクトのリーダーを経験。2019年に株式会社link&Relations(現、株式会社Mimmy)を同社代表取締役社長の関根謙太と共同創業。

 

コロナ禍でピボットを迫られ、アクセラレーションプログラムに参加

 

―まず、御社の事業について教えてください。

守屋 亮

子ども向けのオンライン国際交流サービス「Mimmyアドベンチャー」と、企業向け英語パーソナルトレーニング「オフィス留学」の2つがあります。
まず「Mimmyアドベンチャー」は、Zoomで世界中の特徴あるガイドとライブで交流し、子ども自身が楽しみながら海外の事物や文化に興味を持ち、語学力の土台となるコミュニケーション能力を身につけてもらおうというものです。
「オフィス留学」のほうは、次世代経営幹部層の英語力強化プログラムですが、これも単に語学力を向上させるだけでなく、ビジネスの現場で交渉や交流ができるよう、異文化理解を重視しています。

―創業が2019年3月で、2020年度の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に採択されましたが、そのとき事業はどのような状態でしたか?

守屋 亮

もともと創業時はコロナ禍前で、インバウンドの活況を受け、外国人と日本人をマッチングする国際交流推進を事業化しようとしていました。英語をコミュニケーション手段の1つとして、世界を寄り深く知り、興味を持って活躍する人が増えてほしいという思いからです。しかし、コロナ禍で事業転換を迫られ、オンライン英会話にピボットしましたが、競合が多いので差別化で子ども向けに特化を考えました。ちょうど私も共同創業者も子どもが生まれたりしていたので、子ども向けのコンテンツ提供に関心があったのです。

そんなときに、支援いただいていたエンジェル投資家がSHIP(品川産業支援交流施設)で登壇されて、品川区がアクセラレーションプログラムを始めるそうだと聞きました。それで、事業アイデアをブラッシュアップさせるため、応募したのです。

子ども向けにシフトした事業の具現化を、がんがん壁打ちしてもらった

 

―実際、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」の中で、どのように事業化を進められたのですか?

守屋 亮

主に「Mimmyアドベンチャー」について、エンジェル投資家に壁打ちしてもらっていた内容を、このプログラムの中でプレゼンしていき、サービスを固めていきました。
最初は、動画をキュレーションして子ども向けに配信し、英語に興味を持ってもらうアイデアでしたが、より独自性を出せるよう、ちょうど世の中に浸透してきたオンライン会議ツールを使って、海外の人と直接話せるコンテンツを提供することにしました。そして、これは今も続けていますが、インスタグラムなどでユニークな発信をしている人に直接メッセージを送り、その国のことを日本の子どもたちに見せてほしいと依頼。それを、我が家の幼稚園と小学生の子に見せて、楽しめるか確認したのです。すると、子どもたちは英語で話されている空間でも楽しんで、自分もがんばって何かしら伝えようとしたのです。そんな前向きな様子は初めてで、これは事業のタネになると思ったのが、アクセラレーションプログラムが始まった頃でした。
そうして、このタネを今から事業化していきたいとプログラムで話し、メンターや他の参加者に壁打ちしてもらい、半年間で内容を固めて翌年2月、一般向けにサービスを開始させました。

―プログラムで役立ったことを教えてください。

守屋 亮

この年のプログラムの運営を担っていたCreww(クルー)株式会社はスタートアップ支援の経験が豊富だったため、直接オフィスを伺っていろいろアドバイスをいただいていました。担当者の方がこの事業に興味を持ってくれ、ご自身のお子さんをイメージして、子どもの目線ならこうじゃないかとか、マネタイズに関しても親身に相談にのってくれたのです。また、教育系スタートアップの事例をいろいろ教えてもらい、そうしたものの自分のアイデアへの活かし方なども勉強になりましたね。

そもそも、教育事業は一般的には利益を大きくは出しにくく、スタートアップらしい指数関数的成長は期待しづらいのですが、人の基本となるのは子どもの頃の教育だという当社の考えに多くの方が共感いただき、それぞれに熱意や思いを持ってアドバイスをもらえます。このアクセラレーションプログラムで出会った多くの方々にもそうして助けていただきました。

―プログラムの参加者は20社ほどでしたが、研修などで事業アイデアを話し合う機会もありましたか?

守屋 亮

それもたいへん助けになりました。ただ、私や共同創業者は仕事で海外の社員や商談相手とコミュニケーションする中で、既存の英語教育やトレーニングで身につけた語学力だけでは通用しないものがあるといった原体験があります。ですから、子どものときからいろいろな国の文化や言葉に触れることが大事だと思うのですが、そうした経験がない人は、科目の英語教育の感覚から抜け出しにくかったように思います。

逆に言えば、同じような原体験がある人はものすごく共感してもらえるのですが、意外と少数派だったりもしますので、事業化においては過信しすぎてはいけないとも感じています。

起業家仲間やコミュニティが、スケールを助けてくれる

 

―そのほかに、プログラムで印象的だったことはありますか?

守屋 亮

起業の同じようなフェーズの仲間が作れたことが、大きな収穫です。半年間、毎月ある研修などでいろいろ議論や意見交換ができました。特に当社のような創業1年目くらいでは、1~2人で事業に関して試行錯誤しています。そうしてやりたいことが徐々に見えてくると、次のステップでまた難題に突き当たったりするもの。そんな風に苦しいなか、どのように工夫しているかなどを共有できました。
実はいま入居しているオフィスも、同じようなフェーズのスタートアップが集まっていて、勉強会などで交流しています。こうしたコミュニティの大切さに気づけたのは、五反田バレーアクセラレーションプログラムでの経験からですね。

―アクセラレーションプログラムの参加者と共有されて良かったのは、どのような内容ですか?

守屋 亮

まず人材採用についてですね。皆、共同創業者やコアメンバーだけなので、スケールに向けて採用や組織づくりが必要です。当社も、共同創業の2人ともエンジニアではないので、アイデアは出せますがサービスを作れません。そこで、エンジニアはどう探せばよいかと聞いて、エンジニア専門の人材サイトを教えてもらったりしました。
また、先を見据えて、資金調達をどういう風にやっているかですね。銀行で初めて融資をしてもらうときも、事業計画書の書き方などをざっくばらんに教え合いました。本やネットでは分からないような、「それ、どういう風にやったの?」といったことが聞けたのは大きかったです。
プログラム終了後もときどき連絡を取り合ったりしています。Crewwには今も半年に一度は近況報告をしています。当社の事業フェーズに合わせて、専門家を紹介してくれたりして、そういう縁ができたのも良かったですね。

―最後に、スタートアップとして成長を目指す人へアドバイスをお願いします。

守屋 亮

創業期は、アクセラレーションプログラムなどを通してコミュニティに参加するなどして、とにかく多くの人に出会うことが大事。事業や会社の成長に、きっと役立つはずです。これが投資家が相手だと、気を使ったり、いわれたことを無視できなかったりしそうですが、フラットな関係でいろいろ議論させてもらえ、アドバイスいただけるような人を、とにかくたくさん会って探していくべきでしょう。
私は前職の関係者とも連絡を取り合っています。そういうことを通じて、自分の事業を応援してくれる人が世の中にたくさんいるのだと、この5年ほど強く実感しています。たとえば、知り合いを通じて日野市の教育委員会の方を紹介いただいた縁で、市内の公立小学校17校で「Mimmyアドベンチャー」が導入されました。
そう思えたのは、五反田バレーアクセラレーションプログラムがきっかけです。あそこでいろいろアイデアを出せましたし、ピッチ後に面白そうだと声をかけてくれた人がその後出資してくださったり、事業パートナーになってくれたりしています。ぜひ、人との出会いをうまく生かしてみてください。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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