【五反田バレーアクセラレーションプログラム アルムナイ特集】 誰もがノーコードツールを使いこなせるリスキリングの提供で、中小企業のDXを推進する株式会社セラピア 田中代表にプログラムでの成果や今後の展望について聞いてみた。
「現場を変え、常識を変え、社会を変える」をミッションとして、世界中のノーコードツールを活用し、デジタル教育とインフラ構築に注力するべくビジネスを展開している株式会社セラピア。その事業の概要と、2022年に参加した「五反田バレーアクセラレーションプログラム」で役立ったこと、その後の事業展開について、代表取締役の田中圭さんに聞きました。
(セラピアの軌跡)
2020年10月 創業
2022年9月~2023年3月 五反田バレーアクセラレーションプログラム3期 参加
(プロフィール)
田中圭さん 株式会社セラピア 代表取締役
製薬会社でワクチン開発をした経験から着想を得て、2020年10月に株式会社セラピアを創業。
ツール導入だけでは進まない、ノーコードの社会実装を「人」から実現させる
―まず、セラピアの事業について教えてください。
田中 圭
昨今は企業活動においてDXが掲げられ、ITや情報システム部門ではない社員でもノーコードツールを使って、プログラミングの知識がなくても業務アプリなどを自製することが求められています。ですが、特に中小企業で、ツールは導入したものの現場でうまく活用がされていないことが課題となっているのです。実際、ツールの導入に際しては国や自治体も補助金などで支援を行っていますが、その先に問題がある状態です。
そこで当社では、ノーコードツールを使えるようにする社員研修を行う、DX人材育成事業を行っています。真に誰にでも使いやすく、コストパフォーマンスも良いと思われるノーコードツールを使って、実際に業務で活用するためのアプリを作れるように指導します。
―中小企業ということですが、どのようなお客様がいるのですか?
田中 圭
もともと創業地である墨田区にある中小企業から、ベンダーに勧められるままにITツールを導入したが現場が使えておらず、コストだけかかり続けているという声を多く聞きました。ちょうど「DXの成功率は7%」といわれ始めており、その状況を目の当たりにして、ここに大きな社会課題があると思いました。
そうして、区のプロトタイプ実証実験支援事業に採択されて、実際にある会社でITリテラシーが高くはない社員の教育を行ったところ、DX化が進み、会社全体の意識改革につながったのです。その成果が大きく、視察された同じような規模・体制の中小企業からも引き合いを多くいただくようになりました。
―中小企業に共通した課題であり、業界や地域を問わずニーズがあるということでしょうか?
田中 圭
そうですね。地域という意味では、私の出身地である愛媛県のデジタル化推進事業にも採択されて、地元のものづくりの中小企業で同様の社員教育を実施しました。その様子は地元テレビ局にも取材されて反響をいただきました。
このように自治体の施策を活用することで、スタートアップでも地域に展開していくことができるのですね。そのためにもまず成功事例を作ることが大事ですが、当社では東京での実証実験の事例が役立ちました。
近しいフェーズの起業家間で、毎月じっくり交流&意見交換
―創業されたのは2020年10月とのことですが、2021年の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に応募された理由を教えてください。
田中 圭
会社員時代の勤務地が大崎だったので愛着があり、品川エリアで何か仕事につながることができればと思っていたのです。また、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」は前年の様子をサイトなどで見ていて興味を持ち、応募を決めました。参加の起業家同士やパートナー企業・団体などと連携が深められそうなのが魅力でした。
―実際にネットワーキングはうまくいきましたか?
田中 圭
参加者同士のつながりは期待以上でしたね。この期は特に、全6回の研修ごとにグループメンタリングの時間が30分以上あり、毎回異なる3~4人で事業の現状や課題、相談事などを話し合うことができました。また、研修のなかでも今出たトピックスについて隣の席の人と意見交換したりなど、自ずと交流が深められるようなプログラムになっていると感じました。実際、プログラム修了後も連絡を取り合っている人が3人はいますね。当時一緒に過ごした仲間として、その後どうなっているかは興味があります。
パートナー企業との連携は、いろいろアプローチはしましたが難しかったです。コミュニケーション自体は歓迎してもらえたのですが、具体的な業務提携などにはつながりませんでした。ただ、当社事業についての評価などを肌感覚で知れたのは収穫だったと思います。
―そのほか、役立ったことがあれば教えてください。
田中 圭
特典では、SHIP(品川産業振興支援施設)をよく使わせてもらいました。前職の知人と会った後で仕事をしたりしましたが、快適でした。
研修では、スタートアップのための広報・PR術の回が役立ちました。WebやSNSを活用する、広報の最新動向が目新しく興味深かったのと、スタートアップが具体的にどのような手段を講じていけるかが数多く示されたのが印象的でした。
―田中さんは自身の起業前から、起業支援活動をされていたそうですね。その経験があっても、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に参加した意義はありましたか?
田中 圭
そうですね。起業の5年ほど前から、スタートアップウィークエンドというアメリカ発のイベント主催団体の運営に参画してきました。起業家の卵を集めてフィンテックなどのテーマでハッカソンを行い、VCに審査してもらうといった活動です。
そのためスタートアップに関する知識や近年の状況は分かっていましたが、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に期待したのはネットワーキングです。その点で非常に満足できました。
採用する1人のあり様が、その後の事業成長や組織風土に大きく影響
―セラピアの事業について、今後の展望を教えてください。
田中 圭
再現性を持って他社や他県にも広げられる手応えを得られましたので、着実に広げていきたいですね。スタッフは今、エンジニア3名、デザイナー1名、事業開発1名、バックオフィス2名で、うち正社員は1名であとは業務委託です。私自身が事業の大きな絵を描き、メンバーに下ろして動いてもらっています。また、案件が30件ほど動いているので、私がプロジェクトマネジメントを担っています。そろそろ採用も強化していきたいです。
―最後に、スタートアップとして成長を目指す人へアドバイスをお願いします。
田中 圭
スケールを目指すなかで、今もっとも課題だと感じているのは採用です。スピード感をもって事業を伸ばしていくには人の力が必要であり、どのような人材を採用するかでスピード感が全く違ってしまうもの。ですからスタートアップにとっては、その1人の影響力が途轍もなく大きいといえます。
求めたいのは、受身でなく自分で考え、動いてくれる人です。自走できる人が1人いると、その周辺も自然と活性化するでしょう。スタートアップではそういう人を採用できるかが重要だと思います。
執筆者
取材ライター
久保田 かおる
インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。