アクセラレーションプログラム
受講生インタビュー

2025.3.31

【五反田バレーアクセラレーションプログラム アルムナイ特集】工場や公共施設で電気代の内訳を見える化するスマート電流計で、節電・省エネに貢献する株式会社EnergyColoring代表にプログラムでの成果や今後の展望について聞いてみた。

電力の用途内訳を、電気工事不要で設置できる電流計センサと設置直後から遠隔監視可能なリアルタイムダッシュボードで見える化するサブスクサービス「EnergyColoring」を提供する株式会社EnergyColoring(エナジーカラリング)。その事業の概要と、2022年に参加した「五反田バレーアクセラレーションプログラム」で役立ったこと、その後の事業展開について、代表取締役の髙橋真吾さんに聞きました。

(EnergyColoringの軌跡)
2019年4月 創業
2022年9月~2023年3月 五反田バレーアクセラレーションプログラム第3期 参加

(プロフィール)
髙橋真吾さん 株式会社EnergyColoring 代表取締役
2017年より研究者有志団体にて廃棄スマートフォンの再利用したIoT技術検討・開発を開始。2019年、研究者有志団体にて開発した電流波形のディスアグリゲーション技術を事業化するべく、株式会社EnergyColoringを創業。

 

フロアや建物の電力使用箇所・電力量を把握し、対策に役立てる

 

―まず、EnergyColoringの事業について教えてください。

髙橋 真吾

商工業分野向けにスマート電流計を、サブスクリプションで提供しています。普通の電流計はセンサー1つに対し、1件のデータしか取れないのですが、当社のセンサーはクラウドに搭載したAIで計測結果を分析するため、1つのセンサーあたり16件のデータを把握できます。つまり、フロアの電気室やビル屋上・工場に設置すると、フロアや建物全体の電力用途の内訳が、空調に何割、照明器具に何割などと分かるわけで、その可視化されたデータが節電や脱炭素対策に役立てられるのです。

―商工業分野向けということですが、どのようなお客様がいるのですか?

髙橋 真吾

工場であれば、大手メーカーの特定のラインであったり、中小メーカーの工場全体などがあります。また、スーパーや自社ビルなど、お客様自身で結果を受けて対応することができるケースが多いです。
そのほか、テナントのお客様であれば、ビルオーナーから月次の電気料を請求されて支払うわけですが、独自にフロアに設置して、節約できるよう内訳を確認したいというニーズもあります。それにより、たとえば夜間になぜか照明が使われており、ビルオーナーに問い合わせると清掃がその時間帯に行われていたと分かった例もあります。
このデータは、数値で客観的に使用状況が分かるわけですが、当社独自の技術によるもので、似た技術を商業展開している競合企業は世界に3社あるだけです。個人的には、競合といってもライバルというよりも同じ夢を見る同志だと思っています。そのため、一般的には見慣れないデータといえますので、当社でもデータを一緒に見て対策を考えたりもしています。

―御社の技術優位性はどこから来ているのですか?

髙橋 真吾

そもそも創業メンバー4人全員が企業研究者であり、有志団体として会社設立の約2年前から技術開発や検証に取り組んでいたのです。新しい技術を世の中に展開したいという思いで、さまざまな着眼点を検証しました。そうして最初に行ったのが、スマホを再利用したIoTプラットフォームの構築です。しかし電池の寿命があり、中古なのであまり使ってもらえないと分かり、アプリ開発に舵を切りました。そうして調べると、どうやらスマホのマイクで電流を測ることができそうだと分かり、世の中にないものを実装しようといってうまく行ったのがEnergyColoringになったのです。それで実際に売上も立ちそうになったため、会社を設立しました。

全ての受講者と総当りで交流・意見交換ができたのが、ミライの糧に

 
―そうして2019年4月に創業されたわけですが、2022年の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に応募された理由を教えてください。

髙橋 真吾

事業、というか技術についてはほぼ確立していたのですが、創業メンバーがみな研究者であり、あまりスタートアップ気質のない会社でした。必要な知識はインターネットと書籍、税理士、弁護士によるものが全てだったので、スタートアップ文化というものを知りたかったのと、起業家の仲間が欲しいと思っていたところに、五反田バレーのアクセラレーションプログラムがあると知り、ちょうどよいと思って応募しました。
また、当社は創業メンバーすら年に一度会うか会わないうえに、全国に散っているのもあって、特にオフィスを設けていませんが、将来的にオフィスを構えるなら品川区もいいと思ったのもあります。法人登記する際に、品川区の創業支援センターも検討して、東京なら創業支援については品川区が手厚いという印象を持ちました。

―実際に参加されてみて、役立ったことはありましたか?

髙橋 真吾

私たち受講者を盛り立てよう、支援しようという意気込みをとても感じました。実際、第3期のプログラムでは起業家コミュニティの創出に向け、受講者間の交流を深めることを目指すと聞いていました。プログラムに参加してみるとそのとおりで、月1回の研修では必ずグループメンタリングとして、受講者同士で事業を進めるに当たっての悩みや相談、進捗などを話し合う場が設けられており、結果的に全ての受講者と、近しいフェーズの起業家同士のかなり深い話をすることができました。また、研修の後は自然発生的に誘い合ってご飯を食べに行ったりもしましたし、研修以外にもいろいろな場が企画されていたので、都合がつけば積極的に参加するようにしていました。
ですから、起業家の仲間が欲しいという当初目的は達成できたと思います。同期のなかで、同じようなエネルギー領域で事業を行っているテックシンカーの洪さんとは今でもオープンイノベーション系のイベントなどでよく顔を合わせていますし、セラピアの田中さんとはCEATECでお互い出展社として一緒になりました。そんなときにも気軽に声をかけられるのは、プログラム期間中のコミュニケーションがしっかり取れていたからですね。
また、ネットや書籍で見るスタートアップの事例というのはキラキラした印象で、研究者である自分とは別世界のように思っていたのですが、今回のプログラムの受講者は、事業内容も中小企業や地域の飲食店に向けたものだったりと、地に足のついた感じの方が多く、近しい感じを持てたのもよかったです。

―プログラムの特典や支援策で役立ったものはありましたか?

髙橋 真吾

PR TIMESのプレスリリース配信サービスやAWSのクレジットはとても助かりました。いずれもプログラム期間前から利用したのですが、PR TIMESは創業時の2年間無料というスタートアップ向けのサービスをちょうど使い切ったところだったので、さらにプログラムの特典で半年間無料で使うことができました。AWSのほうは、当時円安が進んでサーバー代が突如1.5倍になったのを、プログラムの特典のクレジットで少し緩和することができました。

―そのほか、役立ったことがあれば教えてください。

髙橋 真吾

大きかったのは品川産業支援交流施設SHIPに実証実験を提案して、実際にやらせてもらったことです。プログラムが始まって2~3ヵ月した頃に、受講者4人で誘いあって、SHIPにプレゼンを行いました。その後は個別に話を進めて、当社では2023年1月から4月にかけて、SHIPで電力見える化実証実験ということで装置を設置してデータを分析させてもらいました。設置に関しては、品川区の大崎電気工業にも協力をいただき、また、公共施設での実証実験としてプレスリリースを出すときのインパクトを考え、並行して府中市にも同様の提案をして了承を得ることができ、両施設での実証実験としてプレスリリースを打つことができました。当然PR TIMESさんでリリースしました。

 

受講者同士も講師とも、フラットな関係を築くことができる

 

―事業について、今後の展望を教えてください。

髙橋 真吾

スケールさせたいと思い、2023年は創業メンバー4人のほかに業務委託の力も借りて15人程度で回していました。ところが残念ながら、思ったほど売上につながらなかったため、元のメンバー体制に戻しました。この決断をするにも、アクセラレーションプログラムでの学びが参考になったと思います。AIがもてはやされ始めた時期に、今後AIに置き換えられる仕事という記事が注力されたと思います。まさにその通りで、弊社自身が人を増やすのではなくAIをどんどん取り入れることで、人数に依存しない売り上げ構造や事業構造を作る着想が得られました。売り上げはまだまだですが、アクセラレーションプログラムのおかげで、無理のない成長を維持できています。
今は、大手・中小含め、いろいろな企業と連携してリソースも借りながら、仕組みを強化して当社だけではできないような大きなビジネスに仕立てていこうと考えています。資金調達や売却などは、そのためのプロセスに過ぎないと考えていますので、必要があればやりますが、何より、自分たちの技術を社会実装していきたいというのが創業メンバーの願いです。

―最後に、スタートアップとして成長を目指す人へアドバイスをお願いします。

髙橋 真吾

スタートアップ同士というのは、ある意味ではライバルになり得るかもしれませんが、こうしたアクセラレーションプログラムで出会った同士はフラットに悩み相談もしあえるような関係になり得ます。研修の講師とも、師弟や上下関係よりも比較的フラットに対することができました。講師自体がさまざまなバックグラウンドを持っていますので、それをふまえて話を聞いたり、関係を深めればよいでしょう。そんな風に、さまざまな人の話に触れ、利害関係のないところで仲間を創るというのにこうしたプログラムをぜひ活用してみてください。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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