【五反田バレーアクセラレーションプログラム アルムナイ特集】 エクセルライクにデータ分析ができる、データ統一クラウドを展開する、株式会社Srush樋口代表にプログラムでの成果や今後の展望について聞いてみた。
2019年11月に創業し、ピボットを経て現在は「データを誰にとっても身近なものにする」をビジョンとして、誰でも簡単にすぐにデータ分析を可能にするデータ統一クラウド「Srush」を提供している株式会社Srush(スラッシュ)。その事業の概要と、2020年に参加した「五反田バレーアクセラレーションプログラム」での成果、その後のピボットや今後の展望について、代表取締役CEOの樋口海さんに聞きました。
データ統一クラウド「Srush」サービスサイト https://www.srush.co.jp/
(Srushの軌跡)
2019年11月 創業
2020年5月 第三者割当増資を実施 シードラウンドにて5000万円を調達
2020年9月~2021年3月 五反田バレーアクセラレーションプログラム1期
2020年12月 第三者割当増資を実施 融資と合わせ総額8000万円を調達
2022年7月 第三者割当増資を実施 プレシリーズAラウンドにて融資と合わせ1.8億円を調達
2023年11月 第三者割当増資を実施 シリーズAラウンドにて総額4億円を調達
(プロフィール)
樋口海さん 株式会社Srush 代表取締役CEO / Co-Founder
NTTの法人営業部にて大手自動車を担当、グローバルインフラの導入に従事し、全社表彰や最高評価を受賞。退職後、シンガポールにて日系製造業の営業戦略を担当。帰国後、製造業向けSaaSを提供する会社の立ち上げを経て、2019年11月、代表取締役として株式会社Srushを共同創業。 早稲田大学卒、一橋大学大学院商学研究科修了(MBA)
誰でも簡単にデータ管理・分析ができるツールで、日本企業の経営に貢献
―まず、Srushの事業について教えてください。
樋口 海
誰でも簡単に、ノーコードでデータ基盤を構築し、すぐに分析を始められるオールインワンのデータ分析ツール「データ統一クラウドSrush」を開発・提供しています。
昨今の経営にはデータ分析が重要であり、社内にあるデータを管理・活用する必要があります。そのために多くの企業でBIツールが導入されていますが、ほとんどが外資系企業が提供するツールのため、日本人には使いにくかったり、サポート体制があまり整っていなかったりします。また、BIツールとはそもそもグラフの描画ツールであり、データを見やすく整えるものに過ぎません。そのため、実際にデータ分析を行うには、社内各所に散在するデータを集約・蓄積して、分析できるように加工するデータ基盤が必要であり、その整備には専門のエンジニアが必要です。また、データの種類も購買、顧客、会計、マーケティングなど多岐に渡り、それぞれを扱っているツールも異なるので連携させる必要があります。
「Srush」は、このデータ基盤とBI機能をオールインワンで提供するもので、ノーコードで100種類以上のサービスとデータ連携が可能です。さらに、データ加工もエクセルを扱うように簡単に行えるのが特徴です。
―ユーザーはどのような企業が多いのですか?
樋口 海
データの管理や活用に課題を感じておられる企業ということで、現在累積で50社近くに導入されています。最近は外食チェーンなどの大手企業でも使われていますが、特徴的なのは、年商100億円以上の地方の優良企業がお客様に多いことです。問合せフォームからご相談をいただくことが多く、やはり日本企業にはエンジニアが不足しているのだと実感しますね。Srushなら特別なスキルがなくとも、エクセルを扱うような感覚でデータ管理・分析ができるのでお喜び頂いております。
SHIPのオープンラウンジ無償利用で、前のオフィスは解約
―2020年の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に応募された理由を教えてください。
樋口 海
特典として、大崎にあるSHIP(品川産業支援交流施設)のオープンラウンジが無償利用できるのが、大きな目的でした。当時は社員が4~5名で、別のコワーキングスペースを使っていましたが、そちらを解約して、週1回はSHIPに行きましたね。共同創業者も私も品川区在住なので近かったですし、会議室を1日予約してメンバーで議論できたのが良かったです。
―樋口さんには、プログラム修了後に参加者座談会にも出ていただきました。そのときのお話では、もともと品川区の助成金などの支援をかなり活用していたそうですね。
樋口 海
そうですね。実はSrushの前に、港区でも起業しているのですが、そのときよりも品川区のほうが創業支援は手厚かったです。今は中央区に拠点を移していますが、やはり創業するなら品川区だと改めて感じています。
―研修の内容などで役立ったことはありましたか?
樋口 海
私自身、最初の資金調達は終えた状態でプログラムに参加していたのですが、それでもプログラムを企画・運営していたCrewwの方による研修は内容が実践的で、勉強になりました。資金調達に関しても、ピッチのポイントなどを聞けたのは良かったです。先輩起業家の体験を伺うのも、自分の1歩2歩くらい前を行く、シリーズB~Cくらいの方だと、リアルに役立つ話が聞けると思いました。
また、Crewwが運営するWebメディアに取材してもらえたのも有難かったです。創業したばかりの無名な時期に取り上げてもらえ、露出ができました。
創業~PMFまでは「誰の何の課題を解決するのか」を徹底的に追うべき
―「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に参加された後にピボットをされたそうですが、詳細を教えてください。
樋口 海
当初は、営業向けアシスタントツール事業で起業しました。しかしながら、すぐにコロナ禍となり、営業の働き方が大きく変わったこともあり、あまりにもトラクションが伸びず、ローンチ後1ヵ月でピボットを決めました。元々、営業のデータを蓄積した上で、データ活用をしていくロードマップがあったので、データ分析そのものに軸足をずらすことにしました。そして、調査していくと営業に限らず、データ分析そのものが日本企業の課題ではないかと仮説立て出来ました。実際、1社あたりのSaaS導入数が増え、データ量が膨大になっていました。加えて「2025年の崖」といわれるように老朽化・複雑化した既存システムの刷新が急がれる状況下で、データ管理体制の構築も企業には求められています。そこで、データ統一クラウドというアイデアに突き進むことを決め、現在に至ります。
―今後の展望はどのように考えていますか?
樋口 海
直近で調達した資金を使って、目標とするMRR/ARR(月次/年間経常利益)を達成するべく、トラクションを創っていきます。また、生成AIはデータ分析にとって追い風であり、自然言語で質問・依頼するだけで事業動向の把握が可能なAI機能も備え始めていますが、この研究開発にも注力していきたいですね。
―スタートアップとして成長を目指す人へアドバイスをお願いします。
樋口 海
「誰の何の課題を解決するのか」がスタートアップに求められるポイントですので、徹底的にその解像度を高め続けていくことが大事だと思います。そこが明確になって「コレだ!」と思う瞬間が来る、つまり、それがPMF(プロダクトマーケットフィット)なわけですが、それまでは、広報や採用などの活動はしたくても抑えるべきだと思ってます。ぜひ、愚直に「誰の何の課題を解決するのか」を考え抜いていってください。
執筆者
取材ライター
久保田 かおる
インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。