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アクセラレーションプログラム
受講生インタビュー

2025.9.10

【五反田バレーアクセラレーションプログラム アルムナイ特集】メンバーの本音を引き出す簡易なサーベイツールで、チームを活性化&離職を防止「Work with Joy」にプログラムでの成果や今後の展望について聞いてみた。


メンバーの本音を簡易なやり取りで吸い上げ、やりがいとストレスの2軸でサーベイ化して対策を図れる、職場のコミュニケーションツール「joby(ジョビー)」を展開している株式会社Work with Joy。その事業の概要と、2023年に参加した「五反田バレーアクセラレーションプログラム」で役立ったこと、その後の事業展開について、代表取締役の新保博文さんに聞きました。

(Work with Joyの軌跡)
2021年5月 創業
2023年9月~2024年3月 五反田バレーアクセラレーションプログラム第4期 参加
2025年1月 「品川区×仙台市 スタートアップ・エコシステム拠点都市連携イベント」でピッチ登壇
2025年2月 品川区が共催した「第10回TIB PITCH【試験導入コース】」でピッチ登壇

(プロフィール)
新保博文さん 株式会社Work with Joy 代表取締役
大学卒業後、東京海上日動火災保険に入社し、企業営業に従事。その後、デロイトトーマツコンサルティング、ドリームインキュベータにてコンサルタントにキャリアチェンジ。さまざまな業界のクライアントに対する戦略立案、オペレーション変革などのプロジェクトに参画。2018年、シリコンバレー発企業であるNautoに参画。日本の大手企業との事業連携、営業、マーケティングなどを担当。2020年からはアイデンティティーで執行役員COOに就任し、エンジニア転職支援サービス「テクスカ」のプロダクトをリード。2021年株式会社Work with Joyを共同創業し、代表取締役CEOを務める。

チームメンバーのやりがいとストレスを可視化し、現場マネジメントに活かす

―まず、Work with Joyの事業について教えてください。

新保 博文

人材領域で採用や定着の支援としてコンサルティングを行いながら、職場のコミュニケーションツールである「joby」を開発・提供しています。かつては飲みニケーションや喫煙の場でちょっとした愚痴や相談ができ、上司にとってはマネジメントするに当たってのよいインプットになっていました。そんな風にメンバーが本音を言える場をデジタル空間上に作ったのが「joby」です。
人事向けのサーベイシステムもいろいろありますが、「joby」は5問のアンケートに答えるだけなのでメンバーの負担も少なく、それにより社員の状態が「ストレス」と「やりがい」の2軸でマッピングされるので、上司も直感的に現状が把握できます。簡単なコメントをやり取りすることもできます。これは、対面での会話や電話、チャットなどの同期コミュニケーションに比べ、相手の反応を気にせず発信でき、受け止める側も感情に任せることなしに相手の真意をいったん考えてから返信ができるのがメリットです。

―ユーザーはどのような方たちですか?

新保 博文

のべ70社に導入いただいており、成長企業や大手企業まで幅広く使われています。医療機関など、シフト勤務の業態であったり現場常駐型エンジニアや派遣など、本社と現場が離れる業態もニーズが高いです。Slackと連携できるので、スタートアップでは導入が進めやすいですね。ピッチや展示会などで紹介すると興味を持ってもらえることが多いです。大手企業でも新卒が入社3年くらいで離職しやすく、年1~2回のサーベイよりも頻繁に、毎月のように簡易にサーベイが行えると好評です。健康診断だけでなく、体温や血圧のモニタリングも必要ですよねとお勧めしたりしています。
そうして「joby」を使うことで出てきた本音に向き合い、対処できることが大事です。そうした管理ができると職場がうまく回るようになると啓発していきたいですね。

期待以上だった、プロダクトへのフィードバックとネットワーキング

―2023年度の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に応募された理由を教えてください。

新保 博文

2021年5月に会社を設立して、2023年2月から「joby」のα版を提供し始めていました。そこで、東京都の「DX Scrum Team プロジェクト」に採択され、中小企業のDXにつながる実証機会を得ることができました。それを機に、プロダクトの改善・改良に役立つような支援プログラムが他にもないかと探していて、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」を見つけたのです。採択されればピッチ機会が多く得られ、プロダクトに対してフィードバックがもらえると思いました。また、採択してもらえるか、力試しの意味もありましたね。
そして、一番の目的はネットワーキングでした。前職のスタートアップ時代にもいくつかアクセラレーションプログラムに参加したことがあり、そこで出会ったスタートアップ同士で情報交換したり、顧客を紹介し合ったりした経験があったので、今回もそうした縁を期待しました。
また、自治体ではなく企業が主催するプログラムだと、その会社にとっての課題を解決するようなテーマ設定だったりして、当社事業にはあまりフィットしなかったのもあります。

―実際に参加されてみて、役立ったことはありましたか?

新保 博文

特に、ピッチのフィードバックをいただくという点は期待以上でした。プログラムの最初、9月のKick-Offと最後、3月のDemoDayには全員がピッチを行いますが、いずれも大きな会場で行われ、パートナー企業の方々もいて、大変緊張したのを覚えています。
その後、研修の際に希望すればピッチを行って、他の参加者からのフィードバックがもらえる機会があったので、10月の第2回目の研修や11月の有志参加イベントのプログラムOBとの交流会の際に手を挙げました。いずれのピッチも、日頃の商談でのトークをベースに行い、参加者それぞれの業界・業態から見て魅力的か、どういう表現やアプローチをするとなお良いかなどをフィードバックしてもらったので、その後の営業活動に役立ちました。

―期待されていたネットワーキングについては、どうでしたか?

新保 博文

これも期待以上でした。このプログラムの研修では、進行中によく「隣の席の人と○○について意見交換してみて」などと講師からいわれたり、研修後にそのまま会場で希望者が参加できる交流会が用意されていたりと、運営からのサポートの加減がちょうど良かったですね。強制ではなく、うまく雰囲気作りをしてくれていたと思います。
それもあって、気の合う参加者同士でいろいろ情報交換や協力ができる関係が築けました。実際、ある参加者とは共同でセミナーを開催したり、クライアントを紹介し合ったりしています。また、プログラムのゴールであるDemoDayのピッチに向けては、多くの参加者とプレゼンの練習をし合いました。時間を計ってピッチを行い、フィードバックや意見交換をして本番に臨むことができました。一人ではできないことで、有難かったですね。

―そのほか、役立ったことがあれば教えてください。

新保 博文

研修の講師による話はいずれもリアルな話で、それぞれのテーマの解像度を上げることができました。特に印象的だったのが1回目、01Booster合田代表の話です。起業家が置かれている状況を構造的に分析されたりと、合理的な説明が多く、感銘を受けました。講義後に名刺交換させていただいたときにも、私のバックグラウンドをふまえたアドバイスをくださり、実のある話ができました。

周りに惑わされず、自分なりの成長曲線を描き、目指す

―事業について、今後の展望を教えてください。

新保 博文

SaaS型のスタートアップというよりは、採用コンサルティングで売上を立てながら合わせて「joby」も導入してもらうようなスタイルです。業務系システムなら生産性の指標がすぐ改善したりするのと違い、採用や人材・組織管理では成果が見えるまで時間がかかりますが、大きなペインを解決できたという事例ができれば、一気に導入を推進できると期待しています。
この1年は医療業界で事例を作ることを目指し、日本看護管理学会や日本医療・病院管理学会など、医療のマネジメントに関する学会の展示会に出展しています。そうして面で取れる業界を意識しながら、2つ先のオリンピックの手前くらいと考えて、7年後くらいに上場をいうのを目標としています。

―最後に、スタートアップとして成長を目指す人へアドバイスをお願いします。

新保 博文

スタートアップの世界では急成長するのが正義のようにいわれますが、成長のし方はいろいろあっていいと思うんです。1~2年で指数関数的な成長を果たすケースもあれば、5~6年間しゃがみこんだ後に急カーブを描けることもある。私自身は、しゃがんだ分だけ強くなり、大きく花開くのだと考えています。それは、40歳前後での起業であり、家族もいて安定しなきゃいけないという環境ということも大きいです。人それぞれ、自分のスタイルでやっていけばよいかなと思っています。SNSなどの情報があり過ぎて影響を受けやすい時代ですが、それでぶれることなく、自分なりの時間軸や高さを考えてそれを目指してみると気持ちも楽になると思います。

執筆者

取材ライター

久保田 かおる

インタビューはリラックスムードで楽しく。原稿では、難しいことも分かりやすく伝えるのがモットーです。

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