【イベントレポート】スタートアップ支援策の共有&互いのアセットを活かしあう連携への第一歩!「品川区×仙台市 スタートアップ・エコシステム拠点都市連携イベント」

イベントレポート 2025.4.28

【イベントレポート】スタートアップ支援策の共有&互いのアセットを活かしあう連携への第一歩!「品川区×仙台市 スタートアップ・エコシステム拠点都市連携イベント」

開催日

2025年01月15日

会場

仙台スタートアップスタジオ

参加費

詳細

品川区では、スタートアップ・エコシステム構築に向けた取り組みの一環として、仙台市と連携したイベントを開催。品川区・仙台市それぞれにおけるスタートアップ支援のあり方や今後の連携の方向性を語り合うトークセッションや、品川区のスタートアップ3社によるピッチが行われました。2025年1月15日に、「仙台スタートアップスタジオ」にて行われたイベントの様子を紹介します。

 

地域ごとに特色ある、スタートアップ支援の中身を紹介

会場となった「仙台スタートアップスタジオ」は、2024年3月にグランドオープンした仙台市のスタートアップ育成やR&Dの拠点「YUI NOS(ユイノス)」内にあり、ワーキングスペースやシェアオフィスなどを備えた産官学一体のスタートアップ支援空間となっています。

プログラムは、仙台市、品川区それぞれのスタートアップ支援の取り組み紹介から始まりました。

最初に仙台市スタートアップ支援課の鎌倉氏より、「仙台スタートアップスタジオ」で行っている支援内容を紹介。各種イベントや集中支援プログラムを開催するほか、仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会のメンバーや有識者、先輩経営者、投資家が対応する「窓口相談」や、仙台経済同友会と連携して地域の経営者が対応する「アドバイザリーボード」、首都圏で活躍する経営者やVC、エンジェル投資家が対応する「メンターズボックス」を運営して、壁打ちやメンタリング、アドバイスを実施しているとのこと。
また、同スタジオをハブとして仙台市起業支援センター、INTILAQ東北イノベーションセンター、CIC Tokyo、東北大学などと連携し、首都圏や国内外から支援人材、スタートアップ人材などの呼び込みに注力しているといいます。
さらに、仙台市としてもスタートアップ支援を重点施策としており、2025年2月には仙台市や他の支援機関とのタイアップで2週間にわたり、スタートアップに関するイベントを多発的に行う「SENDAI for Startups! 2025」を開催。
このような施策で、仙台・東北から世界を変えるスタートアップの創出を目指しているとのことでした。

引き続き、品川区の創業スタートアップ支援担当の栗原課長が登壇。現在、品川区にはスタートアップが約400社あり、うち約6割が五反田・大崎エリアに集積。Forbes Japanの日本の起業家ランキング1位に選ばれたセーフィーなど、IT系スタートアップを多数輩出していると伝えられました。
スタートアップ支援としては、創業支援施設が複数あり、品川産業支援交流施設SHIPではコワーキングスペースやオフィスを有するほか、ものづくり産業の盛んな品川区らしく工房を備え、3Dプリンターやレーザーカッターで試作の支援も可能。
また、女性起業家支援は15年ほど前から注力しており、毎年開催の女性に特化したビジネスコンテスト「ウーマンズビジネスグランプリin品川」には全国や海外から100名近くがエントリー。そのほか、小中学生向けのアントレプレナーシッププログラムも提供。そして2024年度より「品川スタートアップ・エコシステム」をスタート。半年で約130社が会員となっており、地域全体でスタートアップ支援の機運が高まっていることが紹介されました。

 

 


地域を超えたスタートアップ・エコシステムで、新たな化学反応を期待

次いで、「品川区×仙台市スタートアップ・エコシステムの地域連携のあり方とは?」をテーマとしたトークセッションへ。
仙台市のスタートアップ支援課長の酒井氏、品川区の栗原課長、(一社)五反田バレー 代表理事の中村氏が登壇し、以下のようなディスカッションがなされました。モデレーターは「仙台スタートアップスタジオ」をはじめ、全国でコワーキングの企画・運営などを行う㈱ATOMica Co-CEOの南原氏が務めました。

――あらためて、それぞれの地域でのスタートアップ支援の特徴について
仙台市酒井課長:東日本大震災からの復興過程で生まれた起業家たちと、人口減少など社会課題の解決に取り組んでおり、社会起業家に対して2017年から専用プログラムで約100人を支援してきた。東北大学の技術シーズからの立ち上げや、東北全体のスタートアップ支援を行っているのも特徴。
品川区栗原課長:区内スタートアップはIT系が多く、地域の町内会や商店街、ものづくり企業などから、地域の社会課題にスタートアップの力を借りて取り組み、双方が成長していけることを期待されている。女性の起業支援を長くやっているのも特徴。

――五反田バレーについて
中村代表理事:もともと五反田エリアに集まってきていたスタートアップで、対外的な情報発信や必要なリソースにアクセスしやすい環境づくりのため、2018年7月に団体を設立。品川区とも連携協定を結び、連携してスタートアップ界隈を盛り上げている。世の中でスタートアップの認知度は上がったが、一般市民に対してはまだ遠く、スタートアップからの歩み寄りが必要だと思う。

――スタートアップの市民との連携において、自治体として意識していること
品川区栗原課長:既存の中小企業や区民にもっと身近になるよう、地域を巻き込んだ実証などをやっていきたい。その際に文化の違いもあるので、行政職員が地域とスタートアップの間に立ち、ハブとなって推進できればと。
仙台市酒井課長:東北大学ではスタートアップ事業化センターの職員に自治体とのハブとなってもらっており、連携がスムーズ。行政職員も東北大学の名刺を持たせてもらうなど、大学という市民に対して深く入り込んでいる。

――スタートアップからは、自治体にどのような支援を求める?
中村代表理事:「アクセスできるリソースを増やせること」だと考えており、それは五反田バレーを運営していく上でも意識している。自治体とのつながりによって打ち手が増えるのは、事業家には有難いこと。検証フェーズなら、自分たちの仮説に興味を持ってくれるプレイヤーとのつながりが欲しいし、拡大フェーズなら、地方の市場に打って出たいときなどに足がかりとなるアセットがあるといい。

――自治体として地元企業とスタートアップをつなげる取り組みは?
品川区栗原課長:毎年実施しているアクセラレーションプログラムで特典として、パートナー企業とコンタクトが可能。学研やJTBなどの大手企業とつながる機会が持てるというのが、プログラムへの参加理由上位となっている。
仙台市酒井課長:この仙台スタートアップスタジオで毎週のようにイベントを行っている。たとえば、アイリスオーヤマの会長が登壇されたときには会場が熱気にあふれ、このように直接触れあえる機会が求められていると強く感じた。東北電力など、スタートアップとのつながりを求める大手企業とのイベント共催も強化している。また常設の、仙台経済同友会と作っている「アドバイザリーボード」ではスタートアップが地域の経営者に直接相談できる。

――品川区と仙台市で今後どのような連携ができそう?
品川区栗原課長:仙台のスタートアップが東京進出する際には、品川区を足がかりにしてもらいたい。また、実証の場として商店街やものづくり企業との連携をバックアップできればと思う。
仙台市酒井課長:実証の場として、仙台市は海から平野、山まで揃う点をうまく活用してもらいたい。また、エコシステムのなかで、品川区のスタートアップが得ている企業との協創経験などの知見を、ぜひ仙台市のスタートアップにも共有させてほしい。そこから協業につながったりと、互いを知る場が作れるとよいと思う。
中村代表理事:単純にそれぞれの地域が持つアセットに、もっと互いがアクセスできれば、スタートアップ同士にも地元企業にも有益なこと。一緒にやっていくことで可能性が広がりそうだと感じた。

――実際に、実証実験などの取り組みで連携は可能?
品川区栗原課長:「品川区スタートアップ・エコシステム」の会員になることで、東京進出のサポートや、会員企業とのマッチングについて相談に乗ることができる。

仙台市酒井課長:「クロス・センダイ・ラボ」という公民連携窓口があるので、実証実験などは相談してほしい。また、仙台市にはまだ少ないIT系スタートアップが品川区には多数あるので、当地にないサービスなどにより地域/行政課題への取り組みで連携できればと感じた。

最後に中村代表理事より、「各エリアが持つアセットに互いにアクセスしやすくなれば、化学反応が期待できる。ぜひ皆で具体的なアクションを起こし、事業や社会にインパクトをもたらすような流れを作っていきましょう」というメッセージが語られると、両課長も大いに共感して、トークセッションが締めくくられました。

品川区のスタートアップ3社が、ピッチでスケールの成果を紹介

プログラムの後半では、品川区のスタートアップ3社がピッチを行いました。いずれも「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に採択されており、その後、順調に成長を果たしています。

1社目は、脱炭素の潮流を攻めのチャンスと捉え、サプライチェーンの可視化や見直し、低炭素製品・サービスの販売・マーケティング体制の構築および拡販・事業化ができるソリューションを提供する株式会社テックシンカー。代表取締役の洪氏は台湾から2010年に来日し、日本の事業会社、外資系コンサル勤務を経て、2022年3月に創業。「五反田バレーアクセラレーションプログラム2022(第3期)」に採択されています。

2社目は、移動に音声・SNSを使った新基軸のナビゲーション&ガイドシステムを提供するLOOVIC株式会社。歩きながら景色についてつぶやいた言葉が位置情報として埋め込まれ、独自のガイドができ、高齢者や子どもなど、付き添いたい相手に自分の声でナビができるというもの。代表取締役の山中氏はアイリスオーヤマやNTTPCなどの事業会社、そしてスタートアップでの勤務を経て、2021年に創業。「五反田バレーアクセラレーションプログラム2021(第2期)」に採択された後、品川区の創業支援施設に入居しています。

3社目は、メンバーの本音を簡易なやり取りで吸い上げ、やりがいとストレスの2軸でサーベイ化し、対策を図れる、職場のコミュニケーションツールを展開する株式会社Work with Joy。成長企業の経営者や大企業の部長などに使われ、約60社で導入中。代表取締役の新保氏は、大手損保やコンサル、米スタートアップの日本法人などの勤務を経て、2021年に創業。「五反田バレーアクセラレーションプログラム2023(第4期)」に採択されています。

それぞれ事業の進展や顧客・パートナーに求めることなどが伝わるピッチで、質疑応答では事業の優位性や業界事情なども分かって、参加者に新たな気づきや興味、刺激をもたらしていたようでした。

その後はネットワーキングのための交流会がもたれ、登壇者や仙台市、品川区からの参加者が活発に交流や意見交換を行いました。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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