【イベントレポート】3月のDemo Dayに向け、審査員からのフィードバックでピッチをブラッシュアップ「五反田バレーアクセラレーションプログラム 研修③ 中間発表会」
開催日
2024年11月14日
会場
Tokyo Innovation Base(TIB)
SusHi Tech Square(スシテックスクエア)2階
参加費
ー
詳細
品川区が、スタートアップの集積地「五反田バレー」の認知度アップや地域活力の向上、区内産業全体の活性化を図るべく実施している「五反田バレーアクセラレーションプログラム2024」。株式会社ゼロワンブースターと連携して2025年3月までの約6ヵ月間、実施中のプログラムから、今回は2024年11月14日に、東京・有楽町のSusHi Tech Square(スシテックスクエア)2階 Tokyo Innovation Base(TIB)で開催された「研修③ 中間発表会」の様子を紹介します。
3分間ピッチで、事業の進捗やプログラムでの気づきを発表
「五反田バレーアクセラレーションプログラム2024」では、資金調達や事業会社との連携に役立つよう、自身の事業内容を説明・アピールする「ピッチ」を行う機会がふんだんに用意されています。
まず、9月のKick-Offイベントで受講者全員がパートナー企業・団体を前にしてピッチを実施。その後も毎月の研修で希望者がピッチフィードバックを行い、受講者間で忌憚なくアドバイスや意見交換。そのほか、有志参加のパートナー企業やVC・金融機関との相談・交流会などでもピッチの機会を設けています。そうして3月に開催するDemo Day(前回の様子はこちら)で、再びパートナー企業・団体を前にして受講者全員がピッチを行うのが、本プログラムのゴールとなっています。
さらに今年のプログラムでは、昨年受講者からの提案を受けて、全員による中間発表会をやることになったのが、本研修です。受講者全員が、1社につき3分間のピッチを行い、各発表ごとに審査員が1名コメントします。それ以外に、審査員は手元で全てのピッチに対してコメントを記入しており、それも後日受講者に渡されます。また、今回のピッチは、Demo Dayと同様に3分ぴったりで終了。残り時間を示す時計が登壇者のすぐ横に置かれており、ピッチの時間感覚の学びにもなります。
ピッチの内容には、Kick-Off以降の事業の進捗や、他受講者との交流から得た気づきなどを盛り込むこと。また、パートナー企業や他受講者への連携や協力を呼びかけるメッセージ、Demo Dayに向けた意気込みなども奨励されました。
審査員は、五反田バレーから代表理事の中村岳人氏とコグラフ㈱代表の森善隆氏、五反田バレーアクセラレーションプログラムのメンターから㈱インダストリー・ワン シニアマネージャーの吉本正氏と㈱ちゅうぎんキャピタルパートナーズ取締役の石元玲氏、そして㈱ゼロワンブースター代表取締役会長の鈴木規文氏の5名。聴衆の最前列にずらりと並び、登壇者のすぐ目の前で真剣にピッチに聞き入ります。
審査員からの、厳しくもためになる指摘や改善点のアドバイス
実際に審査員からの指摘やアドバイスには、以下のようなものがありました。
・【デジタル上の本人確認技術DID/VCによるサービス】魅力的な構想だが、個人情報を扱うとなると見込み顧客となる企業側に警戒されやすい。Demo Dayまでにピッチとして説得力を増すために、安全性や座組みの具体例などを補強してほしい。
・【暗号技術によるワークフロー業務のハンコのDX】まずハンコによる承認や契約という概念自体が先細りに思われる。電子サインなどの競合があるなかで、バリュープロポジション(競合が提供できていない独自の価値)を今一度見直してみては。
・【女子スポーツチーム向けコンディショニングアプリ】3分のピッチなのに背景説明に2分かけていて、もったいない。トラクションが豊富なので事例紹介をもっと厚くしては。また、女子向けに限らず、競合との比較を入れると優位性がより際立つと思う。
・【シェフによる高齢者施設向け出張料理サービス】施設や入居者がコストをかけてまでやりたいと思えるサービスに仕立て上げられるかが大事。これから実証実験を行う場合には、価格設定など、その点に留意してやってほしい。
・【乳幼児の睡眠データから個別の寝かせつけアドバイスを提供するアプリ】プログラム期間中に、ママ同士のコミュニティサービスからピボットしたそうだが、睡眠や健康を扱うとなると医療的根拠が必要では。既存の育児記録管理アプリなどとの差別化も考えてほしい。
・【企業/商品情報から毎日自動運用できるAIマーケティングツール】人手不足だから労働効率性の向上、コストダウン、マーケティングミックスの最適化など、情報が多過ぎる。同種のツールが広まると、ロボアドバイザーのように競争優位性がなくなってしまうので、メインのバリュープロポジションを明確にして事業開発を進めるべき。
・【新規事業担当者向けAI技術検証サービス】基本的にコンサルモデルのようだが、それだと労働集約的でスケールが難しいので、顧客に共通する課題などを早期に見つけ、サービス化/プロダクト化を進めては。
・【発達障害、不登校など困難を持つ子ども向け教材の制作】非営利事業でなく、営利ビジネスでやるなら「誰が、お金を払ってまで解決したいものは何か」のピン止めが必要。資料の冒頭で「積極的に活用してほしい子どもたち」を例示しているが、この主語が今はあなた(発表者)になっている。これを、市場が主語の構造に変えてほしい。
<strongピッチへの意見をその場で聞けた貴重な機会を、今後に活かしてほしい
最後に、審査員の方々から以下のような講評があり、受講者もその言葉を改めて胸に刻んでいる様子でした。
「ピッチでは説得力を持たせるのがゴールになりがちだが、究極的には誰にどのような価値提供をすることで投資を得られるかが大事。改めてバリュープロポジションを考えてみて、それを磨いてほしい」
「このプログラムも5期目だが、年々レベルアップしていると感じる。ぜひ、こうしたプログラムや五反田バレーをうまく使って、さまざまな意見をもらいながら、自身の目標達成を目指してほしい」
「3分間という短いピッチでも、ビジネスモデルを完結に伝え、実現可能なモデルであると理解させねばならない。そのために、いろいろな人の前でピッチの練習を重ね、ブラッシュアップしてほしい。そこまでやっているかは、聞けば分かるもの」
「今日は厳しいことも言ったが、市場はもっと冷たいどころか無視するだけなので、今のうちに一生懸命いっぱい怒られてほしい。お金を払ってまで解決したいことは何か。これさえ伝われば、投資家はビジネスプランを聞かずとも、マーケットがありそうだと直感できる。Demo Dayまでにぜひそこを押さえ、走り抜けてほしい」
その後は、審査員も交えて交流会が持たれました。改めて審査員に、指摘やアドバイスを受けた点について相談する姿や、受講者間でも互いの進捗や健闘を称えあったりする様子が見られました。
執筆者
取材ライター
久保田 かおる
インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。